第10回/ナポリが強すぎる件
先日筆者は外出先でナポリタンを食べた。
ナポリタンは好きな食べ物の1つで、
一時期は週3回ほど食べていた。
そんな和製料理(有名な話だがナポリタンは日本発祥)大好きな筆者が
現在強すぎるナポリについて触れていきたい。
今シーズン開幕前のナポリについて
筆者のみならず、セリエ界隈の人間は厳しい予想をしていたと思う。
チームの中核を担っていたドリース・メルテンス、ロレンツォ・インシーニェ、ファビアン・ルイス、カリドゥ・クリバリがチームを去ったからである。
いずれの選手も近年のナポリを支えていた選手であっただけに、大きな痛手であるように思えた。
しかも代わって加入したのが
「どこでプレーしてたんだよ?」というところから獲得したフヴィチャ・クヴァラツヘリア、キム・ミンジェ(キム・ミンジェについてはフェネルバフチェというある程度のクラブでプレーしていたが)、
ビッグクラブ初挑戦のジャコモ・ラスパドーリ、
今一つ殻を破り切れないジョバンニ・シメオネなど
補強面にも「?」が付いていた。
そんなチームが現在セリエAで首位を独走。
27節終了時点で2位ラツィオとの勝ち点は19。
残り試合数を考えるとほぼ優勝は決まりだ。
またチャンピオンズリーグでも
グループリーグを5勝1敗、得点20失点6という文句なしのスコアで通過。
決勝トーナメント1回戦もフランクフルトを相手に危なげなく勝利し
準々決勝まで進んでいる。
今のナポリに何が起こっているのか。
その前に、おじさんの域に入ってきた筆者のナポリ昔話に付き合って頂きたい。
ワルテル・マッツァーリ時代(2009年~2013年)
→エディンソン・カヴァーニ、エセキエル・ラヴェッシ、マレク・ハムシクの「3大テノール」+弟カンナバーロの時期。
志向するフットボールはカウンターで、ウイングバックのフアン・スニガとクリスティアン・マッジョが驚異のハードワークをし、
奪ったボールは前述の3大テノールに後を託す、というもの。
その年チャンピオンズリーグを制するチェルシーとの決勝トーナメントの死闘が記憶に残っている(1st legでカヴァーニが肩で押し込んだ執念のシュートがかっこよかった)。
あとは年に数回「確変」を起こし、一時期にゴール量産するブレリム・ジェマイリも好きだった。
ラファエル・ベニテス時代(2013年~2015年)
→ゴンサロ・イグアイン、ホセ・マリア・カジェホン、ラウル・アルビオル、ホセ・マヌエル・レイナの時代。今思うとベニテスの出身スペイン、またはスペイン語圏の選手が多かった。
この頃には後にチームの象徴となるロレンツォ・インシーニェが台頭。
前政権とは異なり前線のタレントを活かした「前輪駆動」の様相となる。
少し記憶が薄れてしまっている部分があるが、
ある程度前線から強度をかけた守備をしてショートカウンター、というのが攻撃の形だったと思う。
晩年はネタキャラになってしまったが、この時期のイグアインは狂ったように得点を重ね、とにかく凄かった。
マウリツィオ・サッリ時代(2015年~2018年)
→いわゆる「サッリ・ボール」とも賞賛、時に嘲笑された流れるようなボール回しからの得点が魅力のチームだった。
中心はジョルジーニョ。
ジョルジーニョ、インシーニェ、ハムシク達が左サイドに集まりイチャイチャと細かいパス回しを行う。
敵が食いついてきたところで、右に大きく展開すると、裏抜けの天才カジェホンが敵を置き去りにし、自らあるいはイグアイン、アルカディウシュ・ミリク、メルテンスら中央の選手にお膳立てという必勝パターンが出来上がった。
ベニテス~サッリ時代のカジェホンの裏抜け技術は芸術の域に達していた。日本代表の長友佑都も自身のyoutubeでその裏抜けのすごさを語っている。
曰く「裏抜けされると分かっているのにやられる」。
近年2、3シーズンは少し崩れてしまったものの、
筆者の印象として「定期でメンバーをガラッと変えながら
常にアップデートしつつ常に上位にいるチーム」というものだ。
さて、今シーズンのナポリの話。
チーム好調の要因はいくつかある。
が、その一つが先述した「怪しい補強」が実際のところ大当たりしていることがある。
その中でもベタだがこの2人を挙げないわけにはいかない。
先述の通り、共に昨シーズンの時点では「どこのだれ?」だったのが
今やナポリに欠かせない2人である。
①キム・ミンジェ
最初に観たときは衝撃的だった。
見た目通りの「高い、速い、強い」選手。
単純に普通の1対1なら欧州内のFWでも彼に勝てる選手は少ないのではないだろうか。
そして彼の魅力は守備能力だけでなく、ボール扱いの技術にもある。
最終ラインで「スルスル」っとドリブルで前に運びだしたり
結構厳しい場面でもクリアに頼らず、味方に繋ぐ。
身体がデカいせいか、そのドリブルする様などは
なんだかボールがおぼついていないようにみえるが
ボールを失っていないところをみると、彼なりにボール扱いに自信は持っているのだろう。
少なくとも現時点では彼がアジアNo1DFであることに異論はないだろう(冨安は怪我が多すぎて成長速度が鈍化しつつあるのが悔やまれる)。
②フヴィチャ・クヴァラツヘリア
この選手の挙動はおそらくサッカー観戦初心者でもわかりやすいと思う。
なんだか「ドタバタ」しているのだ。
はっきり言ってあまりサッカーが上手そうに見えない。
だが圧倒的なスピード、そして「ギュイーン」と音がしてそうなくらいの大きな切り返しは大きな武器だ。
あのよくわからないドリブルが、しかしながらイタリアのみならず欧州でも猛威を振るっている。
また、ドリブルが効いていることもあり、
ドリブルを警戒するDFの裏を取ったスルーパスなども結構上手い。
いずれにしろ、この選手もなんだか不器用そうに見えて、アタッカーに必要な能力をハイレベルで備えている。
彼らは2人とも若い。
今後更なるステップアップも期待されるので、是非注目である(既にいろんな人にだいぶバレてしまったが)。
今シーズンセリエAで優勝すると
1989-90シーズン以来の優勝、30年以上ぶりだ。当時はマラドーナがいたころ。
個人的には長年チームに在籍し、何回もスクデット(優勝)争いをしながら
ついに夢かなえることなく去っていったハムシクやインシーニェのことを考えてしまう。
ネット界隈では「最後の1試合だけハムシクと契約しよう」なんて声も上がっているようだ。
賛否両論あると思うが、これが実現したらなんとも素敵だなと思う。
そして勝ち進んでいるチャンピオンズリーグでも
このチームの素晴らしさを欧州中にまだまだ見せつけてほしい。