守っていきたい建築、文化そして音
BGM tourism〜八千代座編〜
スクラップアンドビルド。
こうやって新しいものが産まれていく。
なんてワクワクして楽しいのだろう。
世の中のあらゆるものが美しくキラキラになってしまえばいい。
全てが新しいもので満ち溢れたら...
いや、果たしてそうであろうか。
というのが今回の私の”問い”であったりします。
以前の記事でも表現したのですが、”人間性の回復”のために必要なものは案外自然との共生であったりずっと変わらないもの(木々、空、海など)とどう関わるかであった気がするんです。
私たちは疲れた時に緑を眺めに行ったり海で波音を聞きに行ったり...そうやってずっと変わらずに存在しているものに接し人間性を保つために必要な何かを求めるのです。
”人間性の回復”について書いた記事です こちらの記事もオススメ ↓
変わらぬものと変わっていくもの
昔からあったものがなくなっていたら、
”キラキラ”で新しくなっていたら、
例えば、故郷の風景がまったく新しいものに変わってしまっていたなら。
私たちは嬉しいという感覚を描くのでしょうか。
きっと胸に何かぽっかり空いたような感覚となったりもするんだと思います。
私はそこにあるものはずっとそこにあって欲しいと思うんです。
それは昔の私にとって当たり前に存在してまさに空気のような存在であったから。
地域にとってそういうもの、そしてそういう場所があると思うんです。
人が喪失をどのように受け入れていくかが宇多田ヒカルさんの歌のテーマであると以前に聴いたことがあって、この言葉をずっと大切にしているのですが受け入れなくて良い喪失であるならずっと存在して続いていて欲しいと願うわけです。
これが人が永遠に込めたる確かな想いですね。
「永遠」について考察した記事です こちらの記事もオススメ ↓
銭湯の孫としての私
私の祖父は銭湯を東京の北区で始めました。経営者だったわけですがその銭湯は私の叔父が継いで代々、その地域に根付いていくものだと思っていました。
祖父の家に行くと薪を割る祖父の姿と風呂に薪をくべながら風呂の温度を見ながらずっとプロレス中継を見ていたこと。
タバコの吸い殻でいっぱいになった灰皿。
これが私に強烈に焼きついた祖父の記憶です。
私は博多で育つのですが、夏休みや冬休みに東京に行っては見るその光景は今でも瞼の裏に焼き付いて離れることはないんです。
東京都北区には一人暮らしのアパートや家族用の集合住宅もお風呂はなかったんですね。
だからみんながお風呂に入りに銭湯に通っていた時代です。
学校帰って、家族で食事食べて、みんなでお風呂入りに行って近所の仲間に会って、とてもいい文化ですよね。
書きながらなんだか泣けてきますが(笑)
叔父が継いでいつまでも続くと思っていた銭湯は今はその地にありません。
文化が変わってしまったんですね。
薪で風呂を沸かすこともなくなり、そもそもどの家にもシャワーがある。
バスタブもある。
そんな風に日本の”家”が変わって行ったんです。
それでも叔父は最後の最後まで経営を続けていったんですが。
数年前にその看板を下ろすことになります。
音楽の仕事だけに集中していた私に何か出来ることがあったのではないか。この銭湯を守るために出来ることはあったのではないかというのは小さな後悔です。
そうずっとそこにあるものだとあぐらをかいていたのだと思います。
銭湯を守っていきたい
こんな風に銭湯にまつわるストーリーはたくさんあり、その建物や文化を守っていこうとしている人もたくさんいます。
私の会社の映像ディレクターも銭湯を守るプロジェクトの映像制作に参加しそのプロジェクトの力になりたいと申し出たことがありましたので、もちろん背中を押して応援したのですが、私なりの銭湯に対するこんな想いを抱いていることは実は話してはおりません。
私の会社が映像制作で関わったプロジェクト
"銭湯跡活用PROJECT -銭湯「大學湯」を再生して次の時代へ-"
八千代座こそ守られていくべき文化そして音
そんな銭湯ではありますが私の祖父の銭湯だけではなく全国でどんどん廃業し無くなっていくことと思います。
これは時代の流れであるべきことなのだと思います。
しかしその中で残っていくものはよりそこに住む人だけではなく、そこに住む人が誇りを持てる場として保存されていくことを望むばかりです。
今回、私たちが音で旅をして欲しいのは熊本、山鹿の八千代座です。
こんな山の中に、多くの文化を発信してきた建築物があるのです。
国の重要文化財として指定され守られここにあります。
だからこそより多くの人に足を運んでもらい建物を目で見てそして音でも楽しんでもらう。ただ熊本です。熊本からも少し離れた山間の街です。だからまず映像を見て音を聞いて感じてほしい。そしてその建築物、音に何かを感じたら現地に足を運んで欲しい。
そんな思いを込め今回のBGM tourismのテーマとしました。
目で見て楽しんだあとはどうぞ目を閉じて音だけに耳を傾けてみてください。
【音で旅する】八千代座|熊本・山鹿【BGM tourism】