小田川クソ小説 第11話 「二兎追うものは一兎も得ず」
高校に進学したが、学校に全く馴染めず、2ヶ月目で引きこもってしまった息子がいる。
何度も部屋に説得しに行ったが、取り合ってもらえず、しまいには扉にカギを掛けられるようになってしまった。あんなに可愛かった息子が、今では私を煙たがってしまっている。その日から私は悲しくて悲しくて、常に毎日涙を流すようになってしまいました。
このままでは退学になってしまう。困った私はSNSで息子の現状と私の気持ちを吐露しました。
するとその事が反響を呼び、多くのエールのメッセージが届くようになりました。ツイートも一晩で3万いいねを超え、私は一躍、時の人となりました。
翌朝、Twitterを開いてみるとDMでテレビ局から取材の依頼が来ました。
どうやら引きこもりを抱える家族の現状を取材したいらしい。
いくら私が有名人だからといっても、テレビで息子の話をするのは、息子に悪いと思い、断りました。するとテレビ局の方もギャランティを掲示してきました。
3万円でした。私は腹筋を鍛えるボディーマシーンが購入できる額だったので快く承諾しました。
一週間後、テレビ局の人と打ち合わせを喫茶店でした。明日、私のインタビューを録り、息子の部屋を撮影し、息子にインタビューをし、清掃業者に部屋を綺麗にしてもらうという流れだった。
扉を開けてくれない息子には一切説明してなかったが、私は有名人だし、爽やかなテレビ局のお兄さんが、喫茶店のオムライス代を出してくれたのでOKしました。和気あいあいと、他愛もない話をしてとても楽しかった。
心躍らせながら帰宅すると、息子がリビングでお茶を飲んでました。
普段部屋から出てこないので、私はびっくりしました。
息子の部屋を見てみると、綺麗さっぱりごみが無くなり、整理整頓された綺麗な部屋になっていました。
「僕、明日から学校に行って皆と仲良くするよ。僕、自分に自信が無かったからオドオドしていただけで、本当はみんな優しいんだ。僕頑張るよ。」
「しばらく休んでスッキリしたのね…!良かった…!!」
私は息子を強く抱きしめました。
そして問題が解決したことをテレビ局に伝えると『では取材の話はバラしで…。』と返ってきました。
え?
私は有名人なので、腹筋を鍛えて、ママタレントとしてテレビに出る為に3万円が欲しかった。そしてなにより、テレビ局の社員さんの顔が離れませんでした。私はバツイチでシングルマザーだ。大きな口で喫茶店のサンドイッチを食べる彼を見て『私、この人と結婚するんだなぁ』と思いました。
寝る前のミルクティーを飲みながら、"息子"か"再婚+3万"か。この二択は私にはとても辛かったが、私の人生、チャンスを逃して後悔するぐらいなら、掴もうとして後悔した方がマシだと思いました。
取材当日、息子が学校に行っている間、綺麗になった息子の部屋に、豚の餌や小便をバラまきました。ついでに私の小便もバラまきました。そして『やっぱり息子が再度暴走しました』とテレビ局に電話して取材をしてもらう事にしました。
そして夕方、テレビ局の方が取材に来ました。私は涙ながら、息子への熱い思いをインタビューで語りました。
そして息子が帰ってきたので、取材陣が息子に「あの…差し支えなければ出良いのでお部屋を撮影させてもらっても良いかな?」と聞きました。
「え??あぁ、別に大丈夫ですけど……。」
息子は何の撮影か全く分かっていなかった。
部屋を開けると藁の匂い、獣臭、糞尿臭さに息子、取材陣は驚きました。
「え…あの……息子さん毎日こんな部屋で暮らしているんですか?」
「……。」
息子は泣いていた。
「ほら!!取材の人が聞いてるでしょ!!アンタが引きこもって何してたか答えなさい!!」
「……うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
息子は家を出て行ってしまった。
「…。」
取材陣は言葉を失ってしまった。
「すみませんね…うちの子シャイなんです。」
私は笑ってその場を誤魔化そうとした。
「奥さん……狂ってるよ。」
そういって取材陣は清掃業者に依頼をキャンセルし、機材をハイエースに積み込み始めた。
私は焦ってディレクターの腕を掴んだが、力強く振り払われてしまった。取材陣の中には、一緒に打ち合わせした社員さんもいた。
「あなただけは…!!あなただけは!!ここにいて!!!!」
私は彼の腕を強く握った。
「は、離してください!!!警察呼びますよ!!!」
彼は一目散に振り払い機材車に乗った。
「みんなみんな私を騙したのね!!!!!許さない!!!!!許さない!!!!!あなたたちが家族を無茶苦茶にした!!!!!息子を返してぇぇええええええええええ!!!!!」
取材陣は一目散に現場を後にしました。
「どうして……どうして!!私有名人なのに!!!!!」
その後、テレビ局や息子に慰謝料4億円を請求しましたが負けました。
※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。