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カリエスリスクアセスメントの最強オススメツールCRASP

前回の記事


前回の記事ではカリエスリスクアセスメントがいかにパワフルで重要かという話をしました。

今回は具体的にどのツールを使うのがいいのか、という話をします。


結論

結論から言ってしまうと、カリエスリスクアセスメント最強のツールはCRASP(Caries Risk Assessment Share with Patients)だと考えています。


なぜならこのツールが

・必要十分な項目が網羅されている

・患者さんがカリエスリスクについて理解できるように設計されている

・患者さんの変化をとらえることができるようになっている

という条件が揃い、患者さんの知識習得・意識変革・行動変容を十分に促せる、おそらく唯一のツールだからです。


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項目を見てみると

・フッ素入り歯磨剤の量や頻度

・砂糖入りの飲み物や食事の回数

といった二大要点をおさえつつ、根面露出や口腔乾燥などのリスクもおさえていますよね。


ほとんど完璧に項目が網羅されていることが分かります。


ゆき歯科医院の改訂版

実は当院では下記のように様式を少し改変して使っています。(CRASPを公開している学会代表の杉山先生にもお伝え済み)

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診査項目自体はオリジナルのものと同じです。


5回分の結果を記入できる用紙にすることで、推移が分かるようにしています。
これによって、実態把握とモチベーション向上につなげています。


また、当院では唾液検査を実施していないので、その項目を削除することで見やすくしています。


加えて、この用紙とは別に内容の解説や注釈を加えた説明用紙もお渡ししています。
説明用紙とCRASP自体の結果の両方をお渡しすることで、患者さんが自分の現状と理想の状態の両方をきちんと理解できるようにしています。


ちなみにCRASPにはFile Makerを用いたデジタル版もあり、これはデータ保存やデータ連携もできるので非常に便利です。
結果の推移も表示できるところもいいのですが、質問全文を表示させて印刷することができないことから、患者さんのインプットにあたって不満があるので、当院では現在も上記のオリジナル紙冊子で対応しています。


参考:CAMBRAは?

アメリカでは歯科大学65校中40校が教育プログラムとして導入しているCAMBRA。1)
超有名どころです。

これも見てみましょう。

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・現在う蝕があるかどうかを見ている

・飲食は間食の回数しか見ていない

などリスクの把握としてピントがズレていますし、患者さんの行動変容につながるような記載の仕方になっていないですよね。


フッ化物配合やキシリトールなどの単語がやたら頻出することからも分かるのですが、思想として

CRASP:患者さんにカリエスリスクを理解してもらい行動変容を促す

CAMBRA:患者さんにフッ化物・キシリトールを処方する

という方向性の違いがあります。

CAMBRAはいかにもアメリカンな思想と設計ですね。


「フッ化物やキシリトールを売りたい」「お金儲けしたい」という医院のためのツールといえます。


参考:カリオグラムは?

カリオグラムは、まず前提として唾液検査であるデントカルトがあります。カリオグラム自身は、デントカルトの付属として説得力を上げるためのツールとして位置付けられた形になっているんですね。


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これらの因子を見ても唾液検査に大きく偏重していることが分かりますよね。


患者さんは下記のような結果を見せられるのですが‥‥

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これを見ても、何がどうなってカリエスに至るのか、自分は何を改善すればいいのか、患者さんは全く理解できない気がしませんか?


とはいえ、唾液検査を行ったり、グラフで表示されたり、何%と表示されたりなど、素人向けに迫力があるので、

「なんかすごい!」

と説得力だけは与えることができます。


なので、

「医療を頑張るのは嫌だけど、手軽にスゴさを演出して集患したい」

という医院にはうってつけのツールといえるでしょう。


参考:NDL mint-seminar(ミントセミナー)の生活習慣アンケートは?

歯科衛生士のセミナー会社として最も有名な会社の一つである、NDL mint-seminarさんが公開している「生活習慣についてのアンケート」についても触れておきます。

NDL mint-seminarさんはSRPのセミナーを始め、非常に素晴らしいセミナーを多数開催されており、受講者も多いので、こちらのアンケートを問診に用いられている衛生士さんも多いのではないでしょうか。

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さて、この内容なのですが、もうカリエスリスクアセスメントに見慣れてくると、パッと見て分かるかもしれません。

正直なところ、カリエスリスクのマネジメントに使えるツールではないですよね?


フッ素について記載すらされていないし、飲食の回数も定量的でなくボヤっとしています。
「口の中が乾きやすい」とアンケートするのもちょっとおかしい気がしますよね? だって患者さんがどう感じるかなんて、そんなに頼りになりません。歯科医療従事者側が、きちんとした尺度を持って判断しなければ、口腔内が乾燥しているかどうか判定するのは難しいでしょう。
細かいことをいうと、根面の露出についても記載がないですよね。

また、この結果を見ても、患者さんが自分でどう取り組めばいいか分かるような記載の仕方ではないでしょう。
そもそも患者さんに見せるような設計にもなっていないですしね。


カリエス以外の内容についても触れているアンケートで、もちろん一定の意味があるアンケートではあるのですが、カリエスリスクアセスメントとして見ると、あまり使えるものではないというのが、穏当な判断ではないでしょうか。


参考:医院独自の問診

ついでなので、各医院さん独自で問診票を作って取り組んでいる、もしくは問診票すら作らずなんとなくで指導している、という場合についても触れておきます。


『歯を守る う蝕治療』という本があります。

日本ヘルスケア歯科学会の代表である杉山先生が書かれた本。

杉山先生はCRASPを作られた先生であり、カリエス予防に最も精力的に取り組まれている先生の一人といえるでしょう。


この本の中で、CRASP作成以前の症例として掲載されているものがあります。

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何かに気がつきませんか?

そう、カリエスリスクを聞き漏らしているんです。

しかも、「砂糖入飲物習慣」と「菓子類習慣」は赤色なので、一番聞き漏らしてはいけない項目。その後も絶対にフォローが必要な項目です。

にも関わらず聞き漏らしているんです。


この症例だけではありません。

その他の症例でも、こういったカリエスリスクの聞き漏らしが見受けられます。


日本で最もカリエス予防に精力的に取り組まれている先生の医院でさえ。どこよりもしっかりと厳しくカリエス予防について教育され、徹底させられているはずの歯科衛生士でさえ。きちんと自分たち独自の問診票を作ってさえ。そんなにも聞き漏らしがあるんです。

あなたの医院が、日本一の先生よりしっかりとしたマネージメントをして、日本一の先生の医院よりもはるかに優秀な衛生士さんがいて、完璧に患者さんから聞き取りを行える。
そんなことあるでしょうか?

まして専用の問診票すら作らず、その場その場でなんとなく聞き取りをしていて、完璧にできるなんてことがあるでしょうか?

私は絶対に無理だと思います。


CRASPのように、しっかりとしたツールをつかって、しっかりと実施する、そうしなければカリエスリスクの聞き取りをきちんとするのはきっと不可能。そう思います。

素直にCRASPを使いましょう。



今回は以上です。


関連記事


1) 『昭和大学歯科病院が歯科大学病院として日本で初めて矯正歯科治療にう蝕の予防管理プログラム「CAMBRA(TM)」を導入 -- 口腔内の健康創造において真の患者利益を追求』大学プレスセンター


更新履歴

2022.7.31 「参考:NDL mint-seminar(ミントセミナー)の生活習慣アンケートは?」を追加

2022.7.31 「参考:医院独自の問診」を追加

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