ねぇ
――ねえ!!
本当はフクロウとしてこの家庭に生まれてくるはずだった。
しかし生まれてこれなかった幼い子供が大声で叫ぶ。
彼の声はフクロウの一家に、届いたことがない。
両親も、兄弟も、生まれてこられなかったフクロウに気づかない。
それでも生まれてこれず、天にも昇ることができず、幽霊となった子供が叫ぶ。
料理をしている母親に。
――ねえ、お母さん!! 僕を見てよ!! ここにいるんだよ!! 後ろにいるんだよ!!
幽霊の声に母親は気づかない。
けれど彼の兄弟の不満げな声は届く。
「お母さん、おなかすいたー」
「もう少し待っててね。すぐできるから」
慈愛に満ちた母親の声。
彼の兄弟の言葉にはすぐに反応するのに。
幽霊の声は聞こえず、見向きもしない。
悲しくて悔しくて幽霊は涙を流す。
瞳から流れ出る涙は赤い血液で、目玉が溶けていく。
兄弟たちは父親に遊んでもらってはしゃいだ笑い声を出している。
幽霊だった父親に遊んでもらいたい。
兄弟たちがやっているように、顔を見合わせて笑いあいたい。
――ねえお父さん!! 僕とも遊んでよ!! お兄ちゃんたち、僕ともしゃべってよ!!
幽霊が地団太を踏むと、フクロウの家の床が大きな音を立てた。
幸せな笑い声に満ちたフクロウの家が、一瞬静かになる。
「今の音、何?」
――僕だよ!! 僕はここにいるよ!!
気づいてくれた喜びには幽霊が笑いながら叫ぶ。
けれどその喜びはすぐに消え去った。
「この家も古いからな。突然きしんで音がなったりするんだよ」
お父さんの言葉に、驚いていた兄弟たちが納得する。
――違うよ違うよ! 僕だよ!! 気づいてよ!! ねえ!!
叫んで地団太を踏む幽霊の体が赤い血液が流れでる。
幽霊の体が変形し、溶けて、消えていく。
消える瞬間まで、幽霊は叫び続けた。
けれども結局誰も気づいてもらえず、幽霊の体は消えてなくなった。
「ねえお母さん、ここ汚れてるよー」
彼の兄弟が指し示すのは、幽霊が地団太を踏んで泣いていた場所。
その床は彼の地で赤黒く染まっていた。
「あら本当、どうしたのかしら?」
フクロウの母親がぞうきんを持ってくる。
そしてぞうきんで血の染みを消し去り、汚れたぞうきんをごみに捨てる。
きれいになった床に転がり、お互いをくすぐりあい兄弟のフクロウ。
それを見つめて母親と父親は微笑む。
もういなくなった幽霊の存在に、誰も気づかないまま。
――ねぇ……
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いつものように誤字脱字など推敲しておりません。
この小説は、YouTubeチャンネルの、ティル・ディ・テールお絵描きchannel / TILL familiaさんの配信、【お絵描き配信】うろ覚えで初代ポケモン描いてみた2【Pokémon】(https://www.youtube.com/live/EmRSweeRAoE?si=mu5yMjbNZlpzwU5x)のコタロウさんが描いたゲンガーを見て書きました。
コタロウさんが不快なのであれば削除いたします。
童話風に書きたかったけれど、私には無理だった。
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