女王とアザラシ_没プロット

冷酷無慈悲な北の女王。
多大な魔力とその冷酷さで、人々に嫌われはるか北へと追いやられる。

一人で生活するのは不便であり、寂しくもあるため、自分の身の回りの世話をする人間をさらってくる。
人間の家族を人質に。
自分の家族を女王に殺されないよう、女王に尽くす人間たち。

しかし、その人間たちはいつもおびえ、自分のいない所では怒りや憎しみをあらわにした。

人がいても寂しさが紛れない。

ある日、侍従と騎士を連れて散策しているとアザラシを見つける。
アザラシを見つけた時、女王以外の人間はアザラシに対し、目を和ませた。
女王の前では死んだような瞳の人間たちが。
女王のいない所では、怒りと憎しみで熱く濁った瞳が。
柔らかい光をたたえた。

それ以来、女王は連れていく人間を変えて、アザラシを見にいく。
どの人間たちも、アザラシを見てほほ笑む。
女王には決して見せてくれない笑み。

なぜだ。
どうしてアザラシには温かみのある瞳を見せるのに、自分には見せないのだ。
女王は不思議に思い、アザラシに怒りを覚え、一人でアザラシに会いに行く。

アザラシがじっとこちらを見つめてくる。
なぜこのような動物に、人間たちは心を和ませるのか。
アザラシにあって、自分にはないものは何なのか。

それから女王は時折、人間に尋ねる。
アザラシのどこが好きなのか。
人間たちはあいまいに濁す。
上手く説明できない、説明してもお前にはわからないというように。

それでは納得がいかず、一人でアザラシに会いに行き、人間たちにアザラシを見ることを禁じた。
ますます人間たちの目が曇っていく。
女王のいないときには怨嗟の声がひどくなる。

なぜだ。
不思議に思いアザラシと見つめあう日々。
ある日、ふと思ついてアザラシを城に連れて帰る。

すると決して逆らったことのない人間たちが、元の場所に返してやってくれないかと進言する。
なぜかと尋ねる女王。
皆が口をつぐむ中、一人の人間が口を開いた。
その人間は、一番女王が質問をした、他の人間と比べると女王と接することの長い人間だった。

「私たちにないものを持っているから、奪わないでほしい」
「もっていないものは何か?」
「自由です」
「お前たちに不自由はさせていない、食事も、着るものも」
「家族を人質にとられています」
「お前たちが逆らわなければ、家族だって手厚く対応している」
「それでも、貴方に逆らうのは怖い。あなたは私たちの心を恐怖で縛り上げる」

人間は、その後必死に謝り自分を殺してもいいから、家族には手を出さないでくれと懇願する。
女王は怒るでもなく考え込む。
心を縛るか縛らないか、それだけの違い。
女王は人間たちに不自由な思いをさせている。
アザラシは女王が連れてこなければ自由だった。

それだけの違い。
それだけで、人間の瞳がここまで変わるのか。
自分が心を縛らなければ、人間は柔らかく笑うのか。
しかし、嫌われ者の自分は人間にそばにいてもらう方法は今のやり方しか知らない。

アザラシは言われた通り、元居た場所へと返した。
人間たちは、家族を人質にしたまま。
その中で、会話が増える。
徐々に人間たちが気づき始める。
女王は、人との触れ合いに慣れていないこと。
愛情をかけることを知らないこと。

それらを少しずつ話し合い、女王はやがて孤独になっても構わないと人間たちの家族を開放する。
しばらくは孤独の生活が続く。
耐えきれず、人間をさらいたくなればアザラシを見つめて過ごす日々。

そこに戻ってきてくれたのは、女王の質問に答え、一番女王のそばにいた少女。
「あなたはあまりにも孤独で気の毒だから」
「生贄のつもりか」
「ただ対等な友人として、そばにいたい」
「好きにしろ」
命令で動くのではなく、自発的に動く少女。
自発的に言葉を発し、女王の言葉に笑う少女。
たまに家族のもとに行き近況を報告し、そしてまた女王の元に戻ってくる。

そんなことを繰り返しているうちに、また人間が自発的に戻ってくる。
女王は以前のように命令せずに好きに暮らせという。
上下関係がなく共に暮らす中、人々が笑う。
女王もたまに笑う。
そうしているうちに人間たちが増えていく。
増えた人間とともに、女王はアザラシを見つめて笑う。

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結構前からプロット出来てたのですが、暗いし長くなりそうと書くのを躊躇していたところ、ある曲を聞き「これだ!」と思ってこちらを没にして、まったく違う北の女王とアザラシが出来上がりました。

絵本もしくは童話を考えていたはずなのに、結局没プロットも、現在出来上がったのも、絵本にも童話にも向かないという。


ちなみに出来上がった小説はノートにアップするかどうかは未定です。

このあとまた、気分転換に小説書くので、そっちはアップ予定。

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