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機内での出会い

カンボジアからの復路の機内でモーリシャス人のヤンご夫妻の隣の席だった。
ヤン夫人が窓際、旦那さんが真ん中、そして通路側に私。

私の祖父母よりも少し若いぐらいの歳の頃のご夫妻。離陸してシートベルト着用サインが消えるとすぐに旦那さんは席を立たれた。その為、私は一度席を立ち、席に戻る時にヤン婦人と目が合い、お互いに微笑み合った。すぐにヤン夫人に話かけられ、とても良いテンポで会話ができたのでヤン夫人との会話は弾むと思った。ヤンさんが戻られた際に、夫人が
「私は彼女と話したいから、あなた窓際に行って。」
とヤンさんに言い、ヤン夫人を真ん中に3人で色んな話を次から次へとした。

一番最初のトピックは
「カンボジアの税関でいくら払った?」
だった。
「え?何か払う場所あった?出国時だよね?」
それって、賄賂ってこと?と面喰いながら私は聞いた。
「そうよ。あなた何も言われなかったの?出国審査で言われたのよ。」
「いえ、私は何も言われなかったよ。でも、それって払わなくていいやつじゃない?いくら請求されたの?」
「そうよ。私たちは悪くないから本来なら払う必要の無いお金。でも払わなきゃ出国手続きしてもらえないのは分かっていたし、このフライトでマレーシアに住む子供の家族に会いに行きたかったから払ったわよ。やっぱりあなたは請求されなかったのね。」

いくら払ったのか今となっては忘れてしまったがかなりの金額払ったんだな。とカンボジアのイミグレーションオフィサーの、がめつさに若干引きつつ何も言わずに払ったご夫妻もすごいなと思った。
支払いを拒否して、違うカウンターに並び直したらどうなるんだろう。良くない状況になって出国できなくなるのだろうか。

そして、話は彼らのバックグラウンドやお子さんのご家族の事、そして私のバックグラウンドや私のモーリシャス人の友達の話となった。私の恋愛話になり、ご夫妻から沢山のアドバイスをもらった。宗教的な観点から、私の彼氏はやめときなさいと言われたけれど。
それでも、ご夫妻とのお話はとても楽しく、私を思ってのアドバイスだと感じられた。

約3時間のフライトでずっと喋りっぱなしで、あっという間に着陸した。飛行機が苦手な私は普段はフライト中とてもナーバスで、少しの揺れにも敏感に反応してしまうのだけど、こんなに楽しいの一言で一ミリも不安にならなかったフライトは初めてだった。

とても楽しく、不安も無かったせいか着陸してすぐに降りる準備をしようと立ち上がってしまい、CAさんに「まだ立ち上がらないで!」と怒られてしまった。

ヤン夫人と電話番号を交換し、ご夫妻とハグをして別れた。

ほんの一時でも、とても温かい時間を過ごせる瞬間が好き。その時間はほんの一時だとしても、ずーっと後まで素敵な思い出となって心を温めてくれるから。

ヤンご夫妻の温かい笑顔も、手を握られた時やハグの温もり、温かみのある声、優しい言葉たち。全てが私の中で宝物として残り続ける。そして、それは旅先からのお土産としても私の中に残り続ける。




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