kazのこんなカメラ③Opema II
今の標準的な35mm判の大きさの別名と由来はご存知だろうか。難しく考えなくていいですよ。
ライカ判と言います。由来はその名の通り、バルナックライカが採用したサイズだから。
要するに映画用の35mmフィルムをぶったぎって撮れるようにしたのがライカの始まりですからね。今の35mmフォーマットの基準でもあるとってもエライカメラなのだ。
実はバルナックより前にこのサイズを採用したカメラもあったらしいとは聞く。
ところで、このライカ判以外の35mmフォーマットはご存知だろうか。
有名なやつで言えばハーフ判。スクエア判なんていうのもある。
ニホン判というサイズもあるぞ。大昔のニコンやミノルタが採用していたサイズで、24mm×36mmのライカ判より左右が短く、24mm×32mmとなるサイズ。日本ではその後GHQの要請で駆逐されたそうだけど。
閑話休題。
今回取り上げるのは私が大好きで大好きでやまないチェコスロバキア共和国のカメラ。
その名前を「Opema」と言います。
フレクサレットを作ったチェコのMeoptaが作ったレンジファインダーカメラ(目測版もある)で、広義ではライカコピーの一派に例えられます。
実はライカとは共通点が殆どないんだけど。
このカメラの紹介をしていきたいと思います。
・LEVEL 1:おてんば姫の旅立ち
このOpema、チェコのカメラでは数少ない「目視でピントを合わせる機能があるカメラ」。他は殆ど目測機しかない。
フレクサレット及びその前身シリーズと、このOpema II、あとは戦前にエミール・ビルンバウムが作ったPerforettaの一部モデルくらいしかないんじゃないか。目測じゃないチェコカメラ。
(Perforetta IIb・1930年代半ば製)
Contaxタイプの裏ブタと一眼式の距離計付きファインダー。全体的に落ち着いたデザインで、このOpemaを
「チェコの美姫」と例えるwebサイトもあった。
美姫、美姫ねぇ……
確かに顔はいいけどこのお姫様、とんでもなくじゃじゃ馬だぞ。
まず、バルナックライカと比較してみる。
ライカのシャッタースピードはモデルによって異なるので割愛。
Leica II
フィルムフォーマット:35mmライカ判(当然だね)
距離計:二眼式
フィルム装填方式:底蓋式
巻き上げ:時計回り
レンズマウント:L39スクリューマウント
Opema II
フィルムフォーマット:35mmニホン判
距離計:一眼式
フィルム装填方式:裏ブタ式
巻き上げ:反時計回り(後期型は時計回り)
レンズマウント:L38スクリューマウント
シャッタースピード:1/25~1/500 +B
さらにフランジバックも異なる。ライカとオペマの共通点は「35mmフィルムを使うフォーカルプレーン式カメラ」というところぐらいしかない。マジで。
せめてレンズマウントだけでも素直にL39ならもうちょっと知名度が出たかもしれないが……
・LEVEL 2 :おてんば姫との出逢い
そもそもなんでこんなにカメラを買ったのか。いや、元々チェコのカメラ好きだ、というのは勿論なんだけど、これ買うの投票で決まったのよ。
年末になんかカメラ欲しいなー、と思い、どれにしようかなと投票を実施したのだ。
冒頭書いたとおり、このOpemaはちょっと変なフォーマットのカメラだから一応事前にラボに現像の可否の相談はしたけどね。
ちなみに一枚に付き4mmライカ判より横幅が狭い、ということはだ。
単純計算ライカ判のカメラより4枚多く撮れることになる。実際は36枚撮り一本で41~42枚くらい撮れるかな。
フィルムが高い今日!ニホン判で資源を大事に使おう!
(少なくとも日本ではこの理屈でニホン判なる珍妙なフォーマットのカメラが作られたらしい)
コマ間もめっちゃ狭い。どのくらい?このくらい。
いつも自家現像して裁断するのに神経を使います。マジで。
・LEVEL 3 : おてんば姫入院する
そんなこんなでOpemaライフを送り始めた訳だが、どうにも幕速が安定しない。Ebayだからね。
一生懸命修理してくれそうなお店を探して、漸く見つけたお店で直して貰った。
「変なカメラ!」とのことだ。
うん、まあ、そうね……。
ソ連製は直しても精度が出ないから、と断られるんだけど、チェコ製はギリギリ直してもいいかな、という次元の造りらしい。
オーバーホールして貰った後は(比較的)かなり扱いやすくなって(比較的)安定して動くようになった。
使い勝手の話をするとFedよりちょっと劣るくらいのカメラかな。
その後も何故か対物レンズがいつの間にか無くなっていて、ドナー用のOpemaをもう一台買う羽目になったり、そもそも純正のスプールなんぞ見たことがないので、まずは使えるスプールの選定からだったり。
このカメラの運用に関しては少し苦労した部分はある。
LEVEL 4 : おてんば姫の実力
はっきり言うけど、真剣に実用を考えるならFedかZorkiの方がいい。
まずこのカメラ、L38スクリューなんて勿論純正しかないんだけど、この純正のレンズがどうにもミョーな色味になる。
白い車です。なんかちょっとアンバーでしょ。
快晴の青空です。なんかちょっと淡い色でしょ。
こんなベージュ色じゃありませんでした。
そもそも、カラーフィルムなんか想定していないレンズなので、標準レンズのBelar(45mmF2.8と45mmF3.5がある)には真っ青の綺麗なコーティングが掛かっている。
恐らくこれが原因でちょっとアンバー掛かったすっとぼけた写りに化けるのだと思う。
ちなみにフレクサレットと同じBelar銘だけどあっちはこんな色にはならない。
でもこれはこれで趣があるからいいのだ、と思いません?ダメ?
一応、元々茶色っぽいものは結構よく写る。
ところが、この特色はある条件では結構大化けする。その条件とは、クロス現像。
ね?特にKodakのE100をクロスするとなんとも鮮烈な印象を与える。
と、いうかそもそもカラーフィルムなんぞ前提としていないレンズなんだから、これ白黒で使えばいいじゃん。
そうするとこうなる。
キレッキレじゃねーか。
このように、使い方にちょっとどころじゃない癖と、撮ったフィルムのスキャンなんかにも手を焼かされるとんでもないじゃじゃ馬なお姫様だ。
このおてんばっぷりを受け入れられるか、もっとマトモな方がいいか。
それがこのカメラに合う人と合わない人の分水嶺だと思う。
・LEVEL 5 :おてんば姫の出逢い方
もしこのカメラが気になった場合は。一応国内でもたまに売ってることはある。交換レンズは中々見つからないけど。
シャッター幕周りに持病があるカメラなので、そこはキチンと検品出来る環境で買うのが望ましい。
スプールの代わりにパトローネの軸棒が入ってることが多い。それ、ゴミだからすぐ捨てよう。
長巻き詰め直しならともかく、市販の35mmフィルムをわざわざチョキチョキする必要はない。ただでさえ撮った後面倒臭いんだから。
どこのご家庭にも数個は必ず転がっているKievの純正スプールがジャストフィットです。
さっき載せた戦前チェコカメラのパーフォレッタも同じ手口で使える。
やはりKievは神。
距離計は中に豪華な棒プリズムがズドン!と乗っかっているんだけど、ぶっちゃけ合わせやすくはない。
試しに普通の人に覗いて貰ったところ、
「え?……は???」
と言われた。
うるせえ、肉眼でピント合わせられる時点で高級機だろうが。贅沢言うな。
・LEVEL 6 :おてんば姫の足跡
そんなこんなでこのカメラ、大好きである。
Opemaの作例アルバムを載せておく。
全体のごく僅かしかアップロードしていないが、一応200枚はある。
多分日本で一番多くOpemaの作例載せてるんじゃないか。そうでもない?他にあったら教えてください。
その人と友達になるから。
kaz