kazのこんなカメラ㉘ Olympus OM-1
私は結構、設計者の思想や開発目的が透けて見えるカメラは好きである。
ツァイスレンズのAF化が許されず、既存のMFレンズでなんとかAFを使えるように創意工夫を施されたCONTAX AXや、M型ライカとはまた別の方向でバルナックタイプのレンジファインダー機からのアップグレードを目指したCanon VTなど、他にも色々あるが、「誰もしなかったことをやろう」としているカメラは基本的にそれだけで加点が2倍になるくらい好きだ。
今回紹介するのは「誰もしなかったことをやった」カメラ設計者の中ではかなり高名な天才・米谷美久が手掛けた銘機中の銘機、Olympus OM-1の紹介をしてみたい。
OM-1に出会うまで
ご存知の方も多いかも知れないが、私はフィルムさんぽの中の歓談でカメラの話を振られても
「西側の話はわからん!東側の話になったら呼んでくれ」と平気で言うくらいには西側のカメラの事はよくわからない。
特にニコンは不思議とご縁が殆なく、各モデルやレンズの世代の事なんかはもう全く見当も付かず、必要がある度にググって調べている。
これがゼニットのモデルや世代、レンズの話になれば大まかな流れは大体頭の中に入っているのだけれど。
そんな私が何故OM-1なのか、というと実は以前に一度取り上げたことがある。OM40の紹介記事の冒頭部分だ。
映画の倍速再生やら趣味のタイパが話題になる程度には時間に追われている諸兄に於いては、いちいちリンク先の記事を読むのも大変だろう。特別に要約しておこう。
要するにOM40を買うまでの事情がこんな感じだったわけなのだが、このOM-1の使用感がとても良かった、というのが理由だ。
OM-1とはなんなのか
これはもう、私ごときが一々説明するのも烏滸がましい。
オリンパスが米谷氏が講演会で説明された内容を公開しているのでそちらを見た方がタイパが良いだろう。
https://www.olympus.co.jp/technology/museum/camera/lecture/vol2/?page=technology_museum
簡単に纏めると、ライカはとても良いカメラだが接写に弱い。そういう用途では一眼レフの方が強い。しかし当時の一眼レフは大きく重かった。
なら性能そのままで小さい一眼レフを作ればいいじゃないか、と。
ただ小さいだけではない。顕微鏡から宇宙まで、と言われたオリンパスの技術を使って、必要に応じて様々な用途に組み替えられるシステム一眼レフを作ってやろうと。
そのための開発のアレコレは上記リンクを参照して頂くとして、そうして生まれた組み換え自由の小型システム一眼レフ、それがOM-1なのだ。
私はよくこのカメラを紹介するときに「ガンダムで例えるとF90」という言い方をすることが多い。
F90いいよね。最近出てきたOタイプの強化ビームライフルがF91のヴェスバーから逆算されたようなデザインでとても好きだ。
ちなみに私がフィルムカメラをマジメに始めた際の最初の一台はPENTAX MXであり、これはOM-1に対抗した老舗PENTAXが作った小型機械式一眼レフだ。
このカメラも物凄く良いカメラで船や飛行機での旅行にはよく持ち込むのだが、私はこのカメラの事を「ガンダムで例えるとRXF-91」と呼んでいる。
OM-1の素晴らしいところはやはりそのフィーリングの良さだろう。特にこれは分かる人だけ分かって貰えればいいのだが、撮了後にフィルムを巻き戻す際のリワインドが、このリワインドを体感するためにお金を支払っても良いくらい素晴らしく滑らか。
シャッターの心地よさもあり、成程ライカユーザーが開発した、というだけの事はある。
欠点もなくはない。
まずファインダーはぶっちゃけ暗い。RXF-91ことPENTAX MXと比較するとなんだかソ連のカメラみたいな見辛さだ。まあ初期ゼニットのようなヒドい視野率ではないけれど。
私はこのカメラを手にすると真っ先にファインダースクリーンを標準の1-1タイプからマイクロ+スプリットの1-13タイプのものに交換することにしている。これだけでも随分合わせやすさが変わる。
経年でプリズムを固定するモルトの劣化によりプリズムの銀蒸着が腐食してしまうという持病も持っている。この症状が発生してしまうと我慢して使うか、互換品のプリズムに載せ替えるかをしないと改善しないという厄介さはある。
それらを含んで考えても小型・軽量、各種アクセサリパーツの存在、Zuikoレンズの映りと非常に人気が高い銘機である、と言えるだろう。
OM-1の旅立ち
「あれ?東のkazさんにしては随分ダダ推しするじゃん」とお思いの頃かもしれない。実はこのカメラ、私の手元から旅立っている。
と、いう流れがあった。いや実際妹にパクられた割りに、当の妹本人の趣味が110カメラにスライドしていた為ちょうどオリンパスが余っていたのだ。
好きなカメラなので別に私も使わないこともないが、ご存知の通り私は色々なカメラを持っており、私にとってオリンパスはone of themである。なら使ってもらった方がカメラにとって良いかなー、と思った。丁度引っ越しをしていて荷物と費用の関係でカメラ少し手放してたからね。
こうして旅立ったOM-1を使用して実際に友人が撮影したファーストロールがこちら。
(掲載許可済み)
初フィルムカメラ体験。
完璧じゃん。
OM-1リターンズ
ところで私の家の近所にはやけにカメラ関係の品揃えが優れるブックオフがある。近くに現像ラボがあり、撮影が終了したフィルムを預け、現像待ちの間にブックオフを冷やかす事がある。
フィルムさんぽの忘年会のネガを現像に出し、待っている間の事だった。
カウンターの横に妙に綺麗な、ピカピカのOM-1がある。
しかも安い。ホットシューも50mmF1.8も付いている。動作未確認だけど。
動作未確認なら確認してやればよい。
店員さんに声を掛けると
「巻き上げてもミラーが降りないからこの値段なんじゃないですかねえ……」
うん、降りないだろうね。ミラーアップレバー上がってるからね。
斯くしてチェックをしたところ、シャッタースピードは恐らく問題ない。ファインダーのプリズム腐食もない。
露出計は電池がないためテスト出来ず、フィルム室のモルトは加水分解しているからその内貼り替えるとして……
いやそこまで考えても普通この値段では付いているレンズが買えるかどうかの価格帯であるし、実はOM-1再デビューはチラホラと考えてはいた。
それぐらいOM-1でフィルムの巻き戻しをしたかったのだ。
と、言うわけで衝動買いをしてしまった、というのがこちら。
詳しく言うと後期型のOM-1となり、OM-1MDのMD表記なしバージョンである。
帰宅して余っているV625電池をセットしてみると、おお!露出計も動く。
そんなわけでこのカメラを使って適度にイジワルしながらテスト写真を撮影してみた。
うん、バッチリ使える。
そして私は現在OMマウント再入門として各種アクセサリを再び揃えている真っ最中である。
その中でちょっとスゴイ体験をしているのだが、それは次回の記事に譲ろうと考えている。
OM-1、いいよね。
アクセサリや情報を検索する時デジタルの方のOM-1のものもゴッチャになって出てくるのはたまにイラッとするけど。
kaz