見出し画像

アフリカに行く人間が出来上がるまで

小学生の頃にはたくさんの夢があった。

スポーツ少年で怪我の多かった僕は通っていた病院の理学療法士に憧れたし、中居くんが寿司屋のドラマをやっていた時には寿司屋になりたかったし大黒摩季さんの「ららら」は当然歌い狂ったし、反町隆史と押尾学がやっている刑事ドラマにハマった時は破天荒な刑事を夢見たし、中学校の何かしらの文集には「大学に行ったら留学する。」と書いた。


小学生の頃にはたくさんの夢があった。


自分には無限の可能性があるのだと信じていた。


小学校では地区で負けなしのバレーボールチームのセッター。中学に入りバスケを始め、体が大きかったこともあり、経験者を横目にスタメンに定着。たいして勉強しなくても全教科90点以上はとれた。


「ちょろいなぁ。こんなもんか。」


同級生が子どもに見えた。


こいつらとは話が合わない


自分がクラスで浮いている理由を強がりではなく本気でそう思っていた。話を合わせようともしていないのにだ。

まったくもってナメたガキだ。

大人のことも見下していた。「こいつらは教師をやってるんじゃない。教師にしかなれなかった連中なだけ。」


誰かタイムマシンを開発していただけませんでしょうか?このナメガキの爪を1枚ずつ剥がさせてください。


周りで必死に努力している連中がバカに見えて仕方なかった。

「なんでそんなに努力してできないんだ?センスねぇなぁこいつら。」


高校はバスケの強い高校に一般入試で入った。バスケ王国福岡と呼ばれる地元でもかなりの強豪校。偏差値も高く、そこに一般入試で合格したにも関わらず、推薦組を押しのけて3年生が引退するとすぐにスタメンに抜擢された。


「ちょろいなぁ。こんなもんか。。」





さぁ皆さんお待ちかね。



天罰のお時間でーーす。


スタメンになって約2ヶ月。たて続けに足首の怪我を負いスタメンを外れた。もちろんこれが全ての原因ではない。単純に僕が下手くそだっただけだ。しかし、そこから引退までの2年間は地獄だった。下級生にスタメンを奪われベンチを温め続けた。1年生の夏にちょっと調子が良くて”たまたまレギュラーになれた”先輩。下級生にそう思われていると思うとプライドが許さなかった。シュートを打つのが嫌いになった。楽しかったバスケットも楽しくなくなっていた。いつしか”スタメンじゃないのは監督の見る目がないから”そう自分に言い聞かせていた。そうでもしないと何もかも保てなかった。

中学では優秀だった成績も赤点ばかりになった。0点を取ることもあった。


全てを失った


狭い世界でしか生きてこなかった身勝手な男はそう思った。バスケも勉強も上には上がいる。俺なんか底辺の人間。気づけばバスケばかりしてきて勉強ができないどころか友達だって一人もいやしない。なんだこれ。もういいや。高校なんか楽しくない。この高校の連中は俺には合わない。こんな奴ら一緒にいたって面白くない。早く卒業したい。そう思っていた。

中退する勇気さえない中途半端な男。

大学は国立に合格した。教育学部の体育科。二次試験が体育の実技試験というだけで教師になりたいわけでもないのに受験した。僕は明らかに異物だった。真面目に講義に取り組む同級生に嫌気がさした。

「お前らみたいな真面目だけが取り柄の教師がなにを教えるんだ?お前らみたいな奴が俺のような人間を理解する事なく、理想だけ口にして、そこから溢れていく子どもに見向きもしないんだろ?」


僕はとことん捻くれていた。

いや、それを言えば今もひねくれている。


劣等感の塊。


自己肯定感の圧倒的低さ。


それをさらけ出せない器の小ささ。


何より厄介なのは、


自分の失敗をすべて人のせいにしてきたこと




今思い返せば全て僕が悪いのだ。


そんな大きなプライドを持った小さな小さな捻くれ男は、大学に入ってもだらだらとバスケットを続け、だらだらと学校に行き、だらだらと日々を過ごし、だらだらと4年生になった。



----------------------------------

時は2012年夏。

長崎大学教育学部管原教授のゼミ室にて、ひとりのボンクラ大学生が教授から腹にパンチをもらってから2分後。

人を見下し続けてきた男が挫折から立ち直れずに6年と2分の月日が経っていた。

ボンクラ大学生は就活の情報が張り出されてある掲示板の前に立っている。


世界も、自分も、変えるシゴト。



青年海外協力隊?


当時の僕がその瞬間何を思ったか今でもはっきりと覚えている。

漠然と将来に不安を感じながらもそれを見て見ぬ振りをしてきた。見て見ぬ振りをし、やれば出来るという”雰囲気”だけを纏わせ、苦手なことからは目を背けてきた。そんな時に見つけたアフリカでの2年間。


猶予


の二文字が頭に浮かんだ。


この期に及んでまだこの思考。


こうしてなんの意思も持たずして自分の進路を決めた。


そうだ。アフリカに行こう。



つづく...




サポートいただけると爆喜びします!おまちしております!
























この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?