そもそもエフェクチュエ―ションって何?と聞かれてしまいましたので、簡単にご説明します。
エフェクチュエーション実践サロン・スナックレモネード、お手紙係りの谷口千鶴です。今さらすぎますが、「そもそもエフェクチュエ―ションって何?」と聞かれてしまいましたので、簡単に説明します。
エフェクチュエ―ションとは
いくつもの新規ビジネスを成功させた優れた起業家に共通する意思決定プロセスや行動様式を抽出化し、一般化した理論です。ノーベル経済学賞を受賞した ハーバート・サイモン教授の弟子であるインド人経営学者サラス・サラスバシー氏が、著書『エフェクチュエーション:市場創造の実効理論』中で提唱しています。
サラスバシー氏は、優れた起業家 27 人に意思決定実験を行い、プロトコール法によってデータを抽出しました。優れた起業家と定義されるのは、1 つ以上の企業を創業し、少なくとも 1 社 を株式公開した人物たちです。その調査の結果、サラスバシー氏は、極めて不確実性の高い市場においても、優れた起業家は、問題を解決するために、一定の考え方を持っていることを発見します。この明確な理論こそエフェクチュエ―ションです。
連続して成功する人は運が良いわけではない
連続して成功する起業家の方って、私のように普通の人から見ると、他の人にはできない特殊な能力や恵まれたバックグラウンドを備えていると考えがちです。そもそも家が超お金持ちだった、とか、とにかく頭脳明晰すぎるとか...。あるいは、たまたま幸運に恵まれてる超LUCKYな人とか…。なにせ、次々とビジネスを立ち上げてはどんどん成功させていくんですよ。普通な人のわけはありません。神様に選ばれた相当な人なはず…。自分とは違う次元の人だと。
しかし、 サラスバシー先生は、彼らは、単に運がいいのではないことを明らかにしたのです。しかも彼らには、共通の思考様式があることも。すごーく簡単にいうと、成功を支えている裏側には、当然もともとのバックグラウンドもあるんだけど、それだけじゃないよ、マインドなんだよってことです。そのマインドをわかりやすくしたのが、エフェクチュエ―ションです。
これって、すごいことです。
この発見により、産業や地域、時代にとらわれず、どのような特性を持つ人であっても、成功する起業家の思考・行動様式をマネすることができるようになったのですから!!!
「エフェクチュエーション」は、「コーゼーション」の対概念である
必要なことなので、ちょっとだけ小難しいことを言います。「エフェクチュエーション」は、「コーゼーション」の対概念です。「コーゼーション」とは従来の概念です。
たとえば、起業する場合、コーゼーションでは、マーケティングリサーチを行い、市場環境を予測し、目標を立てて戦略を練ったりしますよね。そのあとは、たいてい、 戦略の実行に必要な資源を獲得するための計画を立てる。必要なお金を集めたり、人材募集をしたり。で、整った時点で、ようやく最初の一歩を 踏み出すわけです。
しかし、エフェクチュエーションでは、驚いてください!こうした、STP マーケティングなどは行なわないというわけです。しっかりした計画を綿密に立てるのではなく、まず実行していこうという考え方です。しかも、「やってるうちに、なにかやるべきことが出て来るよ」みたいな考え方です。考えるべきなのは、目的ではなく、手段。「今手元に、●●があるから、ひとまず、この持ってるもので飛び込んでみよう」ということを理論的に説明しています。
好きな人ができたら、まず告白してみる
とことんわかりやすく説明いたします。
好きな人ができたとして、その人と恋人同士になりたい場合、従来の方法、コーゼーションなら、まず、相手の好みをリサーチし、その相手の理想のタイプになるために、痩せたり髪型を変えたり、相手好みの会話を仕込んだりするわけです。しかし、エフェ(エフェクチュエ―ションと書くのが疲れてきたので、以下、「エフェ」と略)では、「私は相手が好き」というこの気持ちだけで、ひとまず告白してみたりします。うまくいけばOKですし、もし相手に迷いの色が見えたら、これはこれでチャンスでして、「何をどうすれば付き合ってもらえますか?」と聞きだして、その部分を改善して、再度告白すればいいわけです。
従来のコーゼーションの場合だと、スタートまでに時間がかかるのです。
リサーチした結果、「かわいい系」が好きだとわかって「かわいい系」を目指しても、かわいい系に目指すダイエットの過程で、相手に純正「かわいい系」の彼女ができてしまっては元も子もないですよね。
そのそも、そのリサーチが実は間違っているという可能性もあります。
時々いません?口では「かわいい系」が好きと言っておきながら、実は、「キレイ系」が好きだとかいう人。
しかし、エフェなら、そういうリスクを避けられます。
5つの原則
「レモネードの原則」が出てきたので、お伝えしますと、エフェには「5つの原則」があります。VUCA、スタートアップ、新市場開拓時、第2創業期 など、先が見えない不確実性が高い状況において成功を続ける起業家は、このプロセスがあるからだ、とサラスバシー氏は説明します。
手中の鳥の原則
「手中の鳥」の原則は、手元にあるモノ、知識、人脈を資源として、「まずスタートする」原則す。従来のコーゼーションでは、あらかじめ選択した目的を実現するため、どのような手段が必要かという視点で出発していましたが、エフェクチュエーションでは、所有する手段(手中の鳥) から「効果」を創り出していきます。
先ほどの「好きな人ができたらまず告白してみる」の場合、「好き」という気持ちを手中の鳥にしています。つまり「手中の鳥」は、経済的な資産だけではありません。「何を知っているのか」、「私は誰か」、「誰を知っ ているのか」も有効な手段となります。 「私は誰か?」は、いわばアイデンティティーであり、「何を知っているか?」は知識、「誰を知っ ているか?」は人脈・ネットワーク。これらの 3 つの手段は互いに影響しあっており、「手中 の鳥」は起業家のステージによって変化します。
「許容可能な損失」の原則
従来の経営学の原則でいえば、複数の選択肢がある場合、利益が最大化するものを選択すると考えられていました。しかし、極めて不確実性が高い状況においては、期待利益が得られない可能性も考えられます。エフェクチュエーションでは、ビジネスが失敗した場合にその損失を許容できるかどうかという視点で事業戦略が実行可能かを考えます。 優れた起業家は、許容できる範囲においてのみ資金を使おうとします。マーケットリサーチなど 販売前の行動を行わず、「許容可能な損失」の範囲内で行動をします。
ですから、「好きという気持ち」を手中の鳥として告白する時気を付けなければいけないのは、告白してふられても立ち直るくらいの好きである場合しか告白してはいけないということです。
「レモネード」の原則
不確実性の高い市場の場合、予期せぬ事態も高い確率で起こり得ますが、エフェクチュエーショ ンでは、それを避けるのではなく、積極的に活用します。そもそも「手中の鳥」を洗い出し、「許容可 能な損失」の原則に沿って行動を起こしたとしても、その行動が市場に受け入れられる保証はないわけです。しかし、エフェクチュアルな行為者は、予期せぬ結果を得たとしても、しなやかに方向転換を し、別の機会を紡ぎだすのです。日本語でいえば、「七転び八起」あるいは「転んでもただでは 起きない」姿勢ですね。「レモン(粗悪品)をつかまされたらレモネードをつくれば良い」という格言 に由来するとか。
先ほどからの例をとれば、「ふられたけど、初めて口をきいてもらえた」とか「ふられたけど、友達になれた」などと考えるわけです。
「クレージー・キルト」の原則
手段によって目的そのものが変化しうるエフェクチュエーションのプロセスに沿って創生された 企業や市場は、スタート時には思いもよらなかった形に仕上がることもあります。この事象がパッチワ ーク・キルトの製作に似ていることから「クレージー・キルト」の原則と命名されました。あらかじめ決められた形を作るために必要なピースを当てはめるジグゾーパズルに対比するアナロジーですね。
たとえば、「好き」という気持ちで「当たって砕けろ」マインドで告白したら、本当に砕けてしまったけれど、砕けて落ち込んで泣いていると、友達が慰めてくれて、その友人と急接近することになり結婚したとなると、レモネードの原則でもあるし、クレージーキルトにもなりますね。
「飛行機のパイロット」の原則
「飛行機のパイロット」の原則は、先述の4つの原則全てに影響する原則で、予測不能な未来 に臨機応変に対応しコントロールすることを指しています。
飛行機の操縦の大部分は、自動操縦がカバーしていますが、パイロットが不在の飛行機はあり得ません。思いがけない天候不良に見舞われ自動操縦が効かなくなってしまうかもしれないし、乗客 が急病に陥ることもあるかもしれないわけです。そうした不測の事態が起こった時、臨機応変に対応するこ とが必要です。
うーん、わかっていただけましたでしょうか?
詳しくは、「スナックレモネード」のママである、吉田満梨先生のご本を参考にしてください。
私は、エフェが好きすぎて、kindle版も紙版も持っています💦しかも好きだ好きだと言っていたら、最近英語版もやってきてくれました🥰
スナックレモネードではアカデミアとの連携も
最初にこの概念が世の中に出たのは、2001年の「CAUSATION AND EFFECTUATION: TOWARD A THEORETICAL SHIFT FROM ECONOMIC INEVITABILITY TO ENTREPRENEURIAL CONTINGENCY」という論文です。我々「スナックレモネード」では、店主の垣内さんが中心になって最初の論文を読み解いたり、この原文を勉強したり、そんなこともしています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?