質の高い歯科医院を実現するために必要不可欠な「常に誠実でいられる仕組みをデザインする」ということ
一回だけ!?
この一回! 最後の一回! もう一回だけ!!
一瞬は楽になる。
だがな。それを繰り返してると、人は変わってしまう。
『梨泰院クラス:エピソード3』パク・セロイ
医療の質の一番のキーとなるのは歯科医師と歯科衛生士。
したがって、たとえ一人ドクターの医院であっても、自分だけが良い診療をすれば質の高い歯科医院を実現できるわけではなく、歯科衛生士にも質の高い診療をしてもらう必要があります。
歯科衛生士に質の高い診療をしてもらうには、色々なことがポイントになってきますが、今回は「誠実でいられる仕組み」というポイントについて話をします。
なお、このポイントは勤務医にはもちろん、院長である自分にも大きく影響する話です。
患者さんは歯科医療の質を判断できない
過去の記事でも話をしましたが、前提として、患者さんは歯科医療の質を判断することができません。
簡単におさらいしましょう。
歯科医療には下記のような性質があります。
1. ほとんどの診療において主訴の解決が容易であり、診療の質が影響してくるのは数年後、数十年後である
2. ほとんどの診療において、複数医院(異なるDr, 異なるDH)で治療を受け、フェアに比較することが原理的に不可能である
たとえば飲食店なら、一度食べにいけば味のよしあしはすぐに分かります。その場で味のうまいまずいはすぐ分かるものです。
自宅や他の飲食店と比較することで、そこが美味しいお店かそうでないかは簡単に判断することもできますよね。
これを歯科医院で考えると、味が分かるのは10年後で、しかも一生のうち一度しかご飯を食べられないという環境にたとえられます。
そりゃあ、美味しいお店かどうかなんて分かりようがないですよね。
だから誠実さは医療の質に不可欠
この「患者さんは医療の質を判断できない」というのがキーポイントです。
だからヤブ歯医者の医院が流行ることはごく当たり前ですし、名医が評価されないのも自然なこと。
それこそプロ同士の世界で考えても、まるで能力のない歯科医師・歯科衛生士が大きな顔をしてセミナーをしていることだって少なくないですよね。
歯科はそういう世界なんです。
質の高い医療を提供したところで、患者さん本人には分からない、評価されない、自分には何のメリットもない。
それどころか、質を上げようとすればするほど、お金も時間もかかるのが常です。
だから質の高い歯科医院が儲かっていることはありません。
儲からないということは、歯科衛生士や勤務医といった、せっかく共に質の高い医療を提供してくれている大事な仲間に対して給与という形で報いてあげることも難しくなるし、同じく大切な家族に対して収入という形で幸福を与えてあげることも難しくなります。
雇われている歯科衛生士や勤務医の立場としても、質の高い医療を提供すればするほど、むしろお給料は下がる可能性が増すわけです。
自分のお給料の源泉となる利益が減ってしまうからです。
質の高い医療を提供することは、何もメリットがない上に、デメリットだらけだといえるでしょう。
でも、それでも患者さんに対して質の高い医療を提供しようと努力することができるのはなぜか。
そうしたいという気持ちがあるから。
患者さんや医療に対して誠実であろうとする気持ちがあるからです。
このような背景から、誠実さというのは、質の高い医療を提供するにあたって、絶対に必要不可欠な要素といえます。
小さな妥協と不誠実が医療の質を下げていく
院長として大事なのは、スタッフがきちんとした医療を提供すれば評価してあげ、それができなければきちんと指導することです。
そして、妥協や不誠実が常態化しないよう、医院の仕組みをデザインすることです。
たった一つの妥協、たった一つの不誠実でも、「これくらいならいいや」という気持ちが芽生え、不誠実の火種となります。
それを日々当たり前にこなしてしまうと、「これくらいならいいや」が広がり、あらゆる作業におよんで、どんどんと診療の質が下がっていってしまいます。
これまでの記事でも、具体的にどのようなデザインが不誠実の火種となりうるのか、事例を挙げていました。
他でもっと安く買えるけど物販を高く売りつけてもいいや。
意味はないけど唾液検査をやって時間とお金を奪ってもいいや。
ゆき歯科医院では、こういった火種が発生しないよう、徹底して仕組みをデザインするように心がけています。
まとめ
・患者さんは歯科医療の質を判断できない
・↑のため、質の高い歯科医療を実現するためには、誠実さが絶対に必要不可欠
・誠実さを下げないため、小さな不誠実の火種を排除するよう、医院の仕組みをデザインすることが大切
今回は以上です。