起こってしまってから、ではない防犯は可能なのか?犯罪機会論で街を読み解く~「写真でわかる世界の防犯」
<目次>
・防犯ブザーが鳴った時には…
・パトロールランニングの活動
・防犯社会学、犯罪機会論とは
・犯罪機会論をざっくりと
・犯罪機会論の具体例を3つ
①公衆トイレの工夫
②子どもはゾーニングで守る
③ホットスポット・パトロール
◆防犯ブザーが鳴った時には…
子どもたちの小学校の入学式で配られた防犯ブザー。音も大きくて心強く感じたけれど、ちょっと待って。
防犯ブザーが鳴った時には、この子はもう襲われている。良くても襲われる直前。音に激高して凶悪な行為に走る犯罪者もいるかも?
こどもケータイも、セコムも、どれも「ことが起こった後」に起こった事実を知ることしかできない。どんなに優れた通信機器も「お母さん助けて!」としか送れないのだ。ことが起こった時に、どれだけ早くそれを知るか?でしかない。
子どもたちの安全が守られなかった場合にしか、私は知ることしかできない。私はそんなことしかできないの?
◆パトロールランニングの活動
私は「パトラン松戸チーム(@patran0505)」という、パトロールをしながらランニングをする防犯活動のグループに所属している。複数人で走る時もあるけれど、活動の主体は個人パトロール。
もちろん、個人パトロールにだって防犯としての価値はあるはず。参考までにパトロールランニングの代表である立花さんのブログを↓
犯罪はなくならない。
これほどになくならない犯罪を減らしていくことはできるのか。犯罪を未然に防ぐことはできるのか。その目的で既に行われ、効果をあげている施策はあるのか。
私は気になった。
また、行政などが行う防犯活動や施策の有効性を裏付ける理論はあるのか。あるとしても犯罪が無くなっていない以上、なにか間違っていることがあるはず、それはどういう点か。
そうして出会った本が、小宮信夫さんの「写真でわかる世界の防犯」。
◆防犯社会学、犯罪機会論とは
小宮さんは防犯社会学の学者さんだとの紹介。その防犯社会学の中でも、「犯罪機会論」という分野の専門家なのだそう。
犯罪を防ぐにあたっての考え方は大きく2つあるらしい。「犯罪原因論」といって、犯罪者の心理や性格、境遇などに原因を求めるもの。それと犯罪者が心理的、物理的に犯罪を実行しづらい環境を作って防ぐ「犯罪機会論」。
読んでわかったと思うけれど、「犯罪原因論」は危機が起こった後のクライシス・マネジメントを論じ、「犯罪機会論」は危機が起こる前のリスク・マネジメントを目指す。
目指すべき、採用すべきはどちらの方法か?
未然防犯の「犯罪機会論」ではないか。子どもたちの母としてそうありたい。
そんな「犯罪機会論」をざっくりと説明してみる。
◆犯罪機会論をざっくりと
具体的な考え方として大切なのが
①入りにくさ(=領域性)
②見えやすさ(=監視性) この2つを高める
A物理的デザイン(ハ―ド面=防犯環境設計)
Bコミュニティエンパワーメント(ソフト面) この2つの併用
どうしてこんな有益な考え方が、この国では醸成されなかったのか?
海に囲まれた国、日本は天然要塞。見晴らしの良い海に囲まれて、他民族の侵略の経験がない。そのために犯罪機会論が必要とされなかった背景があるそう。
犯罪原因論を中心に据えられてきた日本では、事件が起きると犯罪者の背景などがヒステリックに報じられていないだろうか。このヒステリックさは不安から生じるもの。不安は犯罪が無くならないことから生じる。
世界中に散らばる犯罪機会論の具体例を次から次へと挙げるこの本で、私が興味深いと何度も読み返したものがいくつもある。どれもこれからできることや工夫。3つだけ挙げてみる。
◆犯罪機会論の具体例3つ
①公衆トイレの工夫
トイレは犯罪の温床との意識が強い国では、公衆トイレに犯罪を防ぐ工夫が凝らされていた。男女別の表示を大きくするなど、ぱっと見でわかる入り口にして、「入り間違えたふり」を許さない。また、障害者用トイレも男女別に設置している。
犯罪の温床であるトイレ、との意識の強化もしつつ、一刻も早く対策をしてほしいところ。
②子どもはゾーニングで守る
学校などで行われる防犯教育は、子どもの力や機転に頼りすぎると私は常々考えてきたけれど、やはり日本の防犯教育は子どもへの負担が大きすぎるとこの本を読んで改めて思った。犯罪機会論では子どもにマンツーマンディフェンスをさせないのだそう。
具体的な例として、学校へはフェンスや守衛室などで、「入りにくく、見えやすい場所」にするなどがあり、一番驚いたのが「公園のベンチは遊具に向かって置かない」だった。犯罪者に子どもを物色させるチャンスを与えないためだとのこと。
また公園の遊具はフェンスで囲んで、子どもと保護者以外入りにくくする方法も目からうろこだった。日本の公園はいつだって犯罪者に開放的で、子どもには極めて危険な場所だと実感。考え方から改革する必要を強く感じた。
③ホットスポット・パトロール
これは、私がパトランをやっているからこそ気になった点。
犯罪が起こる確率の高い地点を重点的に見まわることが第一。犯罪が起こりやすいのは「入りやすくて、見えにくい場所」と考える。さらに、しばらくその場にとどまっていると、犯罪者へのプレッシャーになるのだそう。留まる時間は15分が効果的。
最後の1つはパトランの活動に採り入れられるかもしれないと、自分のできることが見つけられて嬉しかった。パトロールランニングを詳しく知りたい方はこちら↓
「写真でわかる世界の防犯」には、「犯罪都市」とまで言われた街が、安全な街に生まれかわった例もたくさん載っている。
犯罪をなくすのは「できないこと」ではないのかもしれない。
そう思えたことが、この本を読んでよかったと思う、一番のこと。
(あ~長くなっちゃった…)