第2回/2018W杯 日本VSベルギー戦を考える
2022年11月1日、2022年カタールW杯に向けた日本代表メンバーが発表された。
選手選考についてはどの大会でも議論を生み、
今回も「なぜ彼が選ばれたのか/外れたのか」と大きな話題となった。
筆者としては決まったメンバーを信じて、頑張ってもらいたい
という思いのみである。
それよりも「前回からもう4年が経ったのか」というのが筆者の感覚だ。
ロシアW杯はつい最近の出来事であったかのように感じる。
今でもベルギーとの決勝T1回戦の試合は鮮明に記憶に残っている。
そこで今回は4年前の日本VSベルギーの試合について振り返ってみようと思う。
あまりに衝撃的な試合展開で、皆様の記憶にも新しいことと思うが
簡単に試合を振り返る。
GSを1勝1分1敗で突破した日本の決勝T初戦の相手がベルギー。
当時のベルギー代表はFIFAランキング1位、
選手を振り返ってもW杯優勝が狙えるメンバーだった(しかも多くの主力の選手が年齢的に一番良い時期だった)ことから、日本の苦戦が戦前から予想された。
しかしながら日本は原口元気のゴールで先制。
4分後、乾貴士の追加点で2-0とリードする。
しかしながらここからベルギーも反撃を開始。
ヤン・フェルトンゲン、マルアン・フェライニのゴールで2-2と同点とする。
そしてアディショナルタイム。
日本CKを本田圭佑が中に入れるも、ベルギーGKティボー・クルトワがキャッチ。
すぐさまケヴィン・デブライネにリリースすると、ベルギーがカウンターを開始。
デブライネのドリブル・パス→トマス・ムニエの折り返し→ロメウ・ルカクがスルー→走り込んだナセル・シャドリが合わせて2-3。
試合をひっくり返してそのままベルギーの勝利で終わった。
クルトワのキャッチからシャドリがゴールを決めるまで14秒。
試合が行われた都市名にちなみ
「ロストフの14秒」と呼ばれる
これからも、今後もフットボールファンに語り継がれるであろう幕切れであった。
試合終了後
グラウンドに突っ伏し、
何度も地面を叩き慟哭していた昌子源の姿が未だに忘れられない。
「14秒」の間、誰よりも長い距離を走っていたのが昌子だった。
当時議論となったのが「本田のCKは時間を使うべきでなかったのか」というものであった。
同点にされた後も(試合を通じて終始苦しい展開ではあったが)日本は押し込まれる展開であった。
そのため、「無理に追加点を狙いに行くのではなく、延長戦での勝負で良かったのではないか」という意見があった。
そう、筆者自身もその感覚だった。
しかしながら、当事者の選手達の試合後のコメントは違った。
選手達のコメントからCK時の選手達の心理状況を振り返る。
①「延長まで持ち込まれたら勝てない」という心理
「僕自身、80分過ぎから足が止まってきて、延長に入るとより走れなくなってしまうだろうなって。だからこのセットプレーで何とかしたいという気持ちが強かった。」(酒井宏樹:https://number.bunshun.jp/articles/-/833086)
「延長になったら僕らは負けるだろうなという感覚がありました。選手層の厚さもそうですし、延長になればもう1人交代できるというルールも分かっていて、PK戦まで持ち込むのはちょっと厳しいなという思いがありました。」(昌子源:https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201807270008-spnavi)
そう、実際に相手と対峙している選手達は
「延長戦では勝てない」という肌感であったのである。
そのため残り時間が少ない状況でもCKでベルギーを仕留めに行ったのである。
事実、素走りしている日本人選手が追いつけないデブライネのドリブルスピード(しかもデブライネは山口蛍がプレッシャーをかけようとした際、ステップを変えるという技巧まで繰り出していた)、
90分過ぎでも冷静な判断でスルーが出来るルカク。
彼らはまだ余力を残していた。
②コロンビア戦の成功体験/ポーランド戦での批判
GS1戦目のコロンビア戦、本田のCKから大迫勇也のヘディングが決まり決勝点となった。
本田自身「あのCK(ベルギー戦のCK)の狙いって、あのCKの狙いでコロンビア戦で点取ってますかね」と振り返っている。
この成功体験が、あの場面で本田にCKを中に入れるという選択をさせた。
また、GS3戦目ポーランド戦で負けている状況でパス回しに終始した内容は世界中で議論の的となった(0-1で負けている状況の中、得失点差・フェアプレーポイントの関係から同点を取りに行く姿勢を見せなかった)。
元エヴァートンMFのレオン・オズマンは「最後の10分は恥ずかしい内容だった。ワールドカップでは見たくなかったし、茶番だ。」と批判した。(”That was embarrassing the way the teams went about that final 10 minutes. It was everything we don't want to see in the World Cup. It turned into a farce.”)
日本代表監督の西野朗はポーランド戦後、パス回しを指示したことを選手に謝罪したという。
一方で選手に「ベルギー戦では堂々と戦おう」と指示し
選手達もポーランド戦での批判を払拭しようと戦っていた。
潔く勝負を決めたい。
そんな心理が働いていたのかも知れない。
観戦している人間では分かり得ない
①、②のような選手の心理状態。
それがあのCK、そしてカウンターに繋がったのかもしれない。
そう、あのCKはポーランド戦、さらにはコロンビア戦から繋がっていたのだ。
更に言えば、そのコロンビアは4年前日本が1-4で叩きのめされた相手。
そのように考えると、見事に4年前からの伏線回収がされた(日本からすると悪夢でしかないが)試合であったとも言える。
残酷な結末だったが、それでもあのベルギーを瀬戸際まで追い詰めた戦いぶりは色褪せない。
結果が分かっていても定期的に動画を観にいってしまう。
筆者にとってもそれほど印象深い試合であった。
今年のワールドカップでも印象深い試合を繰り広げてもらうことを強く望んでいる。