三節 準備

「よっし。何とか買えた。帰って真治に報告かな。いや、別にいっか。多分、あいつの事だろうから、『買ったっすか!?』って聞いてきそうだし。」

 基本、真治が考えていることは分かりやすい。特に、約10年もの付き合いならそこらの連中より真治については詳しいのかもしれない。
  
「まだ、夕飯食べてなかったし急いで帰ろうかなー。ダッシュなら直ぐ家に着きそうだし。うーん、よし、走って帰るとしますか。ってか、あの店に入ったときはまだ明るかったのに、もうこんなに暗くなってるじゃん。」

 少しばかり時間を気にしていた。ただ、そこまで深くは考えていない。今は急いで帰ることに専念している。
 タッ、タッ、タッ。と軽快な走りで帰宅している魔奈。手にはさっき買ったゲームを。目の先にはもう家が見えていた。

「自分で言うのもあれだが、足速すぎだな。もう家についちゃったよ。さーて、飯食って、風呂入って、1時間勉強してからやりますかね。」

 現在時刻は19時40分。大体21時ぐらいにはできるだろう。

「…ただいまー。」

 って言っても、妹は居る筈なんだけど誰とも言葉を交わしたくなさそうだし。何より一日のほとんどの時間ゲームやってるし。ご飯は俺が作ってしっかり食べてくれるのは嬉しいけど…。
 魔奈の妹の名前は風見莉桜(カザミリオ)。一応学校には行っている。その学校は授業が昼までとなっている。特別な学校という訳では無い。帰ってからは殆どゲーム。昼は魔奈が莉桜用に作っていおいた物を食べている。心配されがちだが、風呂も毎日入っている。一言で言うと陰キャのようなものだ。そこは魔奈と似ている。

「急いで荷物を家に置いてたからな。ちょっと部屋がぐちゃぐちゃだな。よし、さっさと片付けて夕飯作らないと。」

 因みに、今日の夕飯は炒飯と卵スープ、後はサラダだ。2人分だから直ぐに作ることが出来る。
 魔奈は料理に一切の手抜きをしなく、全力で作っている。基本インスタント系は使わないので、誰かが真似しようとしても魔奈の腕は誰も真似できない、のかもしれない。

「よし、作りますかっと。えーと、材料はこれだな。」

 10分後。

「よっし、完成だ。莉桜の部屋に持っていくか。」

 魔奈の作った料理はどんな物でも色鮮やかに見え、美味しい。言葉にはしないが莉桜も感謝している。だが、それを魔奈は知らない。
 2階、莉桜の部屋。その扉の前にはベルが付いているのでいつもそれで知らせている。
 ポチッっと。 

「夕飯作ったから食べとけよー。いつも通り置いとくから。」
 
 ドンっ、と音がした。彼女なりの返事だ。

「じゃあ、俺も食べるか。あー、食べながら勉強するか。風呂はその後だな。勉強は1時間ぐらい…、いや、30分だな。」

 もぐもぐ、我ながらに美味いな。今度、いっつも食べたそうにしてる双葉達にも少しあげてみるか。反応は期待しないが。
 15分後。

「よし、今はこんなもんでいっかな。じゃあ、風呂に入るとでもするか。」

 直ぐに風呂に入る準備をし、2階の魔奈の部屋から風呂場までなるべく早く行った。
 そして15分後。着替えも終わった頃。

「ふぅ、やっぱ風呂はいいな。一番リラックスできる。他にリラックス出来たりするもんは無いかねぇ?って、食器洗わなきゃ。莉桜の部屋の前にもあるし。」

 タッタッタッ、と莉桜用のお盆と魔奈用のお盆をを持ちながら階段を下りて行った。
 そして、すぐに洗い始めた。

「こういうのも、ずっとやってると慣れた物だ。どうやって洗えばいいのか、とか。まぁ、面倒だなぁ、とか思っちゃうけど仕方ないよなぁ。親はもう居ないし。」
 
 そうこうしている内に食器が洗い終わり、その食器を棚に戻していた。
 現在の時刻は20時36分。30分勉強すると大体21時だ。例のゲームをやる時間は大いにある。

「じゃっ、タイマーでもセットして始めますか。」

 タイマーを30分でセットし、勉強道具を広げた。

「あー、計算めんどーすぎ。なーんでこんなの家でもやんないと駄目なんだー?」

 なんやかんやで愚痴っていると
「ピピピピッ」とタイマーが鳴った。
と、その瞬間、

「うわっ、吃驚した。そうだった。タイマーセットしてたんだ。意外と早く感じたな。さて、とっとと片付けてどうにかしないと…。」

 勉強道具はすべてバッグにしまい、買ってきたゲーム+VRドライバを紙袋から取り出した。
 
「へ~、今まで見てきたものとはまた変わったケースだな。開けてみても全然違うし。あと、この小さいカードのようなものがVRドライバ専用のかな?一先ず、元からあるドライバに増設しないと駄目なのか。面倒くさいなぁ。」
 
 VRドライバが増設用の機械だった為、コードなどの色々な物を使わなければならない。それ用の道具はVRドライバが入っていた箱に一式入っている。ただ、こういう作業はかなり嫌っている。魔奈は料理、掃除以外の面倒事は本当に苦手なのだ。だから…
 
「あーあ、コード絡まっちゃった。解くの面倒だし、コード多いし、そのコードを何所に繋げればいいかなんて分かんないし、説明書読んでもよくわかんないし――。」

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『あらすじ』 友だちに誘われてとあるVRMMORPGの【Twilight・Fantasy】(略称、TF)というゲームを始めた魔奈。プレイし…

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