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台風前夜に思い出したこと

ゴー、ヒュー
という地鳴りのような風の音で
台風がそこまで近づいているのが
分かります。

明日と明後日、石垣島に最接近のニュースが
なんどもSNSから入って来ます。

9月の台風が一番大きいと言われていますが、
こんどの台風は油断できそうにありません。

強風に煽られた窓のカーテンが
ばたばたと音をたててはためいて、
身体も心も共鳴するのか、
なんだかザワザワしています。

食料はすでに一週間分を確保しました。

輸送の船が入って来る航路が、
台風の進路に当たっているために、
少しの間は本土からの物資が途絶えてしまうから、
台風前になるとスーパーの商品が、
とくに食料品が売り切れしまいます。

商品が売り切れた石垣市のスーパーの棚。
8月30日午後9時


しかし、台風も悪い事ばかりでもありません。

もしかしたら、二日間ぐらい
家に閉じ込められるかもしれませんが、
いつも意識が内側に向かいやすい私には
ゆっくり自分と向き合える
クリエイティブな時間でもあります。

台風は荒ぶる自然の神の仕業か。逆らっても仕方がないぞ。島に住んでいると、そんなお任せしよう、というか無為自然な境地になります。

大樹をなぎ倒し、車を横転させ、牛を牛舎とともに吹き飛ばしてしまう台風の猛威を見せつけられると、
どうしても畏怖を感じずにはおられません。
そして、自然と人間社会について考えてしまいます。

二百五十年ぐらい前に産業革命があって、
その延長線に私たちが生きているわけですが、
産業経済社会は主に男性が作ったものだから、
わたし個人的に言えば、正直なんだかなーという気がしないでもありません。
オーケーでもあり、微妙にノットオーケーでもあるということです。

ところで、私は一時、サラリーマンの新聞と言われたタブロイド紙の記者をしていましたが、
そのころ日本人男性の8割がサラリーマンでした。
三十年ぐらい前です。
農業林業漁業をやめて、サラリーマンになる人が多かったのです。
スーツ着てネクタイ締めて電車に乗った。
サラリーマンと専業主婦のカップルになる事を政府も推奨していました。
「24時間戦えますか」のキャッチコピーが
テレビから流れ、
♪だから頑張れ みんな頑張れ
井上陽水の「東へ西へ」がいまでも耳に残っています。
私はといえば、
そんな主流は座り心地がわるくて
傍流の中に身を置いていましたけど。
編集部にはコソッと内緒で藤原新也さんなんかを愛読していました。
そんな私が平均的日本人男性が読む新聞を書いていたのが、今振り返れば、場違いに思えてなりません。

台風が来るたびに、
いろんな事を思い出します。

産業革命いらい、
じわりじわりと自然と乖離してしまって、
その延長線上に
今の私たちがいるのだと、
南の島に住んでから
考えるようになりました。



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