なぜ「鬼滅の刃」は人気なのか (1)
桃太郎のまち・岡山市で「鬼滅の刃」について話すことになりました。鬼退治には詳しくないので「鬼滅の刃」を“家族のストーリー”としてとらえ、人気の理由を解説する予定です。
なぜそんな話になったかというと・・・。拙著『なぜいま家族のストーリーが求められるのか』を目に留めてくださったさんかく岡山(岡山市男女共同参画社会推進センター)の方から「かぞくってなんだろう。」というイベントで講演を、というお話を9月にいただきました。内容について打ち合わせをするなかで、「最近の人気作品は、ストーリー上で家族が果たす役割が大きいんですよね。心優しい男性が家族を守るために強くなろうとしたり、鬼までもが家族の絆を求めたり・・・」と話していたら、「作品名を入れたキャッチーな副題をつけたい!」というご要望が。
たしかに、人気YouTuberでもインフルエンサーでもない一介の田舎教師の私が岡山入りしたところで「お前誰?」状態なので、じゃ、人気コンテンツにあやかりましょう! というわけで「鬼滅の刃、愛の不時着、浅田家!など人気作品を題材に」という副題がつきました。
いま、メディア作品で「家族」というモチーフは、自らのルーツ、アイデンティティの源、成長の原動力、汚されてはならない神聖な領域、自己犠牲の対象、挫折の要因、最後の砦・・・など、価値あるものとして位置づけられています。
社会不安が強まると“家族の絆”言説が強まる傾向があり、欧米でも家族のストーリーの人気が指摘されています。家族を守る優しくて強いヒーローが求められるのだとか。「鬼滅の刃」も、その系譜につながるものといえそう。語り出したら長くなるので小分けにして書いていくことにします。
先日放映された土曜ロードショー・那田蜘蛛山編では、“家族の絆”を求め疑似家族を形成する鬼の累に“お前の絆は偽物だ!”と主人公がdisり、その言葉を取り消せvs取り消さない、で揉めていましたね。次回は累が求めたものとそれを手に入れられなかった理由を、家族社会学の立場から解説してみたいと思います。
<さんかく岡山・イベント概要>
1.講演「なぜいま家族のストーリーが求められるのか ~鬼滅の刃、愛の不時着、浅田家!など人気作品を題材に~」
講師:橋本嘉代(社会学者、筑紫女学園大学准教授)
日時:12月5日(土)10時~12時
会場:さんかく岡山(岡山市男女共同参画社会推進センター、北区表町三丁目14-1)
定員:50名(要申込、先着順)
対象:関心のある方どなたでも
申込先:さんかく岡山(電話 086-803-3355 E-mail sankaku@city.okayama.lg.jp)
2.“「家族」がテーマの雑誌たち” 展 (12月2日~16日、さんかく岡山ギャラリー)