自分も一歩間違えれば闇バイトの実行役として逮捕されていたかもしれない話
闇バイトの実行役として強盗殺人で逮捕されるニュースが次々と報道されている。その加害者達の供述はだいたい決まって同じようなセリフである。
「借金に困っていた。稼げる仕事を探していた。」
ふと自分の昔のことを考えてみる。もう今から何十年も前の話。大学生だった私は沖縄にいた。大学4年生の時に自身の薄毛やアルコール依存やタバコ依存による体の不調、将来に対する不安や奨学金による多額の借金に悩んでいた。
最終的に大学を中退することを決意し、両親に甘え、実家に逃げ帰り、無職生活を受け入れてくれた家族のおかげで生き延びることができたが、もしあのとき家族から拒絶され、沖縄に残り、さらに借金が膨らみ、健康状態がどんどん悪くなり、鏡に映る自分の薄毛に日々絶望し、友達からの視線に怯えながら生活していたら、今頃どうなっていたんだろう。
もしかすると精神的に病んでうつ病になったり、詐欺的な組織にひっかかって、今でいう闇バイトのようなものに巻き込まれ、脅され、抜け出せなくなっていたかもしれない。
そう考えるとたぶん自分もギリギリのところにいて、本当にあと少し環境やタイミングが悪ければ、あちら側に落ちていたのかもしれないと思うと、遠く別の世界の話だとは思えない。
「若い頃はお金のことなんて考えず、とりあえず借金してでも自分のやりたいことをやれ」みたいな無責任なことを言うインフルエンサーがいる。
まだ会社員として働いたことがない、アルバイトでも個人事業でもそこまで稼いだことがない、いわゆる普通の高校生や大学生にとっては、100万とか200万の借金というのはとんでもなく大きなものであって、いざ本当に自分にその借金がのしかかってくると、それを返すためにどれだけ大変な苦労をしなければならないのか、丁寧に計算して初めて実感し、そして絶望する。
「人間は追い詰められたら成長する」みたいなことを言う人がいる。しかしそれは、追い詰められて精神が壊れてしまった人間や、自暴自棄になり暴れて他人に危害を加えた人間の存在を無視している。自分はいわゆる自己啓発系の本はけっこう好きだけど、あれに影響されて人生を壊してしまった人間も多くいるのではないかと思っている。