楽園瞑想〜母なるものを求めて(8)母の物語
父と私を引き離してしまったのは母だった。
今にして思えば、両親は家庭内離婚をしていたようだ。
いったいどんな具体的事実のせいで母と父が離れてしまっのか。それを知ることは永久にないだろう。
思い出すのはあの光景。
薄日が差し込む夏でもひやりと冷たい部屋。そこで母は注射器を洗っている。私はそれを見ている。青緑色のガラス製の注射器と、先端に綿を薄く巻いた注射針をガーゼに包む。いくつものガーゼに巻かれた注射器。それを消毒器の中にすき間無く並べていく。
母のけだる