強く願えば動くかも⁉
占いは、酷いこと言われたら嫌だからあんまり信じない。
でも、いいことはチャッカリ信じようとする。
良く知らないが、星占いの世界では今年は84年ぶりの大きな節目を迎えているという。天王星という大きな大改革を引き起こす星が一つ星座を移動するというのだ。12ある星座をひとつづつ、7年毎に移動するらしい。今年はまさに牡羊座から牡牛座へと移動する年だそうだ。自分の星座に天王星が回ってくるのは84年に一度。軽く言うが、人生に一度回ってくるかどうか…?という超レアな天王星の移動。そして、何を隠そう私は5月生まれの牡牛座。ちなみにB型である。人生そろそろ半世紀というこの時に天王星がやってきた。占いは信じないと言いつつ、夢見る乙女としてはなにやら、ワクワクしないわけがない。
だが、いかんせん牡牛座でB型というのは、星座と血液型のあらゆる組み合わせの中で一番、のそい…らしい。
確かに牡牛のごとくモタモタしている。小さい頃は「あんたはトドなの?」とよく怒られた。何かを始めるのも、習得するのも遅かった。食べることさえ遅く、学校の給食はいつもひとり残こされ、次の掃除の時間の為に椅子が逆さに机に乗っかり、私を追い詰めた。自分をかばうとすれば、色々に時間がかかる子なだけだ。近頃の若い子たちの様に、パパっと見切りをつけて…とか、早いうちから将来設計を立てて…とか、スマートに生きられない子なのだ。そうしておばさんになってしまった。手先は器用な方だが、生き方は不器用なのだ。
父が倒れてから今までの十数念の間、賢い人間ではないことは自分が一番よく分かっているから、その分を埋めるように、自分のことは後回しでやってきた。見かねた周りに勧められ、結婚はしてみたものの、少し変わった主人と腰を据えて向き合う事にもなった。歩みは遅くても、ここ十数年頑張っては来たのだ。でも、悶々としていた。何故なら、自分の人生とは向き合えていない気がしたからだ。十数年ぶりに会う同級生が十数年の間に自分らしい人生を切り開いている様や、結婚して子供に振り回されて…と幸せそうに話す姿を見るたびに思うのだ。自分には何も無い。一生懸命に走っていたと思ったのだけれど、何もないと気づくのだ。なんとかしなきゃ。そう強く思ったのが今年の5月の誕生日。昨年の秋から、環境や近しい人に不快感を覚えるようになったり、沸々と湧き上がるものはあったのだが、これほどしっかりと強く心に願ったことはなかった。それほど強く心が湧いた。
「遅い!!」
久しぶりにまあまあ大きな声で言われた。
自分の誕生日の日、文字通り、『何かに突き動かされるように』そう感じたのだという話に姉さんが一喝したのだった。
十数年来仲良くしている姉さんは、出会った時から自分探しをしていた。自分探しは何も若い人だけのものではない。きっと、いくつになっても続いていくものだと私は思う。「結婚も子供も持てなかった私が、何の為に生まれてきたのか知りたい。」というのが姉さんの口癖だ。結婚しても、子供を産み育てても、自分と向き合う場面はある。姉さんはこの十数年間に真摯に自分と向き合って、周りからその年では不可能とあざ笑われつつも、漸く自分の納得のいく居場所にたどり着いた。でも、まだその先を探っている。ここにたどり着くまでに、色々な姉さんの表情を見てきたから、姉さんの言葉には実に説得力があった。
「ですよね…。」
私が自分と向き合わねばならないと強く強く願うまで十数年。時間がかかりすぎた。いや、そんな余裕も無かったし。のそい私にはこの長すぎる時間が必要だったのかもしれない…と少し自分でかばってみる。しかしながら、強く願ったからといって今の現状がすぐに変わるわけではない。生きていれば色々なシガラミもあるからだ。
「そう願うならまず、身辺整理してみたら?ポケットにモノがいっぱい入ってると、新しいモノは入らないよ。」
なるほど。うまいこと言うなとは思ったが、そう言われても困る。心地の悪い環境や人から離れるにはどうしたものかと悩みつつ、切れるものなら切りたい!!とダメもとで強く願ってみる。
『強く願う』。この強さが重要なようで。そう強く願った誕生日を境に私の周りでぐるーっと環境が変わっていったのだ。嘘のような本当の話だ。
こちらが何もせずとも、切れるものだから切ってやったぞと言わんばかりに、身辺整理が出来てしまったのだ。それも、スーッと綺麗に最初からなかったように。煩わしいかった色々なことが消えて実に快適になった。
会いたいと思っていながら長年会えてなかった人には、数日の内に会えた。
やりたいけど…と二の足を踏んでいたことが躊躇なく始められた。のそくて腰の重い牡牛座の私が、考えるより行動できるようになったようだ。不思議な感覚だ。
そのことを姉さんにすぐさま報告すると、手放しで喜んでくれた。そして、時間つぶしに入った本屋で見たという、84年ぶり天王星の移動!の話を教えてくれたのだ。ゾクゾクした。何かよく分からん星にそんな影響力があるのかしら?と疑いながらも、現実に自分が動かされているように感じているのだから驚きだ。そんなことってあるのかしら。世の中のすべての牡牛座さんにこういう感覚があったとしたら、すごい。
しかしだ。ワクワク喜んでばかりられない。今の私はある意味本当に何もない。どこに向かうか、どうやって向かうか…先は不明。取り合えず、悪い環境からは脱したというだけの話だ。長い時間の間にどこに行きたかったのかも忘れてる。でも、意外と楽天的な自分がいて自分で驚く。心地の良い環境で、心地の良いことをして、自分との対話をしていこうと思う。たぶん、この7年は険しいと思う。もうおばさんだし。
姉さんの色んな表情が思い出される。私も色んな表情をすると思う。耐えられるだろうか。たぶん耐えると思う。
この十数年で大分と強くなったと思うから。
人生に意味のないことなど無いって誰かが言ったんでしょう?
だったら、それを信じるしかない。
さ。いこう。強く願おう。