雨の日
昔書いたオリジナルのショートショートです。
季節外れですが、梅雨の時期のお話です。
pixivに文庫メーカーで作成したものを掲載しております。
雨の日
雨が、降り続いていた。近頃毎日降っていた。
女は縁側に座って降り続く雨を眺める。
あ、そうだ、アイスがある。
女は冷凍庫のドアを開ける。そしてああと溜め息をつく。
早く冷凍庫の中を整理しなくちゃ。大型だけど、こうもいっぱいだと、冷えるのも冷えない。
目当てのアイスを取り出して、また縁側に座る。雨のせいか通りに人通りは少ない。
アメアメ、フレフレ、カアサンガ…。
一週間前恋人と喧嘩した。最悪だった。でも何故か理由が思い出せない。思い出そうとすると頭が痛い。
日が暮れた。
次の日も雨だった。
今日も縁側に座って通りを眺める。
シトシトピッチャン、シトピッチャン。
恋人は今日も来ない。喧嘩してまだ怒ってるのかな。あの日別れたままだ。
あの日?
女の頭に喧嘩した日の事が蘇る。
喧嘩した後、彼はどうしただろう? 帰っただろうか? 突然記憶が曖昧になる。まるで雨に濡れた窓から外を眺めてるみたいに、輪郭がぼやけて形を崩す。
女は冷蔵庫から冷えた麦茶を出し、コップに氷を入れようと、冷凍庫のドアを開ける。そしてああと溜め息をつく。
早く冷凍庫の中を整理しなくちゃ。大型だけど、こうもいっぱいだと、冷えるのも冷えない。
麦茶を持って、また縁側に座る。雨のせいか通りに人通りは少ない。
道路に出来た水たまりに、雨が跳ねる。
お前のその支配的な愛は沢山だ。お前のは愛なんかじゃない。ただの独占欲だろ。とてもじゃないが、俺には耐えられない。別れてくれ。他に好きな女もいる。お前とはもうやっていけない…。
誰の科白だったかな。
女は考えた。見覚えのある顔。その後ドラマはどうなった? 相手の女は、泣いてた? 笑った気もする。とにかく男は、殺されて大型冷凍庫に…。
雨は止みそうになかった。また日が暮れた。
夜になって雨は雷雨に変わった。
雷はどんどん近付いて来た。そして突然、空を割るような、バリバリという音がしたかと思うと、停電になった。どうやら落ちたらしい。
翌日は快晴だったが、電気は回復しなかった。
次の日、警察がやって来た。近所から悪臭がすると通報があったと説明した。女は落雷で電気系統がやられて回復しないと言った。
警官が冷蔵庫を開けると、なるほど、中の食べ物は腐り始めている。
奥さん、早く処分した方がいい。
女はにっこり笑う。ええ、今夜にも。
終わり
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