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母から娘へ 8/13 年下の先輩の死

 書評が2つ載って、発売2ヶ月以上がたってもまだ店頭に並べてくれている書店があるなんて有難いですね。

 ダルカラの「1961年:夜に昇る太陽」は、双葉町長や東京電力が、原発建設予定地の農家に土地売却の直談判に来る場面が秀逸でした。演出の谷さんによれば劇中のセリフは取材に基づくほぼ事実だそうです。事前情報もなくああいう風に迫られれば、原子力に関する知識が乏しい、私たちのような一般人は、同意せざるを得ないでしょう。

 先日とても悲しいことがありました。3年前の初演以来、庭劇団ペニノの「地獄谷温泉 無明ノ宿」で共演してきた辻孝彦さんが、52歳の若さで亡くなられました。森下スタジオを皮切りに、40日間の北ヨーロッパ4カ国公演、その後の京都公演と、言わばずっと「同じ釜の飯」を食べてきた仲間でした。
 辻さんは寡黙な方で、すごく沢山おしゃべりをした訳ではないですが、年下の、しかし芸歴ははるか上の、心優しい先輩でした。プロの俳優たちの中でひとり素人同然の私は、皆さんの足を引っ張らないよう必死でした。稽古前にひとりでセリフ練習をしていると、辻さんがさり気なくそばに来て一緒にセリフを合わせてくれたことを、ありありと思い出します。
 今日は稽古場に一番乗りかなと思っていても、必ず辻さんが先にいて、胡弓の稽古をしていらした。この劇で初めて弾くことになったものの、一年経つ内にはどんどん上達されていました。
 唐組のベテラン俳優で、久保井研さんが演出にまわられることが多くなってからは、ますます劇団を引っ張っていく立場でいらしたのに…!演劇一筋の人生で、道半ばでのご病気は、さぞ無念でいらしたでしょう。
 あいにくお酒も煙草も苦手な私は、喫煙スペースでご一緒することもなく、お酒の席も翌日に備えて早めに引き上げることが多かったのですが、飲まれると若い俳優さんたちにお説教もされたと聞きます。兄貴分として伝えたいことがきっと山ほどあったのだと思います。私ももっと沢山お話したかった。
 昨年8月に病が発覚してからは、懸命の治療、リハビリを続けていらっしゃいましたが、唐組単独では2017年春の「ビンローの封印」が、そして東京乾電池とのコラボ企画である「嗤うカナブン」が、私が拝見した辻さんの最後の舞台でした。

辻孝彦さんーー今まで本当にお世話になりました。享年52歳、早すぎる死でした。合掌。

 私の歳になると、いつ何があってもおかしくないのです。だから今この時を大切に、やりたいことは先延ばしせずやろうと思います。
 あなたも色々な出版社からオファーを頂いたことに感謝して、作品に一日一日、大切に取り組んでくださいね。
 ところで大地の芸術祭には行くのですか?T一家も?私も行けたら行きたいなと思っております。

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