車いす利用者のための自動入国審査システム チャンギ空港(シンガポール)
シンガポールのチャンギ空港の一部では、車いす利用者と4人までの家族が新しい自動入国審査システムのレーンを利用できるようになった。これによりシンガポールは、団体旅行者向けに入国審査の自動化を導入した世界初の国となった。
ターミナル1の出発ロビーとターミナル2の出発・到着ロビーに設置されたスペシャル・アシスタンス・レーンは、シンガポール国民、永住権保持者、長期滞在者であれば誰でも利用できる。
2022年12月16日に移民検問局(ICA)は「スペシャル・アシスタンス・レーンにより、車椅子を利用する旅行者や、小さな子供を連れた両親などの4人以下の家族グループは、新たな自動入国審査の利便性を享受できる」と発表した。
これまでは、車椅子利用者や家族連れ旅行者も、有人カウンターでパスポートを提示して入国審査を受ける必要があったが、今は、新しいレーンでパスポートをスキャンした後、カメラと生体スキャナーで虹彩や顔の特徴を撮影することで本人確認を行う。
虹彩と顔のスキャンに失敗しても、旅行者は指紋を二次生体認証として使用できる。6歳以下の子どもに対しては、ICAの職員がレーンでサポートする。
ICAでは、こうした自動化レーンはチャンギ空港の他のターミナルや、陸上・海上チェックポイントの乗客ホールにも順次設置していく予定だ。また2023年3月からは、団体旅行者の自動搭乗手続きも、対象者を外国人旅行者にまで拡大する。
ICAは、新たなレーンの導入に向けて、ホームチーム科学技術庁とチャンギ空港グループと協力して、デザイン思考ワークショップとバーチャルリアリティシミュレーション演習を実施してきた。レーンの幅や、パスポート・生体認証スキャナーの配置場所など、移動に不自由のある人が直面する可能性のある課題を特定するために、実際に移動に不自由を抱える人に相談して開発した。
ICAはまた、スペシャル・アシスタンス・レーンの最終設計にはフィードバック機能も搭載されており、実際の旅行者が経験した内容をもとに、今後も改良を続けていくという。
シンガポールの教育機関、ニー・アン・ポリテクニックで観光学を教える上級講師マイケル・チャム(Michael Chiam)博士は、「チャンギ空港は、旅行者にとってシンガポールの最初の接点だ。入国審査で良い体験をしてもらえれば、シンガポールでの体験もより充実したものになるはずだ」という。
障がい者向けに支援・サービスを提供するSPDの最高責任者アビマニユ・パル(Abhimanyau Pal)氏も、「車椅子用の自動入国審査レーンの追加によって、車椅子利用者がより自立できるほか、移動補助器具を使用する大切な人を介助する上でも利便性が高まる」と今回の導入を歓迎した。
今回の導入によって、ICAもまた、職員をプロファイリング、評価、調査業務などの国境警備機能により集中するための再配置ができる。
ICAでニュー・クリアランス・コンセプト・オフィスの責任者を務めるタン・カー・ウィー(Tan Kah Wee)氏は、「スペシャル・アシスタンス・レーンでは、車椅子を必要とする旅行者や家族連れの旅行者も、自動レーンの利用でスムーズかつシームレスなセルフクリアランスの利便性を享受できるようになった。ICAは、自動通関が当たり前になる「新通関コンセプト」の実現に一歩近づいた」と述べた。
ソーシャルビジネスで包括的雇用のリクルーターを務めるファティマ・ゾーラ(Fathima Zohr)さんは、首から下の麻痺によって車いすを利用している。「この自動レーンによって、自分の状態が理解・尊重されていると感じる。スムーズに移動できる安心感がある」と語った。
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