泣きたい時に読む小説「知恵の実をかじる私」vol.5 最終話
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第4章 運命のはざまで
日々は忙しく過ぎていった。でもふとした時、凛のことを思い出す瞬間があった。
そんなある日のこと、いつものように食事の支度をしていると、玄関が開いた。
「ただいまー」
小学2年生になった息子の翔太が帰ってきた。
「おかえりー。今日は学校楽しかった?」
いつものやり取りを交わしていると、翔太が1通の手紙を取り出した。
「先生から、家族に渡してほしいって」
息子が先生からもらった手紙を受け取り、中をのぞいてみると、運動会のお知らせだった。
「もう運動会の時期なんだね。お父さんにも教えておかないとね」
そう言うと、翔太は嬉しそうに頷いていた。家族そろって楽しみたい様子だ。
夕食の支度をしながら、旦那が帰ってくるのを待つ。帰ってきた旦那の表情は引きしまったままだったが、運動会の話をすると、少しだけ明るくなった。
「ああ、翔太を応援しに行こう」
久しぶりに3人で過ごす機会だ。翔太も喜んでいるし、いい家族サービスになりそうだ。
そう決めてから数日後、運動会当日を迎えた。
朝早くから準備を整え、家族3人で会場へ向かった。翔太は自分の出番が楽しみな様子でテンションが上がっている。
その中で、ふと人混みの中に見覚えのある人物がいることに気づく。よく見ると、凛の姿があった。
「あ......」
思わず声が出る。しばらく連絡が途絶えていたが、どうしてここにと私は思った。
ぎゅっと胸が締め付けられる思いがした。
そして、運動会を楽しみにしていたはずの翔太だったが、徒競走の最中に転倒してしまう。足をくじき、泣きわめいている。
駆けつけて様子を確認すると、ひどい捻挫のようだ。早く病院に連れて行かねばと思った。
その時、人混みから一人の男性が近づいてきた。よく見ると、凛だった。
旦那も驚いた表情でその様子を見守る。私は翔太を抱え、言葉も出ずにいた。
泣きわめく翔太を私が抱くと、凛が近くを通るタクシーを呼び止める。
「この子、足を怪我しているようなんです。早めに病院に行った方が良さそうです」
凛の機転で、旦那と私、そして翔太はタクシーに乗車し病院へと向かった。
受付で診察券を受け取り、診察室で先生から詳しい診断を受けることになった。
二週間程度の安静が必要との指示を受け、学校の先生へも状況を連絡したのだった。
翔太の診察が済んだ後、3人でタクシーに乗って自宅へ向かった。
翔太は私と旦那の間に座り、うつむいたまま黙っている。
その沈黙を破って、翔太が口を開いた。
「ママ、パパ、ごめんね。運動会」
驚くほどの成熟した言葉に、私は胸が締め付けられる思いがした。
「僕、ママとパパが大好きなんだ」
「だから、だから1番になって、喜んでもらおうって頑張って走ったんだ」
「でも...」
そう言いながら涙を浮かべる翔太。
その言葉を聞いて、私は今にも涙をこぼしそうになる。
これが守るべき大切な家族なのだと改めて思い知らされた瞬間だった。
そして、涙がこぼれ落ちる。
タクシーの中でこぼれる涙を拭う。旦那と顔を見合わせると、寂しげな表情だった。
「ごめんね、お父さん」
翔太が謝る。
「いいんだ、翔太。お父さんとお母さんは嬉しいよ」
旦那がそう答えると、私も頷いた。
翔太の言葉で、私は凛との関係を顧みることになった。ずっと思いは断ち切れなかった。でもこの家族こそが大切なのだと気づいた。
涙が絶え間なく溢れてくる。ずっと隠していた罪悪感が溢れ出して止まらない。
旦那は寂しげな表情だが、翔太と手をつなぐ私を見守っている。
「ごめんね......本当にごめんなさい」
そして、旦那が口を開いた。
「大丈夫。心配するな」
思いがけない旦那の言葉に唖然とする。
旦那は凛とのことを何も知らない。でもすべてわかっているかのようにそう言ったのだ。
「ごめんなさい....本当にごめん...」
私は翔太の手を握り締めながら、涙を流しそうつぶやいた。
エピローグ
運動会での一連の出来事があり、数日が過ぎた。
翔太の怪我は軽症だったものの、しばらくは安静が必要だ。学校を休むことになり、私が看病することになった。
「大丈夫?翔太」
「うん。ママといるから楽しいよ!」
以前に比べ、更に明るい性格の翔太。優しさが増しているように感じる。
一方で、私と旦那の関係も少しずつ変化が生まれていた。
これまで以上に会話する機会が増え、お互いの日常を共有するようになったのだ。
そんなある日のこと。玄関先に1通の手紙が届いていた。
名前を確認してどきっとする私。凛からの手紙だった。
ためらうが、開封することにした。覚悟を決めて中をのぞいてみると、想像以上の内容が書かれていた。
「この度、地方に用事がありましたので、ご挨拶が遅れましたことをお詫び申し上げます」
地方に用事? 不思議に思いながら手紙を読み進める。
「長年の夢であった温泉旅館を引き継ぐ運びとなり、近日中に引っ越しする運びとなりました」
ざっと目を走らせて内容を確認する。凛は地方の旅館を継ぐことになったようだ。
複雑な胸の内を整理しながら、手紙の後半を読み始める。
「運動会当日には、ご迷惑をおかけしてしまいましたことを深くお詫び申し上げます」
あの日のことを思い出す。怪我をした翔太を心配し、駆けつけてくれた凛の姿が浮かぶ。
「家族という大切な存在を改めて教えていただき、感謝の念に堪えません」
胸が痛んだ。そして最後に、こうあった。
「これからはそれぞれの人生を歩んでいきましょう。幸せでありますように」
手紙を読み終えた私は、複雑な胸の内を抱えながらも前を向いていた。
そう、これからはそれぞれの人生を歩んでいくのだ。
私には、大切にすべき家族がいる。これからも変わらぬ想いで見守っていきたい。
そして凛もまた、新天地で夢見た旅館を切り盛りしていくのだろう。
「行ってらっしゃい」
つぶやきながら、空を見上げる。新緑の美しい季節だった。
これから先の人生には、まだ見ぬ風景が待っていることだろう。
そう確かめるように、胸を張って新しい一歩を刻んでいこう。
これが、私の新たな一歩なのだと。
おしまい。
あとがき
箸休め的なつもりで書いた小説でしたが、改めて読んでみると意外といいかもしれないと思いました。やっぱり家族が一番大切ですよね。何より子供の存在は大きいです。
さぁ、明日からは新しい物語がスタートします。正直、その物語を書き終えたとき、これ以上のものはもう書けないとさえ思いました。
(実際は、それを超えるレベルのプロットを既に書き上げています。笑)
是非、新しい物語も楽しんでください。
家族愛ってすばらしい。
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