二節 武装高校生

 そこには高校生らしき男女二人が立っていた。制服が見慣れないデザインと言うことは、別の町の高校の生徒なんだろう。目的は、俺と同じだろう。
 魔奈と店長が2人を見た時、表情が少し変わった。だって、帯刀してるから。
 流石に驚きも隠せなかったためか、刀に目をやった。

「すみません。私たちもその手に持っているものを買いたいのですが、2つ大丈夫ですか?」

 わーお!なんて礼儀正しい人なんだ。顔付きも良く清楚な感じがする。…って、そうだけど、そうじゃなく!何で刀を?

「だ、大丈夫だぁ。ちょ、ちょっと待ってろよぉ?今同じの持ってくっからよぉ。」
「すみません。ご迷惑をおかけして。」
「い、いや、いつもの事だからよぉ。これくらいお安い御用だぁ。ま、魔奈、ちょ、ちょっと待っとってくれぇ。会計は持って来たからするからよぉ。」
「りょうかーい。気長に待ってるよー。あ、やっぱ、なるべく急いでよ?」

 あ、やっぱ店長もビビってる。
 男女2人がこちらを見て、女子の方は微笑し、男子の方は少しおどおどしながらこちらを見て笑顔を見せた。
 ずっと気になってたから魔奈が聞いた。

「ちょ、ちょっと聞いていいかな?」
「大丈夫ですよ。あ、もしかして、この刀ですか?それとも、何で帯刀してるの?と思っています?」
「そ、そう。なんでかな?って。」
「そう怖がらなくても大丈夫ですよ?人は斬ったりしませんから。」

 いや、流石にそれは…。

「え?い、いやぁ。まぁ。って、人は斬ったりしませんから。ってどういう?」
「私とせつくんは怪焉(カイエン)町に住んでいるんです。その、怪焉町には妖魔という人ならざるモノがよく潜んでいます。出てしまうのは町の個性なので仕方ないんですけどね。」
「は、はぁ。そ、そうなんだね。」
「はい。そして、その妖魔を倒さなければ人的被害も出てしまいます。なので、こうして武装しているんですよ。こうやって考えると、私たちの住んでいる町が途轍もないほどに平和じゃないって分かりますね。ちょっと羨ましいです。」
「そうなんだね。でも、平和と言えば平和だけど、平和じゃないと言えば平和じゃないよ?」
「え?」

「平和じゃない」という言葉で驚きを見せた。何故かは簡単に説明した。
 男子の方もなんか喋ってよ。って言いたいのは気持ちだけの話。

「そっちは妖魔の被害が多いんでしょ?」
「え?あぁ、はい。特には、です。」
「そのほかの被害は何があるかな?」
「えぇと、犯罪、とかですか?」
「そう。だから妖魔以上に物騒な物が沢山いるのよ。困るよね。」
「そうですね。」
「う、うん。」

 あ、反応だけした。ってか結構いい声してんじゃん。
 武装してるから怖かったけど、話してるうちに慣れてきた。
 取り敢えず、2人に名前聞いてみた。

「えっとー、2人の名前は何て言うの?教えてくれなくても大丈夫ですけど。」
「名前ですか?私は、女神雷(メガミライ)と言います。よろしくお願いしますね?ほら、せつくんも。」
「え?あ、あぁ、うん。わ、分かった。ぼ、僕のな、名前は、斬嶋刹那(キリシマセツナ)と、言います。よ、よろしく、お、お願い、し、しま、す。」
「もぉー、せつくんったら、そんなに恥ずかしがらなくても大丈夫なんだよ?」
「だ、だって…。」
「ん、んー。まぁ、俺の名前は風見魔奈って言うよ。名前が女子っぽいから一時期名前で揶揄われた事も屡々。」
「そうなんですね。まぁ、私も厨二っぽいってたけで、揶揄われたことありますよ。同じですね。せつくんも、ですけどね。」
「う、うん。」

 ふむ、同族でしたか。気が合いそうだ。

 というよりも、不思議な二人だな。雷はともかく、刹那は人見知りか何かだろうか?それとも、この空気に慣れていないとかか?
 刹那は偶に下を向いたりしていた。やはり、この空気に慣れていないのだろう。見た感じ、初めて会う人には必ず人見知りになるだろう。

「ごめんなさい。せつくんはこういう性格だから。引っ込み思案っていうのかな。」
「い、いえ、こっちは大丈夫ですけど…。そちらの方が大丈夫じゃなさそうな感じがしますけど…?」

 刹那の方は「ちょっ、ちょっと」とでも言いたそうな顔をしていた。そんな困った顔に対して満面の笑みを見せていた。いけずな少女だ。怖い怖い。
 その笑顔にこちらも惚れてしまいそうだったが、あのニ人はもうできているんだろうと思ってなんとか堪えることができた。

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2,121字

『あらすじ』 友だちに誘われてとあるVRMMORPGの【Twilight・Fantasy】(略称、TF)というゲームを始めた魔奈。プレイし…

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