第93回フィルムさんぽ(平日回)に参加してきた件
フィルムさんぽは実は平日にも開催されている。
私は日頃はか弱きプロレタリアートとして平日はずっと仕事をしている。数年前までは土曜日も仕事だった。
そのため、当然だが平日回とは基本的に縁がない。土日祝日の通常回のみ参加してきた。
話は変わるが9月の頭頃。上司からある通達が出された。
「9月末で期が変わるから月内に有給休暇を使い切れ」と。
私はその言葉に少々驚いた。
いや、有給休暇取得は数年前に義務化されており間違いなくブラック企業側の弊社でも有給取得が義務付けられてはいる。
ところが、私は毎年毎年なんだかんだで体を壊して入院したり欠勤したりしているので義務分の有給はいつもそちらに充てている。
有給日数の数字とは期末になると勝手に増減している謎の数字、くらいのものでしかなかったのだ。
そっか、昨年から今年は病気しなかったのか私。
まあそんなこんなで義務化されてから初めて自らの意思で有給休暇を取ることにした。
それも3日間もある(残り2日の義務分は夏休みと正月休みを伸ばす為に使用されている)。
折角なので私の仕事が比較的軽い火曜日に一日分休みを取ろうとしたところ、運良くフィルムさんぽの平日回がこの日に設けられていたのだ。
これはここに使うしかないだろう、と有給休暇申請を出した。
休み中に会社から問い合わせが来ないように前日22時前まで働いてはきたが。
いつもどおり使うカメラの投票を行ったが、同票決着となったため決戦投票も行い、使うカメラが無事決定した。
今回の使用カメラは以前にも紹介したContax IIに決定した。
機材は出来るだけコンパクトにスナップ寄りにしたかったため、戦中テッサーと8.5cmゾナーのみ携帯。フィルムは当初別の回でも用いたEktachromeのクロス現像にしようかな、と思ったがシンプルに日和った。
折角の機会にリスキーな事して台無しになってしまうのはなあ……と。結果的にたまたま見つけてストックしておいたXP2 SUPERがあったのでこちらを使うことに。
自慢じゃないがXP2は色々実験してそこそこ仲良しなのだ。
さて撮影会が始まるのだが……今回の平日回には奇妙な特徴があった。
うん。何故か参加者の多くが期限切れフィルムを使っていたのだ。なんでなんだろね?
まあProvia400Xだのナチュラ1600だのQUALITY II(多分フジカラー100の海外販売名)だのへんなフィルムのバーゲンセールだ。 まあ全員ちゃんと映っていたが。
日和った私もサブカメラ用に期限切れフィルムを用意して行った。
KodakのMAXBeauty 400(12枚撮り)である。12枚撮りフィルムなんて普通の35mmカメラで使ってもしょうがないので用意したのはハーフ一眼レフオートカメラ、SAMURAI様。
まあ結論から言うと経年による感度を2段くらい下げておきたかったのだがDXコード機能の関係で出来ず、露出不足の失敗写真になってしまったのだが。
一応フィルムはガサガサだったが狙い通りには撮れた。プジョーの銀色のエンブレムに青空が映り込んでいたので空色のライオンを撮りたかったのだ。
10月なのに30℃近い汗ばむくらいの陽気で、中々体力を奪われながらも三軒茶屋から下北沢に向けて歩いたが、幸い日差しが強く、割とモノクロが使いやすい陽気であった。
私が使っていたContaxはシャッターや革の状態には問題がないものの、ちょっと渋さを感じるサビと、フォーカシングギアが硬いという部分に弱点はある。
気温が高かったためか普段よりはギア抜けもよく力も要らなかったのだが、それでも一日使うと中指に跡が残るくらいではあった。
はい、これがContax指ですね。フォーカスをギアで行う都合上、ギアが硬いと結構中指の腹が痛く、場合によっては指に跡までついてしまう。
勿論状態のよいボディではあまり起こらないし、Contax Iではそもそもギアの金属の材質が違い柔らかいためか殆ど発生しない症状である。
これだけ頑張ったんだからちゃんと映ってくれていると嬉しいが……
そして、講評会場に移動して写真の講評を行う。主宰からルール説明を受け、撮影した写真をチェックすると……
おおおお!バッチリ写っている!野武士のようなヤレた外見とギアが硬いこと以外は本当によい個体だと思う。思わず褒めてしまった。
割と私は「靴」を撮影することが多い。色々なデザインのものもあるし、今回のように日差しが強いときは足元に影が出来てなんとなく意味深だからだ。
この写真なんて途中で入ったキャロットタワーの展望台にピッタリ光と影の帯が出来ていたので、参加者さんにお願いして立ち位置を調整してもらってまでして撮った。
シャドウ部をスコーン!と落としたかったので想定通りの出来になりニコニコである。
他には結構影「を」撮っていた。樹木の影と落ち葉を撮って影の樹、というモティーフは撮りがちなのだがモノクロだと葉の色が出ないのでイマイチ。
何撮ってるんだこれ?って感じではあるのだが、駐輪場に停めてあった自転車の車輪とその影。なんとなく形が歯車というか、機械式時計を分解した内部のように見えて面白いので撮影した。
完全に形合わせの一枚だったが意外と好評を頂けたりした。
これもモノクロだとわかりにくいやつ。でもカラーでもクドそうなのだよな。
放置自転車の荷台に絡まりながら植物がぐんぐん生えており、なんというか物質文明が植物に食われているようで絵的に面白かった。
展望台から街並みを8.5cmのゾナーで撮影したもの。この写真に関しては8.5cmという画角がなんとなくしっくり来ており、同じようなものを5cmのテッサーで撮るとこうなる。
「風景」になってしまうんだよなあ。今回はコンパクトさを求めて持ち出さなかったが、多分13.5cmでやると寄り過ぎて主題が「家」か「電車」になってしまうんだろう。
このシチュエーションでゲームの「A列車で行こう」のような「町並み」として撮影するなら8.5cmが丁度良かったのかもしれない。
困ったときは車かバイク。
と、いうわけでワットマンで拾ったContaxは指先へのダメージさえ考えなければめちゃくちゃちゃんと映る、という事が改めて判明した。
レンズも敗戦直前に作られたノンコートのアルミバレルの安っぽいテッサーなのだがまあ映る。
お昼にいつもの中華屋で飲んだ桂花陳酒も甘くて美味かった。
この世で一番美味い酒は昼間から飲む酒であり、平日だとさらに倍うまい。
余談だが、さんぽスタート直後にピッカピカのかっこいいオールドカーが走ってきており、皆目を引かれていた。
私は芸能関係詳しくないのでわからなかったがどうも有名なある芸能人らしく、なんと参加者の方が
「写真撮らせて貰っていいですか?」
と、許可を貰っていたらしい。
なにかのトーク番組で、
「車の運転中にフィルムカメラを持った集団に囲まれて愛車の写真を撮られた」と語る芸能人がいたら。
犯人は恐らく我々である。
kaz
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