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なぜゆき歯科医院では歯科技工士を雇わないのか
歯科医院の中には、歯科技工士さんを雇っている医院さんもいらっしゃいますよね。
当院は、歯科医師1名(院長)・歯科衛生士4名・受付1名(+事務長1名)という体制で、歯科技工士さんはいません。
今後雇うつもりもありません。
今回は、なぜゆき歯科医院では歯科技工士さんを雇わないのかお話します。
最初に結論をいうと、歯科技工士さんを雇わない最大の理由は医療の質が下がると推定されるからです。
ついでの理由として、コストがかかりすぎて割に合わないからですね。
この詳細についてお話していきます。
医療の質1. 院内だと成長が難しそう
院内にいる技工士さんと技工所にいる技工士さんを比べたとき、院内の技工士さんは下記の2点において不利になります。
・特定の専門に特化することができず何でもやらなければならない
・指導してくれる人や、一緒に切磋琢磨する仲間がいない
ほとんどの技工所にいる技工士さんは特定の専門性に特化するのが普通です。義歯なら義歯しかやらないのが普通です。
でも院内にいたら全部の技工をせざるをえません。
その結果、どうしても成長が分散し、能力が伸びにくくなると思われます。
また、まだ経験が浅ければ自分を指導してくれる人がいないことも不利な材料となりうるでしょう。
仲間がいることは有利に働いたり不利に働いたり一概にはいえないかもしれませんが、人によって仲間によっては良い方向に働くことも少ないでしょうから、それが得られる人に比べると不利にはなります。
医療の質2. フィードバックを得られる
院内にいる技工士さんの唯一最大のメリットは、歯科医師や患者さんからのフィードバックを得られることです。
技工所の技工士さんも歯科医師から電話等でフィードバックを得ることもなくはないですが、なかなか一件一件の細かいフィードバックまで得るのは難しいでしょう。
せいぜい「よかった」とおおざっぱに褒めてもらったり、「再製だ! ここがダメだった」と指摘されるくらいではないでしょうか。
この点が技工士さんの成長において良い要素として働くものと思われます。
逆に言うと、きちんと時間をとって頻繁にこういったフィードバックをしてあげないのであれば、院内の技工士さんはかなり質の低い技工士さんにならざるを得ないでしょう。
医療の質3. 技工所なら超一流の技工士も選べる
例外はあると思いますが、技工所さんとの技工物のやりとりは、宅配便で行うことが多いのではないでしょうか。
ということはつまり、ほとんど全国どこの技工所さん技工士さんも選ぶことができるわけですよね。
(シェードテイキングのように出張が必要なケースとなると、あまりに遠い場合は問題が出てくるかもしれませんが、そういった例外的なケースを除けばたいていの場合は全国どこでも選べるはずです)
才能があり、専門性に特化して、すさまじい量の研鑽を積み、そして実際に素晴らしい技工物を作られる技工士さんを手軽に(お金に糸目をつけなければ)選ぶことが可能なわけです。
これが歯科医師や歯科衛生士となると、こうはいきません。
実際に医院まで来てもらって勤めてもらう必要があるので、「各分野の超一流の先生に治療してもらう」というのは現実的ではないです。
でも技工物は宅配すればいいわけですから、技工士さんならそれは全然難しくないわけです。
「雇う」のではなく「外注」なので、すぐに依頼先を替えられるのも大きなメリット。
ダメな技工所さんだったら即替えればいい。今の技工所さんに満足でも、より良い技工所さんを見つけたら、今日から替えてしまえる点も、非常に大きなメリットです。
当たり前ですが、すべての分野が超一流の技工士さんを雇うというのは不可能です。そんな技工士さんは存在しません。
まして、院内でフィードバックが得られるとはいえ、あらゆる分野に手を出さざるを得ず、指導者もいない技工士さんでは、たとえ一つの分野だけでも超一流のレベルに達するのはほとんど不可能といっていいでしょう。
院内の技工士さんに技工物を作ってもらう以上、技工所さんへの外注に比べどうしても質は下がる、というのは誰もが同意せざるを得ないことではないでしょうか。
コストの問題
さて、医療の質が下がるということで、もうこの時点で当院では技工士さんを雇う余地はないのですが、ついでの理由としてコストの問題があります。
最初にご説明したように当院には歯科医師が1名しかいません。
また、患者さんの健康を目的にしていることから、一般的な歯科医院に比べアポを長めにとって丁寧に診療していますし、CRの技術が高め(たぶん)なぶんなおさら技工物が少なめ。
一日に出る技工物の数は0~2個とかです。
こうなると、技工士さんを雇っても全然コストがあいません。
質が下がる上に大赤字。
本当に全く雇う余地がないということです。
まとめ
ゆき歯科医院で技工士さんを雇わない理由
1. 医療の質が下がる
理由1-1. 専門性に特化できない
理由1-2. 指導者がいない
理由1-3. 外注なら最初から超一流が選べる
理由1-4. 外注ならすぐに替えられる
2. コストがかかりすぎる
とはいえ、医療の質を下げてでもコストメリットを得たい医院さんや、院内で技工士さんに手早くちょっとした手直しをしてもらえるのがありがたい、といった考えで技工士さんを雇用される医院さんも多いと思います。
また、ごくごく専門に特化した医院、例えば自費の超高額義歯だけに特化した医院さんなどであれば、質という意味でもコストという意味でも検討の余地はあると思います。
今回は以上です。