kazのこんなカメラ⑥Druoflex I
チェコのカメラで有名なものはやはりフレクサレットだろう。
特にVI型はグレーの張り革がとてもお洒落で、あのセコニックさんの70周年限定商品のページにも登場している程だ。
限定スタデラ、ぶっちゃけ凄く欲しかったんだけど、休憩時間まで残ってたら絶対買う、と自分に願掛けして敢えて見逃したら買えなかった。
閑話休題。
フレクサレットを作ったメーカーは「Meopta」という。
その前身は「Optikotechna」といい、ライフルのスコープなどバリバリの軍需製品も作っていた。
Meoptaはチェコの中では高級機を作っており、ソ連製やドイツ製にも負けない造りの物が多い。
Opemaもここのカメラだ。
では、他にチェコのメーカーはどんなものがあるだろうか。
ETA、ATAK、Emil Birnbaum、Fex、Dufa、Foka、Kolar、Bradac Bros……
うーん、ソラで言えるのはこのくらいか。
この他に、製品の数で言えばMeoptaと互角以上の大手メーカーがある。
それがDruoptaだ。
・ショミンノミカタ ―プラハカラキマシタ―
Meoptaがどちらかと言うと高級・プロ向け路線であるのと対称的に、Druoptaはやや廉価のベークライト製のトイカメラのようなカメラを多く作っていた。
こういうのや
こういうの。
このDruopta社が作ったカメラの一つ。
「Druoflex I」を今日は覚えていって貰いたい。
・二眼じゃないのよコイツは
「あ、二眼レフ」と思った方も多いだろうが、実は細かく言うと違う。
日本ではあまりそういう分けられ方はされていないようだが、海外ではPseudo-TLRと呼ばれるジャンルに分けられるカメラだ。
簡単に言うと、普通の二眼レフと違い上のビューレンズは画角を確認するためだけにあり、ピントを合わせる機能がない。素通しだ。
下のテイクレンズにシャッターユニットが付いており、実際のピントはあくまで目測で合わせる。
このタイプの「ピント合わせが肉眼で出来ない二眼レフ」のことを、海外ではPseudo-TLRとカテゴライズするようだ。
「Pseudo」ってなんだ。
簡単に訳すと「偽物」。
和訳するなら「ニセ二眼」と呼ぶべきだろうか。
勿論その分製造コストもお安い。フレクサレットより庶民派なカメラではある。
・時の流れに身を任せ
そもそもこのカメラ、一体どうして生まれたのか。
Druoptaが買収したATAK社というメーカーが作っていたINKAというカメラに小改良を加えたものがこのDruoflex Iとなる。なお、IIは存在しない。
買収されたATAK社は、なんとソ連のGOMZが作ったコムソモレツというカメラをコピーしてINKAを開発している。
レッドチーム繋がりだね。
コムソモレツっていうとよくわからないか。あれだ。ルビテルの前身だ。
さらにこのコムソモレツは戦前ドイツのフォクトレンダー・ブリラントをコピーして作られており……
まとめてみよう。
戦前ドイツ:フォクトレンダー・ブリラント
↓
ソ連:コムソモレツ→ルビテル
↓
チェコスロバキア・ATAK:INKA
↓
チェコスロバキア・Druopta:Druoflex
受け継がれる絆、NEXUS―。
とにもかくにも、意外と由緒正しい来歴を持っているわけだ。
・Power of the czech
さてこのカメラ、まずはこの外観が中々お洒落だ。
近寄って見てみよう。
ベークライトの表面に模様が施されている。超絶お洒落。
性能に関しては、まあ廉価製品だし、開放F6.3と、シャッタースピードが最速1/200。
レンズもあまり作りが良いわけでもないし、まあそれなり程度には……
と思っていたのだ。
いやめっちゃくちゃ写るのよ。
廉価機だからと侮っていたが、やたらよく写る。
実はこのカメラ、高名な収集家が高く評価をしているらしく、付いた異名が「最後にして最高のベークライト二眼」と言うもの。
軽い、ファインダーが非常に明るい、よく写る、と実はチェコの隠れた実力者なのである。
欠点もある。性能以外で。
このカメラ、撮影後のフィルムの取り外しが馬鹿みたいに硬い。
壊れるんじゃないか、と思うほど額に汗を流してようやく外れるか外れないか。
以前のフィルムさんぽでは他の参加者さんに外してもらったレベルだ。
もしや120フィルムではなく、よく似た別のフォーマットのカメラなのではないかと真剣に疑った程。
実際はちゃんと120フォーマットらしいので、造りの問題か当時のスプールは今のものよりも少し短かったのかもしれない。
そんなこんなで、見かけたら買ってみることをお勧めする。
売れなかったのか、実は結構なレア物に分類されているけれど。
kaz