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悔やまれる引っ込み思案な性格

引っ込み思案で得をすることなんてあるのだろうか。

未亜は幼いころから極度の引っ込み思案だった。意思や承認欲求は強いのに人前に出ることも注目されることも苦手。人前に立つと膝が笑い出す。
引っ込み思案なせいで、チャンスを逃すことが少なくない人生だった。

ある日、コンドミニアムに帰り、エレベーターへと続くドアへ向かっていると、目の前にいた欧米系の女性がドアを押さえて笑顔で待っていてくれた。
未亜は彼女を見上げ、目を見ながら御礼をいいながら「めちゃめちゃ綺麗な人だな。」と密かに感動していた。
「綺麗ですね」と言えば良かったと思いつつ、彼女の後ろをついてエレベーターへ向かうと、既にエレベーターが開いていて彼女の同行者と思われる方々が中にいた。
未亜も一緒に乗り込み、彼女を含む5人がエレベーターの壁際にぐるりと立ち、未亜は彼女たちに囲まれる形で真ん中に立った。
男女のそのグループはみんな長身ですらりとして美男美女だった。
「これ、普通の人たち?美人の友達は美人が多いとは言えど、こんなにも飛び抜けた美男美女って揃うもの??」と多少緊張しながら考えていると、急にコーラスが始まった。
「何これ?急にコーラス?しかもめちゃめちゃ上手い。」
未亜はますます混乱と緊張し、前を向いたまま硬直した。
コーラスは未亜のフロアに着くまで続き、未亜は硬直したまま彼女たちを振り返る事もなく降りてしまった。

美男美女のコーラス。しかも、普段街中で見る美男美女のレベルをずば抜けて超えていて、コーラスもとても美しかった。
なんで私は拍手したり、感動をそのまま伝えられなかったんだろう!と未亜は激しく後悔するも後の祭り。
「私がシャイだから伝えられなかった、表現できなかったなんて絶対に伝わってないだろうし。」と未亜は申し訳ないという思いと、情けない気持ちになった。

一通りの後悔と自分責めを終え、落ち着いた未亜はある事を思い出した。
数日前に未亜の住むコンドミニアムのビル自体を所有している友達が、オーストラリアの子供番組に出ているグループがイベントで来る時に、このコンドミニアムに滞在するんだ。と嬉しそうに言っていたのだ。
未亜はもしかして!と思い、朧気な記憶を辿りそのグループをグーグルで検索した。さっき会った実物の彼らの方が写真の何百倍も素敵に見えたが、この人たちであろうことは間違えなかった。
まさか友達が言ってた人と偶然会うなんて。と面白い気分になった。

引っ込み思案は百害あって一利無し。特に海外にいると。
未亜はもっと自由に素直に自分の感情を表現できるようになりたいと思いつつ、こういう悔しい経験の積み重ねがあるから、次こそは!と思えるので少しずつ改善されていくのかもしれないと希望を抱きつつ、素敵なサプライズに感謝した。

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