怪物はささやく
映画の感想。
がっつりネタバレ、あらすじ書いちゃうので、いやな方は読まないでください。
みたのはちょっと前なので、記憶あやふやですが。
ホラーじゃなくてファンタジーだと思って見てました。
そしてファンタジーということは子供向け?と思うのですが、これは大人が見て心にくるものがあるかなと思う。
大人じゃなくても、身近で大切な人がなくなったという経験をした人かな。
治療の難しいお母さんと二人暮らしの男の子のお話。
息子と静かに暮らしたいお母さんがいて、でも病気でそうはいかない。
私この作品で、お祖母ちゃんと離婚したお父さんがイラっとしてたんですよ。
お祖母ちゃんがね、娘の心配ばかりで孫のことは二の次さんの次、何だったら煩わしいみたいな感じに見えてね。
孫にもそれが伝わってて、つまらない年寄り、ババアとかひどいのですが。
子供の目から見たら、自分とお母さんを引き離す人。
さらに言うなら、お母さんの心配しかしてないのに「あなたが可哀そうだから」と言う。
子供だって馬鹿じゃないから見透かされるよ、と。
そしてあなたの娘が何より大事にしている子供に対してその言動?って思ってしまうのですよ。
お父さんはなんか、都合のいい人だなあって思ってしまう。
離婚は夫婦間の問題。その後再婚していて、家庭があるのはわかる。
だから祖母と暮らすのが嫌だから、お父さんの家に連れてってよと主人公が言っても、それが難しいのはわかる。
でもそれを、きちんと順序だてて説明すればいいのに、適当に濁して「それはできないよ」としか言わない。
都合よく遊びに連れてって、いい時間だけ過ごして、いやな役目はおばあちゃん任せと私には考えてしまって。
そしてこの男の子、夜眠れていません。
授業中に眠っています。
でも先生には怒られない。(おそらく家庭の事情を考えみて何も言わない?
そしていじめられている。暴力を振るわれて、屈辱ではあるが必死に耐えている。
そんな中、眠れない夜に木のお化けがやってくるんですよ。
そして自分の話を3つ聞け、そのあとにお前の話を聞かせろというのです。
木のお化けは最初から邪悪な感じがしないのです。
私は見ているとき、お祖父ちゃんかなくなっているので、お祖父ちゃんが孤独な孫を見かねてきてくれているのかなーとか思っていたのですが。
全然違いましたね。
この木のお化けのお話は、勧善懲悪ではなく少し難しいです。
子供からすれば「なんでそんな結末になるの?」「そんなのあんまりじゃない?」というようなお話。
そして木のお化けのお話と、主人公の立場がリンクして、お祖母ちゃんが大事にしていたものを主人公が壊してしまいます。
お祖母ちゃんは病院から帰ってきてひどい惨状を見て、主人公に対して言葉もなく部屋に閉じこもる。
主人公は言い訳すらさせてもらえない。
そして翌朝、お祖母ちゃんは病院に。
お父さんが食事の用意をして、一緒に破壊したものをお片付け。
主人公が「怒らないの?」と言うと「怒って何か変わるのか?」とお父さんは笑顔。
同じようなことが学校で起こります。
木のお化けのお話とリンクして、いじめっ子たちに仕返し。
いじめっ子はかなりのけがを負うのですが、そのことについて校長先生は叱りません。
主人公は「怒らないの?」と聞くのですが、先生も同じく「怒って何か変わるの?」と質問返し。
お父さんはもちろん、学校の先生は主人公の家庭の事情など考えて言ってくれているのかもしれない。
でも主人公にしてみれば、怒ってほしかったんじゃないかなって。
「なんでこんなことしたんだ!?」と言われたら、言い訳できる。
自分の気持ちをわかってもらえる機会を得られて、謝って許しを貰う機会もできる。
それを奪われてるのが悲しいなと。
そしてお母さんの治療はうまく行かないまま。
主人公はお母さんがなくなってしまう悪夢にうなされて眠れなくなったのですが、その悪夢が現実になる日が近づいてきている。
そんな中、お母さんは主人公が何をしたかは恐らく知らされていない。
(病状を考えるとおばあちゃんは知らせないと思う)
それでも主人公を見てすべてわかってるかのように「いいんだよ」と言います。
「怒りに任せて暴れてしまったって言い。矛盾したことを思ってもそれは悪いことじゃない。責めなくていいんだよ」
自分がやってしまったことに対して、主人公は一番うれしかったんじゃないかな。
言い訳も謝る必要もなく、ただただ自分を受け入れて認めてくれる。
そんな存在はお母さんただ一人。
けれどもお母さんと暮らすタイムリミットは近い。
そんな中、木のお化けが「お前の話を聞かせろ。真実の話だ」と。
主人公は悪夢みて眠れなくなった。
それは母親が死んでしまう夢。
地面が崩れてお母さんが落ちてしまう。お母さんの腕をつかんで助けようとするけれど、助けられずにお母さんはいなくなってしまう。
頑張っても力が足りず、手が滑ってしまってお母さんが落ちたのかと思いきや。
「待つのに疲れたんだ。待つのが嫌だったんだ」
期待して待っての繰り返しの中、主人公は終わりを自分から求めていた。
けれど実際に終わりが近づいて、恐ろしくなっている。
自分が願ったから、母親がなくなるのではないかとも思ってたんじゃないかな。
けれどその話を聞いて木のお化けは責めることもしない。
そのまま木のお化けのそばのところで眠ってしまう主人公。
そこにやってくるお祖母ちゃん。
お母さんとのお別れが近い。
お祖母ちゃんは車の中で「私たちは気が合わない」とはっきり言う。
いやいや、と私は思ったのですが、主人公は「知ってる」と当たり前に答える。
いやいや、と思う私も矛盾してるよね。
お祖母ちゃんはごまかさずにちゃんと言えと思ってたくせに、結局主人公を気遣ってほしいと私の勝手な思いで思っていた。
そして主人公は「お互いに気が合わない」ということをすんなり認めている。
お祖母ちゃんの「でも私たちの間には大事な共通点がある。お母さんがいる」と言って、主人公はお母さんとの別れの時間を過ごす。
主人公はおばあちゃんの家に引っ越すのですが。
主人公のために用意された部屋を見て、私はお祖母ちゃん今まで嫌っててごめんと泣きたくなった。
お母さんの面倒を見て、主人公に小言を言いつつも、とても素敵な部屋を用意していた。
お祖母ちゃんはいっぱいいっぱいの中、この部屋をきちんと用意していて孫に対する愛情もきちんとあった。(表現方法が下手なだけで
男の子が喜びそうな内装で、机の上にはお母さんが昔書いた絵本。(母親は絵が上手く、母親に教わっていた男の子もお母さんと同じ九会が上手い。
そこには木のお化け、木のお化けが話してくれた3つのお話がある。
つまり、木のお化けはお母さん。
正確には、恐らく主人公がもっと幼いころにお母さんから聞かされていた物語。
お母さんは病気でなくなるけれど、眠れない息子のために現れて物語を聞かせ。
問題行動を起こしても、怒りがあっても、矛盾があっても(お母さんに生きていてほしい、それでも期待して待つのに疲れた)、構わない。
それを伝えたかったのかなあと。
ホラーと思うと肩透かしだけれど、ジャンルを問わず一つの映画としてみるとすごくよかったですね。
……まあ、お祖母ちゃんに対する評価は変わっても、私はやっぱりお父さんがずる問いという意見変わらないけれど。
繰り返し見たくなるいい映画ですね。