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初老? 41歳はまだ若い。馬術競技の話

8月です。開幕前は東京のときと比べて全然話題にならないな…と思っていましたが、連日の日本選手のメダルラッシュもあってオリンピックが盛り上がっています。というわけで、今回は92年ぶりのメダル獲得で話題となった馬術競技の話を書いていきましょう。

馬術競技は学校体育では触れることがないスポーツであり、多くの方はあまり馴染みがないと思います。実際、私もスポーツジャーナリストとして馬術連盟さんの取材や、パリオリンピックにも出場した北島隆三選手の取材の機会がなければ、何も知らないままだったでしょう。まずは簡単に競技の説明をしていきます。

馬術競技はオリンピックでは「馬場馬術」、「障害馬術」、「総合馬術」の3種目が実施されています。馬場馬術は演技の美しさを競うもので、障害馬術はコースに設置された様々な障害物をミスなく早く走行するもの。この馬場馬術と障害馬術にクロスカントリー走行を加えた種目が総合馬術になります。

他の競技と大きく違う特徴といえば、人馬一体となっておこなうということ。そして、男子、女子という区分がなく、オリンピックで唯一、男女が同じステージで競うのがこの馬術競技です。

人間と馬が力を合わせて行なう種目ということもあり、選手寿命が他の競技よりも圧倒的に長いのもこの競技ならではの特徴。今回は平均年齢41.5歳の「初老ジャパン」が話題となりましたが、41.5歳はまだまだ若い! 日本では1964年の東京オリンピックに出場した法華津寛(ほけつ・ひろし)選手が2012年のロンドンオリンピックに71歳で出場したという記録があります。

人間の年齢には制限がない一方で、実はオリンピックや世界選手権クラスの大会に出場する馬には年齢に制限があります。規定により、障害馬術は9歳以上、馬場馬術と総合馬術は8歳以上の馬でなければ出場できません。競馬のクラシックレースは3歳で、競走馬のピークは4~5歳、だいたい6歳くらいで引退します。そう考えると、馬術競技に出場する馬の年齢が高いことがわかります。

馬術競技は単純にスピードを競う競馬とは違い、特殊な動きや演技が求められるため、“大人の馬”にならないとこなすことができないのです。8歳以上から出場可能とは言っても、実際に8歳でオリンピックに出場するケースはほとんどありません。オリンピックや世界選手権は、技術や体が成熟してきた10歳以上の馬が大半です。ちなみに人間の年齢に置き換えると、馬の8歳は人間の30歳くらいで、10歳なら35歳くらい。いろいろな仕事を覚えて「さあこれから」というサラリーマンのイメージに近いのかもしれませんね。

さて、もう一つ馬術競技の面白い特徴を紹介しましょう。実は馬術競技に出場する馬にはパスポートがあります。このパスポートは人間と同じように入国に必要なもの……ではありません。馬の名前やオーナーの情報、血統、予防接種の記録などが記載され、マイクロチップが入っている馬は、そのナンバーも記載されています。大会にエントリーしている馬が、この馬で間違っていないかを確認するために、国際競技大会に出場する馬は、国際馬術連盟発行のパスポートが必要なのです。

馬のパスポート

そしてオリンピックでメダルを獲得すると、人にはメダル、馬にはロゼットと呼ばれる表彰リボンが贈呈されます。人馬一体の競技なので、表彰されるのは馬も人も一緒というのがいいですよね。表彰式を見るとホッコリします。

スポーツはルールを知らなくても、アスリートのパフォーマンスを見るだけでも十分楽しめます。一方で今回紹介したような雑学的なネタを知っていると、友だちとの会話、飲んでるときの話題提供になります。偉そうに選手批判、審判批判をするよりも、「へぇー」となる雑ネタを楽しそうに話す人のほうが良くないですか?

悪いところ探しに躍起になるよりも、いいところ、面白いところ探しをしていくと、悪口を言っているときよりもずっとハッピーになれると思います。まだまだオリンピック、そしてパラリンピックは続くので、いいところ探しをしていきましょう。


おわり。

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