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小林賢太郎と桶と大吟醸と私
12月1日の午後、いつものようにTwitterをなんとな〜くながめていたら衝撃的なツイートが目に入った。
【HP更新】
— 小林賢太郎のしごと【公式】 (@kkw_official) December 1, 2020
“小林賢太郎より”を更新しました。
「肩書きから「パフォーマー」をはずしました。」 pic.twitter.com/6f07QlDqAn
そうか。
そうだよね。
舞台で楽しそうにしている賢太郎さんをこれまで何度も見ていたので、これがいつまでも続くものだと勝手に思い込んでいた。
勝手なことを言うと、パフォーマーとしての小林賢太郎に会えないのは、やっぱり寂しい。寂しいよ。
だけど、真っ白なキャンバスと原稿用紙を前にして「さあ、これから何をしようかなあ〜」と考えている創作者の小林賢太郎を思い浮かべると、なんだか嬉しくなる。
きっと、何か楽しいことを企んでいるはずだから。笑
私は今まで賢太郎さんから沢山のことを学ばせてもらった。これから先、表舞台に立つことがなくても、小林賢太郎はこれからも小林賢太郎なのだ。
なので、これまでの感謝の気持ちを込めて、小林賢太郎の魅力をたっぷりとnoteに綴りたい。
道がひとつではないことを教えてくれた人
小林賢太郎作品との出会いは、かれこれ8年前。
当時私はニュージーランドに住んでおり、一時帰国した時に母親から「小林賢太郎って知ってる?NHKで特集番組やってたから録画したの」と言われ、ヨーロッパ公演が収録された『小林賢太郎テレビ ライブポツネン in ヨーロッパ』を一緒に観た。
それが全ての始まり。
何の予備知識もなく海外公演の様子を観ていたら、これまで感じたことのない強い衝撃が走った。
大きなスクリーンに映し出された不思議な映像、その映像にぴったりと合った動き、シンプル極まりない演出、時折見せるマジックやパントマイム。
海外公演では言語の壁を取っ払うため、言葉をほとんど発していない。そのせいか、どこかチャップリンを連想させた。映像と音を巧みに操る現代版チャップリンとでも言おうか。
こんな舞台見たことない。
また、番組内のインタビューで言っていたことが非常に印象的だった。
「僕は絵描きになりたかった。手品師になりたかった。漫画家になりたかった。お笑いもやりたかった。そして全部を混ぜたらこうなった。
今自分がこんな風にあるのは、ジャンルを絞らずにないものを作るという選択をしたからだと思うんです。」
選択肢を一つにするのではなく、全て混ぜてみた・・・ですと!?
一気に興味が湧いた。
その後、片桐仁とお笑いコンビ『ラーメンズ』を組んでいたこと、そして劇作家/演出家/パフォーマーとしても活動していたことを知った。
◇
翌年の2013年には、幸運なことに日本凱旋公演のPotsunen『P+』に行くことができた。
声、動き、映像、BGM、ストーリー、間の取り方、何もかもが美しかった。
個人的には『漫画の奴』が大のお気に入り。観たことない方は、ぜひチェックしてください。
それはもう、ジワジワきますから。フフフ。
様々な角度で日本を楽しむ
それからというもの、私も母も小林賢太郎作品の虜になり、弟も巻き込んでラーメンズのDVDを片っ端から観ていった。
そして、家族全員が見事にハマった。
してやられたり、だ。
なぜラーメンズに魅了されたのか。
それは「おもしろ要素」が誰かの外見やコンプレックスを揶揄するものではなく、日本語や伝統芸能、文学など日本そのものだからだ。
賢太郎さんは言葉を「意味」「音」「形」で楽しむ人なので、言葉(特に日本語)で遊ぶコントが多い。だから彼らのコントを観る度に、今まで見過ごしていた日本特有の面白さを教えてもらえる。
そして彼らが生み出す笑いには、どこかほっこりする優しさがあるのだ。賢太郎さんの著書『僕がコントや演劇のために考えていること』でもこう話している。
「他人の失敗や欠点などに触れて笑いにすることは、対象になった人を傷つけやすい。自分も他人も傷つけない、僕はそんな笑いを心がけています。」
ほらね、ほっこりする。
ラーメンズが年齢、性別問わず様々な人たちに愛されている理由が分かった気がした。
ラーメンズが家族の共通言語に
以前私は3年ほどニュージーランドで生活をしており、日本に住んでいる家族との時間をつくることができなかった。母と話すことは多かったが、弟とは6歳離れていて共通の関心事が皆無だったことから、話す機会がなかった。
でも、家族全員でラーメンズにハマったことがきっかけで、いつしか彼らが私たちを繋げてくれていた。作品の感想を共有したり、私が日本にいる時は一緒に舞台に足を運んだりもした。
5年前には日本に完全帰国したので、それ以降一緒に過ごす時間は増え、顔を合わせる度にラーメンズやポツネンの話で盛り上がる。
なんてことない瞬間だけど、私にとってはかけがえのない時間なのだ。ラーメンズのお二人には感謝でしかない。
日常生活の中で「桶」と聞いただけで「桶屋がヴォーカル〜」と歌ってしまう家族は、きっと私たちくらいしかいないのでは。笑
「アイデアに辿りつく」という考え方
賢太郎さんは、脚本家、演出家、パフォーマーでありながら、舞台で使用する小道具や絵なども自分で手がけてしまう。
超人。天才。秀才。
世間では色んな呼び名で称賛されている。でもこの言葉を聞いたら、そんな言葉で一括りにしていいのかと思えてしまう。
「0から1を作り出すのはとても難しいことです。けれど、必死にもがき苦しめば、0.1位は生み出せる。あとは、それを10回繰り返すだけ。」
プロ意識がとても高い努力家、それが賢太郎さんなのだ。
なんていったって、アイデアを「思いつくものではなく、辿りつくもの」と表現する方なので。
私はこの考え方を自分の生活にも取り入れるようにしている。これまで、特に仕事だと、目新しい施策を求められることが多く、すぐにアイデアを思いつけない自分に嫌気が差すことがあった。
でも賢太郎さんを見ていると、日頃の小さな発見や実験、失敗が何かしらに繋がって「アイデア」となることを知った。
ということは、最も重要なのはアイデアを瞬時に思いつけるかどうかではなく、日頃いかに様々なことに対して疑問や関心を持てるかどうか、なのではないか?
私も彼のように探究心を持ち続けたい、そう強く感じた。
これからも絶対に変わらないこと
賢太郎さんの作品に触れていると、ハッとさせられる瞬間がたくさんある。今まで当たり前に感じていたこと、もしくは何とも思わなかったこと、それらに気づかせてもらえる。
少し前にもnoteで感想文を書いたのだが、『ノケモノノケモノ』という作品では、人間特有の脆さについて深く考えさせられた。
私はこれまで数え切れないほどの作品に心を揺さぶられ、大いに笑い大いに泣かせてもらった。
それはこれからも絶対変わらない。
だから、この先飲食店で「大吟醸」「月桂冠」「カイピリーニャ」を見る度に笑ってしまうだろうし、オールブラックスのハカを見たら季節の王様たちを思い出してしまうだろう。(大吟醸の意味を知りたい方はこちらを観るべし!笑)
そんな本家本元よりもインパクトが強い賢太郎さんの新たな門出をひっそりとお祝いしたいと思う。
残念ながら今手元に大吟醸はないので、梅酒にしようかな。(*´-`)
※お酒のお供はカジャラジオで♪
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