第3回/ラツィオ 2019-2020シーズンを振り返る

先日DAZN セリエA解説・FootballFreaks等でおなじみの細江克弥さんと一緒にボールを蹴る機会に恵まれた。
細江さんは筆者に"note"を始めるきっかけを与えて下さった恩人(勝手に恩人と思っている)。
夢のような時間だった。

憧れの細江さんと撮って頂いた。テレビの向こう側の方なのにとても気さくで優しい方だった。



筆者は写真右側、ラツィオの練習着を着て参加した。
そう筆者はセリエAではかれこれ20年近くラツィアーレ(ラツィオファン)なのだ。

きっかけは日本代表以外の代表を初めて観たユーロ2000。
当時イタリア代表の攻撃の中心はアレッサンドロ・デルピエロでもなく
フランチェスコ・トッティでもなく
ステファノ・フィオーレだった。

トルクアルティスタ(いわゆるトップ下)でテクニシャンでありながら
運動量・守備での頑張りも兼ね備えた選手で
「新しいタイプの10番」を彼にみた気がした。
以来、フィオーレのファン=彼が所属したラツィオのファンとなり
彼が去った後も「良い選手が次々出てくること」「単純にユニフォームがかっこいいこと」から、そのままラツィオを応援している。

見た目がいかにもイタリアの伊達男感があって好きだった。
EURO2000ベルギー戦でのインザーギとのワンツーからのゴールが忘れられない。

筆者がラツィアーレになったのが2001年頃。
そのため、ラツィオのスクデット(優勝)をリアルタイムで味わったことがない。
(ラツィオ最後のスクデットが1999-2000シーズン)
毎年「今シーズンこそは」と思っているものの、
残念ながら今の所その願いは叶っていない。

しかしながら、個人的感覚で1番スクデットに近づいた年があった。
そしてそのシーズンは今思い出しても悔いが残る。
今回そのシーズン「2019-2020シーズンのラツィオ」を振り返ってみたいと思う。

この年は監督のシモーネ・インザーギ体制4年目。
その前年コッパ・イタリアを制したチームは完成度の高さを見せた。
開幕直後こそ出遅れたものの
6節以降 17勝4分無敗という圧倒的な強さで首位戦線に躍り出る。

メンバーに目を移せば
病を克服しついにビッグクラブで充実の時を迎えたフランチェスコ・アチェルビ、
中盤の底で潰しと散らしに奮闘するルーカス・レイヴァ、
超絶技巧を駆使し決定機を何度も演出したルイス・アルベルトとホアキン・コレア、
両サイドをスピードと運動量で制圧したマヌエル・ラッザリとセナド・ルリッチ、
力強さと優雅さを兼ね備えたセルゲイ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチ、
そして狂ったようにゴールを奪い続けたチーロ・インモービレ(彼はこのシーズン36点を叩き出し、リーグ得点王になるとともに、欧州最多得点者としてゴールデンシュー賞も受賞する)。
控えには
常にサブにも関わらず途中交代で出てくると必ず結果を出すフェリペ・カイセド、
長年チームを支えてきた安定感抜群のマルコ・パローロ、
どのポジションでも全力を担保できるアダム・マルシッチ、
プリマベーラ(下部組織)期待の星ダニーロ・カタルディ
等がおり、戦力も充実していた。

19-20のラツィオの基本フォーメーション

時系列で追うと
15節 ユヴェントス 〇3-1
スーペルコッパ ユヴェントス 〇3-1
19節 ナポリ 〇1-0
24節 インテル 〇2-1
と強豪相手に勝利を収め続けた。
特に15節で破ったユヴェントスを2週間後のスーペルコッパで返り討ちに合わせた結果には筆者だけならず、セリエA界隈がざわついた。
ユヴェントスの状態が固まっていない(このシーズンからマウリツィオ・サッリが監督に就任)とは言え
同じ相手に同じ結果打ち破るラツィオの強さに
多くの人が「今年のラツィオはいよいよスクデットか」と思ったに違いない。
言い過ぎかもしれないが、この時点では間違いなくセリエA最強だった。
そう、「この時点では」。

2020年3月9日、新型コロナウイルス感染拡大の影響により
イタリア政府がイタリア国内のプロサッカーの一時中断を発表。
結果、2月末のリーグ戦を最後に試合が無くなってしまった。
再開は6月。
再開後、同じチームとは思えないほど
見る影もないチームがそこにあった。
再開後の8試合で2勝1分5敗。
再開後5敗目のユヴェントス戦で数字上優勝する可能性がなくなったが
2敗目・3敗目と連敗したミラン戦・レッチェ戦の時点で
「終わった・・・」と筆者は打ちひしがれていた。


ラツィオに何があったのだろうか。
筆者なりに振り返る。

①リーグ中断による成長曲線の分断
「これが理由です。以上。」と全てこのせいにしたいくらい。
チームのインスタグラムからはとても良い雰囲気を感じることが出来
連勝を重ねる中で間違いなくチームの完成度が増し
中断前の選手から自信を感じ取れた。
そのチームの成長曲線がリーグ中断で完全に「阻害」された。
もちろん、条件はどのチームも同じなので言い訳は出来ない。
だが、試合の中断で勢いを削がれたチーム・上手く反撃の準備に当てられたチームが、セリエAに限らずこのシーズンは各国で存在した。
ラツィオは残念ながら前者になってしまった(後者の例は間違いなくミラン、ナポリだった)。

②ルリッチ不在の影響
今書いていても感情的に「①の理由だけだよ」となってしまいそうになるが、
冷静に考えるとシーズン途中のルリッチ離脱が大きかった。
代役はジョニーやマルシッチが務めたのだが、
「ルリッチがいるからこそのボールの回り方」があっただけに
それが崩れてしまったのが大きかった。
代役の2人が能力が低かったわけではなく、単純にルリッチがすごすぎたので、そこの部分が苦しかった。
※運動量がクローズアップされがちだが、ルリッチの相手との間でボールを貰う感じとか、チーム全体の様子を観て相手にプレッシャーをかける感じとか、
とにかくこの選手は頭がよかった。

このシーズンが「インザーギ・ラツィオ」のピークであった。
翌2020-2021は更に順位を下げ、6位でフィニッシュ。
その後監督のインザーギはインテルの監督に就任(出て行き方で一悶着)。
コレア、アチェルビ(ティフォージと揉めた末の悲しい移籍)もこれに続き、ルリッチは退団。ルーカスはブラジルに戻り、パローロは引退した。
一つのサイクルが終了したのである。

個人的に残念だったのが、
長年のチーム功労者であったパローロにスクデットを獲らせてあげられなかったこと。
運動量・キャプテンシーが語られがちだが
本当に気が利き、しかも基礎技術(トラップ、パス、シュート)が高い素晴らしいプレーヤーだった。(イメージとして、元日本代表の福西崇史の全ての能力を2回りくらい進化させた感じ、と個人的に思っている)
アズーリ暗黒時代だったため、代表でメジャータイトルが獲れなかっただけに、せめてクラブで優勝して欲しかった。
そんな不遇なところも彼のキャリアの色なのかもしれないが。。。
(ロシアW杯プレーオフ イタリアVSスウェーデンについてはいつか記事にしたい)

チームに安定と勇気を与え続けてくれたパローロ。こんな有能な選手が味方にいたらどんなに心強いだろう。 https://thelaziali.com/2020/12/22/photo-marco-parolo-visits-hospital-in-rome-to-present-christmas-gifts-to-workers-and-patients/


昨シーズンよりラツィオはサッリを監督に迎え入れ、再スタートを切っている。
監督2年目の今シーズンはチームが成熟し好調なスタートを切っている。
果たして今シーズン優勝となるのであろうか。
せめて生きている間にもう一回スクデットを獲って欲しいと願ってやまない。

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