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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #121_300

十六 カワサキ
 最後尾の車輌から、流れ去る線路のくねりを眺める。横を見ればまっすぐ進んでいるようであり、後景に視線を移せばカーブを曲がって来たことに気がつく。
「あんたは、もう死んでるって」その声に振り返る。割れた携帯を熱心に見入る若い女。朗読者のAV嬢のようだ。ひび割れた液晶には、その女が映り込んでいる。短な生が。