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初恋とスミレ

「ねぇ、ミカちゃんに見せたいお花があるから一緒に来て。」

ミカの手を取り走り出す悠人。
可愛らしい4歳同士の小さなカップルが、
団地の共同畑の中を駆けて行く。

畑の端のほうへ着いたところで足を止め、
悠人は足元に咲く可愛らしい紫色の花を
指差しながら、ミカの方を向き
「見て!これ、スミレって言うんだよ。」

とミカに教えた。

ミカは「そうなんだ!スミレって言うんだ。綺麗だね。」と、その場にしゃがみ込み近くで観察しながら応える。

一通り観察し、スミレを愛でた後、
手を繋ぎながら今度は歩いて元来た道を
二人で戻って行く。

その日からミカにとって、スミレは特別な
花になった。悠人と離れ離れになっても、
大人になってもあの日の事は折に触れて
思い出し、ミカを勇気付けたり、温かい
気持ちにさせてくれる。そして、スミレを
見る度に4歳の悠人を思い出す。

団地内には同い年の男の子、女の子が沢山
いたけれど、当時の二人はお互いがお互いにとって特別だった。ミカにとって悠人は
他の友だちとは違う存在だった。

だから、お花の名前を教える為に連れ出してくれたことは、子供ながらに特別扱いをされているような、大切に思ってもらえている
ような感じがして、とても嬉しい出来事
だった。

きっと、ずっと大切な思い出として、特別な花として心に残り続けるだろう。



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