浅間明月雑記
浅間明月雑記 長倉 奏拍
【松坂の帽子】2023年5月5日
愛犬との散歩にはいつも帽子を着用している。お意気に入りはボ
ストンレッドソックスのMATSUYZAKAの名前入りのキャップである。
ハーバーの見えるオフィスでIRミーティングが終了しエレベー
タホールへ歩いていると、投資家からメジャーリーグで応援してい
るチームはあるかと聞かれた。特定の球団を応援してはいないがニュ
ーヨークヤンキースの松井選手には頑張ってもらいたいと返事をし
たら、彼女は突然厳しい顔付きになった。「ミスター長倉、ボスト
ンの市民は毎晩二つの球団を応援している。一つはボストンレッド
ソックス、もう一つはその晩ニューヨークヤンキースと戦っている
チームです」と教えるような語り口の後、私に微笑みかけた。
東京に戻ってしばらくすると彼女から荷物が届いた。中には
MATSUZAKAの名前入りのキャップが入っていた。お礼の言葉と松坂
がレッドソックスで活躍することを期待するとのレターを出した。
1999年に経営企画を担当した時にIR部門を立ち上げた。投
資家やアナリストとの面談は双方向のコミュニケーションが重要で
あり相互理解に努めてきた。自分は資本市場のセールスマンだと考
え、退任するまでの10年間で約1500回のミーティングを行っ
た。海外投資家との面談は一期一会のつもりで対応してきたが、中
には5回以上面談した方々いる。
私にとって投資家は良き理解者であり、アナリストは戦友であっ
た。この経験は現役時代は勿論のこと、その後社外役員に就任した
時にも大変役に立った。