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kazのこんなカメラ㉙ ASAHI PENTAX SB

 元々私が「ちゃんとカメラを始めてみよう」と考えて最初に購入したのがPENTAX K50だったこともあり、PENTAX系のカメラは割と揃いが良い。
 最初に自分で買ったフィルムカメラはPENTAX MXだったり、アサヒフレックスIIに関しては現在でも使用する切り札の一つであったりもする。
 旭光学のカメラの歴史上最も重要な位置づけになるカメラはPENTAX SPであることは恐らくあまり異論がないだろう。ないんじゃないかな。多分ないと思う。ま、チョト覚悟はしておけ。
 当然私もSPを使っていたこともあるし、非常によく出来たカメラである、と思う。

 引っ越しに伴い、機材の整理を行う必要性があったため「M42は東側のカメラがあればいいかな」と、SPとタクマーシリーズ、あとついでにHOYAのズームレンズをフィルム沼に落とそうと画策して友人に贈与した、というのもこの間の記事で少しだけ触れた

 今回はそんな前置きから話が展開していくこととなる。


 



Automatic


 2024年から私は会社内での部署異動に伴い、通勤経路が大きく変わった。これまでは最寄り駅まで車で15分→電車で30分だったのが、35kmほど離れた営業所まで車で通勤することとなった。
 これによって、これまで存在は認知していたが駐車場に入る道を知らなかったハードオフに入れるようになり、そのハードオフが結構カメラ関係に強い品揃えをしている、というのを以前のフィルムさんぽの参加記事の冒頭で書いている。
 たまたまこのハードオフで見つけたレンズがあった。


 オートタクマー35mm F3.5。
 PENTAX初期の半自動絞りのレンズである。これはジャンク箱に転がっていたのだが傷一つない光学に対して値付けが、1000円。
「は!?」と思ったのは事実なのだが、注意書き部分に「絞った後絞り羽根が戻らない」とか書いてあった。
 そりゃあ戻らないよな。半自動絞りだものな。
※半自動絞りは、絞りを決定した後レバーやスイッチを操作することで絞り羽根を開放状態に戻す。その後シャッターに連動して自動で絞り込まれる。

 この時点で既にSPは手放していたが、まあM42レンズだし東ドイツやソ連のボディで使えるしな、と購入していた。

 そして先日のシケズーム回。何故かジャンク箱に光学美品のテレタクマー200mm F5.6が転がっていたのでこれもついつい購入してしまった。


 価格は1500円

 これはプリセット絞りのレンズ(プリセット絞りに関してはここでちょっと説明もしている)である。
 アダプタを噛ませてデジタルカメラやCONTAX AX、NONSのチェキ一眼などで運用する時にはプリセット絞りの方が扱いやすいという面もあるのだが、先述のオートタクマーと同世代のアサヒフレックス登場〜SP登場前夜の世代のレンズとなるため、折角だから同じ世代のボディも欲しいなー、と少し探していたわけだ。

traveling


 さて、この「同じ世代のボディ」とは何を指すのだろうか。
 ここで旭光学一眼レフの歴史をちょっと辿ってみたい。

 1952年 5月 アサヒフレックスⅠ型発売
 他メーカーがライカコピー機から発展している中、何故かプラクチフレックス的な一眼レフを発売している。頭おかしい。

 1953年 5月 ⅠA型発売
 
セットレンズにピント合わせ時暗くなる実絞り方式からプリセット絞り式を採用

 1954年 11月 アサヒフレックスⅡ型発売
 なんとこの時点で既にクイックリターンミラーが搭載されている。頭おかしい。

 1955年 2月 ⅡA型発売
 
スローシャッターを搭載。後の旭光学機の基本がここで出来上がってくる。

 1957年 5月 アサヒペンタックス発売
 アサヒフレックスの37mmスクリューから42mmプラクチカスクリューに変更、国産機として2番目のとんがりペンタプリズムを採用
 レンズ付き49800円。

 と、アサヒフレックスで国内初の35mm一眼レフが登場してから5年で「ペンタックスの一眼レフ」の形に行き着いていることがわかる。

 ところが恐ろしいのはここからである。

 1958年 5月 アサヒペンタックスK型発売
 「King of SLR」のKの名を冠した発展機が登場。
 ここでシャッター速度が最速1/1000秒と半自動絞りのオートタクマーシリーズが登場する。レンズ・ケース付きで51500円。

 1959年 5月 アサヒペンタックスS2型発売
 ペンタックスKの改良型で、一軸スローシャッターとマイクロプリズムを搭載。
シャッター速度こそ最速1/500に抑えられるが生産性を見直しレンズ・ケース付き32600円。

 これヤバくないですか。

 たった1年でほぼ同等の性能、一部取り回しでは上回るボディが2/3ぐらいの低価格になってるわけで。

 宇宙世紀かな?
 
 これK型買った人たち怒らなかったのかな?それともスペックの数字には載らない造りの良さがあったとか?

 1961年 4月 アサヒペンタックスS3型発売
 ここで完全自動絞りのスーパータクマーシリーズが登場
 シャッター速度も最速1/1000となっている。外光式の露出計・PENTAXメーターが用意された。レンズ・ケースセット36400円

 以後、SV、SP、SLとこのラインが続いていくこととなるが、旭光学はアサヒペンタックス登場から僅か4年で

・完全自動絞り対応
・シャッター速度最速1/1000
・マイクロプリズム
・一軸シャッターダイヤル
・低価格化

を成し遂げているわけだ。

 宇宙世紀かな?

 前置きが長くなったが、(以後のボディでも使えるものの)オートタクマーとプリセットのテレタクマーに合わせるならば、ボディはASAHI PENTAX K型かS2型の時代となるはずだ。
 この内K型はレア度が高く現在の流通価格も高い為、私はASAHI PENTAX S2型のボディを探す事にした。


Simple And Clean


 S2型は結構売れている。
 省略したが完全自動絞り対応のS2後期型、S2スーパー、海外輸出用のS1a(最高速度が1/500に抑えてあるが隠しでハイスピード1/1000相当はある。海外でのクレーム問題?)などもあり、メルカリなどで探しても比較的見つけやすいカメラの一つではある。SPほどじゃないけど。
 出来るだけお値段が嵩まなさそうなものを探したところ、幾つか見つけることが出来たのだが、多いのが「父の持ち物」「祖父の持ち物」「インテリア代わりに」的なちゃんと動くか分からないものであった。
 うーん、機械的にはシンプルの極みだから動く可能性も高いんじゃないかなあと思うが、バリバリ使いたいからできれば動作確認済みのものがいいんだけどなあ……

 そう思って探しているとヤフオクでカメラ修理業者さんが出しているボディを発見。お値段もそこまで高くない。うん、こういうのでいいのよ……と調べていたところ、
 「あれ!?SBがある!」
 私の目に入ったのがPENTAX SB型(55mmオートタクマー付き)であった。

 SB型とはなにか。
 PENTAX S2型は結構売れてバリエーションが幾つかある、と先述したが、その内自衛隊の基地内で販売されたものがSB型。
 BはBaseなんちゃらだ、という記述を見かけたがソースはない。まあ機械的にはS2の銘板違いのちょっと珍しいやつ、位の扱いでよいだろう。
 何故わざわざ銘板を打ち替えているのかは知らない。自衛隊販売時のルールなのか、廉価化という話はあるようなので、S2型と敢えて別機種とすることでより安い定価を別に設定したかったとか?

 標準域のオートタクマーは手元にないのでこれでいいかなあ、とよく見ると通常のS2型と値段が殆ど買わない。
 「よし、これ入札しておいて駄目だったら他のS2型にしよう」
 と目論んでいた所無事落札。オーバーホール済みのボディとオートタクマー55mmが到着する手はずとなったのだった。


 流石にオーバーホール品、各所の動作は快調そのもの。特に巻上げが非常にスムースである。
 そりゃあオールドペンタックスは幾度も触ったことはあるが、これだけ滑らかなのは初めての体験。



 銘以外に何か違いはあるのだろうか。


 1000円オートタクマー35mmと。意外とボディが軽いので取り回しがよい。


 1500円テレタクマーと。なんでジャンク扱いだったんだろこのレンズ。


 ついでにテレタクマーの300mm F6.3を探して買っておいたのだが、これがまさかの傷一つもない新品同様クラスの超良品。


 最短撮影距離5.5mというぶっ飛び具合はあるが、軽量で扱いやすい。

SAKURAドロップス

 時は3月末。
 私が企画した【kaz先生と桜を見る会】にこのSB型を投入することとなる。


 自衛隊っぽくストラップをカーキにしてみた。らぶりー。


 今年は桜の開花が非常に遅れており、ソメイヨシノは未だ咲き始め。タカトウコヒガンザクラが満開だった。


 見せてもらおうか。
 旭光学のSB型の性能とやらを!




 オートタクマー 55mm F2.2

 ボディとセットで届いたもの。ものすごくしっかり映っている




 オートタクマー 35mm F3.5
 1000円だったやつだ。




 テレタクマー 200mm F5.6。
 こっちは1500円だった。





 テレタクマー 300mm F6.3
 最短距離が遠く開放値が暗いのでピント合わせに癖はあるものの、比較的軽くて扱いやすい。

 というかM42スクリューマウントの古いボディなのだが丁寧に調整されており使い心地が物凄くよい。
 良い意味でよく見る中古のペンタックス感がどこにもないのだ。巻上げと巻き戻しはOM-1のそれに近い。


 これはソメイヨシノ(品種札を確認した)。
 撮影したのはセットレンズのオートタクマーだが、これかなり良く映る。
 先述の理由で手持ちにタクマーがほぼ残っていないのでスーパータクマーやSMCタクマーと比較が出来ないのだが、私的には必要十分以上の良い映りだと思う。

Keep Tryin'

 M42マウントボディでこれだけ操作感と結果が良いのは初めての体験であり、オーバーホール済みという文言に相応しいものであった。
 ぶっちゃけ値段が同じだったので珍しいSB型を選んだのだが、巷でよく見るS2やSPなどもちゃんと専門店で直して貰うのもいいだろう。



 次のフィルムさんぽはこのカメラを使おうかな。




 kaz








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