それってヘルスケア? ヘルスレコード? ヘルスケア歯科診療について
昨日2023.2.26に日本ヘルスケア歯科学会の地方グループ、東京ヘルスケアGrにて当院より発表を行いました。
テーマは「スタッフ教育」で7医院が発表。
当院はスタッフ教育にかなり力を入れている医院で、その教育のレベルや衛生士の臨床力が圧倒的にガチなので、正直皆さん引いていた感はありましたが、ある程度は参考にして頂けたようでよかったです。
で、その本題とは別に以前から感じていたことではあるのですが、昨日あらためて感じたことについて一つ書き残しておきたいと思います。
僕たちが「ヘルスケア歯科診療とイメージし実践しようとしているもの」と、学会の多くの皆さんが「ヘルスケア歯科診療とイメージし実践しているもの」にわりとギャップがある気がするんですよね。
一言でいうと、学会の多くの皆さんがイメージし実践しているものは、僕たちの感覚だと「ヘルスケア」ではなく「ヘルスレコード」に見える。
すなわち、ヘルス、健康をケアする診療ではなく、健康をレコード、記録する診療という表現が適切なように見えるんです。
僕たちがイメージしているものは、
患者さんを健康にし、
その健康を維持する(健康の変化はもちろん、変化の可能性さえ排除する)
歯科診療です。
ところが、多くの皆さんは
口腔内写真やデンタルX線といった資料をキレイに取得する
歯科診療をイメージし、そこに向かい、実践しているように見えます。
もちろん、より精度が高い情報を取得することは正確な現状把握や診査診断に必要なことですし、規格性の高い資料は長期に健康を管理するにあたって微細な変化を見逃さないために必要でしょう。
また、当然ではありますが、資料の取得にかまけているからといって、治療やメンテナンスを全く行っていないわけではないです。
ただ、正直なところ、あまりに記録というところに偏りすぎているように感じられることが少なくないんですよね。
これはもう肌感覚としてそうなんですが、実際に例をあげるとたとえば、
・昨日の発表で見かけた医院は、どこも「記録」に極端に偏ってスタッフ教育を語っていた
・認定衛生士の症例を見ると、口腔内写真やデンタルX線写真は芸術的にキレイに撮れているが、Pはほとんどまともに治せていないし、Cの予防にいたっては放ったらかしで当たり前になっていた
例1:4mmのポケットが11ヶ所あった患者さんを治療した結果、4mmのポケットが7ヶ所残っていた
例2:歯周基本治療後のBOPが90%
・認証診療所の症例を見ると、同じく、P治療はまともに治せておらず、Cの予防も放ったらかし。Cに至っては、「リスクが高い患者さんなので、頻繁にCRASPします!」とリスク改善の視点がない話までしたりする
こんな感じです。
※C:虫歯
※P:歯周病
なので、こういった実態からすると、
「ステップとして、資料の取得がまだできていないから、質の高い治療を行おうとする段階にまだ到達できていない」
のではなく
「資料の取得ばかりに目を向けている」
と見るのが正しいように思っています。
私の理解が正しいとすれば、
「あるべき姿のヘルスケア歯科診療」
と
「皆さんがイメージし実践し向かっているヘルスケア歯科診療」
にギャップがあるということになるでしょう。
学会の定款に書かれているヘルスケア歯科診療の定義は、健康を目的としていてまさに私がイメージするものと合致するのですが、学会内でなぜか流布してしまっているヘルスケア歯科診療の定義は健康を目的としておらず、定期管理であったり病因論であったりと方法論によって定義されてしまっていることも、問題なのかもしれません。
いずれにしても、このギャップを埋めていくことも学会における大事な活動になるだろうな、と思った次第です。
今回は以上です。