気配りのひと

July 29, 2016

ラッシュ前の早朝の車内。現場仕事を終えた60過ぎくらいのオッチャンが乗車してきた。ヘルメットと頭の間にタオルを挟んだスタイル。

私の目の前の座席にドカッと座り、重たそうなカバンをドサッと足元に置き、ヘルメットとタオルをとると、ツルッとした頭が顔を出す。


カバンをまさぐりはじめ、何かをとりだした。
あ、ファブリーズ!
そやんな、ヘルメット、ファブっとかな臭くなるもんな。うんうん。
オッチャン、デリケートぉ。

あ、手のひらにシュッとした!
おぬし、やるな。
ひとけの少ない車内とはいえ、公共の場でスプレーは、見知らぬひとが吸ってしまってむせることもあるもんね。

めっちゃ、気配りのひとやんかいさ!

と、次の瞬間、手のひらにスプレーした液体を、ツルリとした頭から、顔から、首から胸から、腹から、手までぬりだした。

そっちか。そっちに使うのか。

いや、これもきっと気配りなはず。
オッチャン、全身の匂い消えたら、えーな。
たぶん消えへんけどな。

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