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DON McCULLIN @ TATE Liverpool

今回の旅の目的はこれ。

テート・リバプール美術館でのドン・マカラン展。イギリスを代表するフォトジャーナリストです。

フォトグラフィーを大学で専攻したいと考えている長男に見せるために、350km離れたリバプールまではるばるロンドンからやってきました。

彼は、1960年ころから、世界中を飛び回って、戦争、飢餓、闘争、貧困、ホームレスなどの写真を撮り続けています。もう80歳代ですが、最近ではシリアの写真も撮っています。

テーマがテーマなだけに、写真一枚一枚が重い。戦争の悲惨さ、残酷さ。苦悩に満ちた顔、表情を無くした瞳が、画面からこちらを見つめている。

戦争のシーンは誰がとっても残酷です。でも、彼の写真は、ただ残酷なシーンを撮っているだけじゃない。苦しんでいる人の魂が乗り移っているかのようで、鋭く突き刺さります。すごい写真家っていうのは、こういうものなのかと、ため息が出ます。

彼自身が、悲惨な情景を撮り続けて、一緒に苦しみ続けてきた。あまりにも感受性が鋭すぎて、傷ついても傷ついても、写真を撮り続けずにはいられなかったんだと思う・・・。

悲惨な光景の写真を次から次へと見ていって、衝撃が強烈すぎて、私は吐きそうになって、目眩がして、何度も座り込んで休みながら、時間をかけて1枚1枚見て最後の部屋まで行きました。

最後の部屋は、彼にとっても癒しになった、風景写真。でも、私にはそれさえも暗くてみているのが苦しくて。

見にいって「あーーー、よかったーーー」と言えるタイプの展覧会じゃないです。良くなかった訳ではなく、逆。一緒になって苦しんで傷つくほどに、すごい展覧会です。

午前中じっくり見て、その後一日中、吐き気はおさまらず。

疲れた。

でも、見てよかった。

写真家になりたい息子に願う母の思い

展覧会を見ながら、痛切に思っていたことがあります。それは、息子にはこういう写真を撮る写真家になってほしくないということ。

素晴らしい仕事だとはわかっています。でも、60年もこんな現場を飛び回り、こんな辛いことに目を向けてきたドン・マカラン。ただただ、私は、母として、息子に、そんな辛いことばっかりしてほしくない・・・と思うのです。たとえ使命感ややりがいのある素晴らしい仕事だとしても、息子には人生を楽しんで欲しい。美しいこの世界を堪能して欲しい。身勝手かもしれないけれど、素直な母の思いです。

展覧会の後、息子に聞いてみました。「こういう写真、撮りたい?」と。息子は、速攻で首を横にふりました。「体力も、精神力も、とんでもなく必要だよね。」って。

今時の、風の時代の青年はこんなものかもしれません。

ほっとしました。
幸せな人生を堪能して欲しいです・・・。


↓息子の写真      copyright reserved ©️Takumi Voss 2021

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