未消化な過去の記憶は、解決を望んでいる④ 龍神さん
一通のメールから、20年前に別れた夫の秘密を知ることになった。↓
元夫は、一緒にいる人を癒やしてしまうヒーリングの力があった。
元々そういう質を持って生まれた人だと思う。
誰に教わった訳でもないのに、気功やレイキを使いこなし、見えない世界と交信しているかのようなスピリチャリストの一面があった。
レイキを使って手をちょっとかざすだけで水の味を変えるのは容易いことだった。
さらに、砂糖入りの甘いコーヒーの味を砂糖抜きのブラックコーヒーの味に変えたり、タバスコを唐辛子抜きの味にしたり、不思議なことの出来る人だった。
「何でこんな事ができるの?」と聞いたら、悪戯っぽく笑いながら「龍神さんの働き」とだけ答えて教えてくれなかった。
龍神さんといえば、私のスピリチュアルな能力が開いたのは、ちょうど夫と出会った頃だった。
ある水墨画を見たとき、ただならない感じがして見入ってしまったことがある。
白と墨の抽象画の表面に生き物が憑いていた。
「この絵に東洋の神様が居ますね」
私はインスピレーションのままに絵の所有者に話した。
「よく判りましたね、見る人が見たら、龍神さんが居ると皆さん言います」
作者は、絵の所有者の娘で画家だった。
突然降りてきた何者かに憑依されてトランス状態になったときに描いたのが、この絵だと話してくれた。
龍神が画家を媒介にして描かせた絵。
確かに絵のなかで龍神さんが生きていた。
私と龍神さんとの邂逅は、この時が初めてだった。
そのあと、龍神の絵は大阪の生國魂神社に奉納されたと聞いた。
私の霊性の開花と夫との出会いは何か関係があるのだろうか。
ヒーラーでもある夫は救済者的な一面もあった。
困っている人を見たら放っておけない性分だった。
出世払いでいいよ、とお金を貸したきり返って来なくても平気だった。
病気の人に、自分が販売している高価な漢方薬をあげたら病気が治って感謝されたこともある。
台風で落ちたリンゴの処理に困った農家の人が、瓶詰めにしたリンゴジュースをトラックにいっぱい積んで売りに来たときは、気風よく全部を買ってあげた。
農家の人が大喜びするのをみて、夫は嬉しかったそうだ。
その買ったリンゴジュースは何本か残して、あとは全部人にあげてしまった。
その話を聞いた私は目が釣り上がった。
自分が困っているのに、人を助けている場合か!
離婚、の二文字が頭をよぎった。
そのとき夫の事業は倒産していたのだから。
夫と一緒だった9年間のほとんど、負債から逃れられない生活だった。
夫は自分がどんなに困っていても、人助けを辞めようとしなかった。
この話を友達にしたら、皆んな口を揃えて言う。
「まるで聖フランシスコみたいやん」
夫という人は、捉えどころの無いカオスみたいな人だった。
人を騙す詐欺師でありながら、人を助ける癒やし手で聖人みたいなところも有った。
一口に悪人とも善人とも言えない、多面体で複雑な人だった。
続きます
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