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真夏のサンタクロース

移住後2回目のクリスマス。
亜希子は家で静かな時を過ごしていた。

夜22時過ぎにスマホの通知音が鳴る。
半年前ぐらいに同僚の結婚式でブライズメイドをした時に知り合った、グルームズメンの1人だ。

「家の外にプレゼントを置いたから受け取って」

ドアを開けて外を覗くと、ドアの横にプレゼントが置かれていた。
ヴィラタイプの家に住んでいたので、ガードハウスを抜ければ誰でもドアまで来れる。

連絡したらサプライズにならないじゃない。と思いつつ、プレゼントを拾い上げ部屋の中へ戻る。
誰でもドアまで来れるからプレゼントを持って行く人がいるかもしれないし、なんせ常夏の国。家の周りにはヤモリ、蛇、コブラ、ネズミ、猫等々色々いる。
すぐにプレゼントを家の中に入れる方が安全だよね。。と亜希子は納得する。箱に入ったプレゼントの中身は美しい朱色のロングスカーフだった。

次に会う予定も無い、そのサンタクロースにもらいっぱなしは悪いと思い、すぐ電話をした。
彼はまだ家の敷地内にいたので、お茶に誘った。
クリスマス用に用意していたお菓子とお茶を出し、少し会話をした。
友達と一緒に毎年手分けをして、サプライズでプレゼントを知り合いに配ってるのだと言う。それは、すごく素敵な活動だと思った。
特に移住後2回目のクリスマスで、まだそんなに友達が多くない亜希子はとても心が温かくなった。

お茶が終わる頃「まだ配達は残っているから」と彼は去って行った。
本物のサンタクロースみたいだな。と亜希子は温かい気持ちで見送った。


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