見出し画像

LA LA LAND(ラ・ラ・ランド)考察

こんにちは!Keiです!前回に引き続き今回も映画分析の記事を投稿したいと思います。
今回扱うのは,映画LA LA LANDです!みなさんも一度はご覧になったことがあるのではないでしょうか?かなり大きな話題を呼んだ一作です。

この映画のレビューは「アメリカンドリーム」と「男女の恋愛」という二項対立でストーリーをとらえるものが大多数であるようです。自らの夢をかなえ,恋をあきらめるという,サクセスストーリーにして切なさのある映画という感じでしょうか。たしかにその見方は間違ってはいないのかもしれません。ただ,夢と恋愛の二項対立だけでこの映画を見てしまうと,「夢を追う2人の間に恋や愛は叶わない」というあまりにもロマンのない結論に至ってしまうように思えます。

この記事では,あえてミアとセブの男女の仲に注目することで,映画 LA LA LANDが二人の仲においても決してバッドエンドではないということを主張したいと思います。最後まで読んでもらえたらうれしいです!


アメリカンドリーム

この映画の主題とされている,アメリカンドリームについて少し押さえておきます。映画全体にその要素が散らばっていって,見落としようもない気がしますが,いくつか紹介したいと思います。

冒頭のシーン
この映画の冒頭では,LAに向かうハイウェイで渋滞した車のうえで,若者が踊るシーンが描かれます。その際に流れる曲 Another Day of Sunの歌詞はとても示唆的です。

“And even when the answer’s “no”
Or when my money’s running low
The dusty mic and neon glow
Are all I need” 

例えばこの部分の歌詞は印象的です。「どれほどの困難があろうとも決してあきらめずに進み続ける」熱意が読み取れます。実際このシーンに登場する踊り手たちはみな若者ばかりで,彼らのはじけるようなダンスは,夢に胸躍らせる人々のイメージを与えます。さらにLAという,アメリカの夢が集まる場への道が渋滞していることは,夢に辿り着くまでの困難さを暗示しているようです。

車踊り

また,ミアを含む女性4人が歌う Someone in The Crowdも示唆的です。

“Someone in the crowd could be the one you need to know
The one to finally lift you off the ground
Someone in the crowd could take you where you wanna go
If you’re the someone ready to be found”

自分が努力をし,準備ができているのなら,だれかがきっと見つけてくれる(努力が報われる)。与えられる機会を生かし,努力によって夢をつかもうという,まさにアメリカンドリームが歌われています。

このようにLA LA LANDにはアメリカンドリームのイメージが散りばめられているのです。そのイメージについて整理できたところで,いよいよ主人公セブとミアの仲について注目していきましょう。

4人おどり

セブにとってのジャズ

二人の関係性を考えるためには,実はジャズへの注目が非常に重要です。キーワードは「自己決定」です。

物語のはじめに,セブがレストランでピアノを弾くシーンがあります。レストランのオーナーに,あらかじめ決められた曲のみを弾くように念を押されるものの,彼はどうしても自分の弾きたい曲を弾き始めてしまいます。その結果,レストランをクビになり収入源を失ってしまいます。

彼にとってここでピアノを弾く仕事は,暮らしのために非常に重要な収入源であるはずです。しかしながら,彼は自分の弾きたい曲を弾き始めてしまうのです。他者に決められた台本の通りに弾くのではなく,自分が弾きたい曲を弾くことがセブには非常に重要なことがわかります。

また,ミアにジャズを語るシーンで,彼が強調するのは「演奏のたびに新しいこと」です。フリージャズという名前からもわかる通り,曲の方向性は即興で変化していきます。だからこそ演奏のたびに新しいものが生まれるのです。ここでもやはり,だれかにあらかじめ決められた楽譜の通りに演奏するのではなく,自分で決めた道をすすむことが,セブの惹かれるジャズのポイントであることがわかります。より抽象化して言うとすれば,彼にとって重要なのは「決められること」ではなく「決めること」なのです。

画像5

ミアの中のセブ

ミアは自身で手掛けた舞台が評価され,それをきっかけに女優として大成していきます。その背景には実はセブの存在があるのです。

大きなターニングポイントとなった自作の舞台。それまで彼女は,数々のオーディションを受け,指示されるがままに演技をしていました。しかしこの舞台で彼女は,演者から脚本,道具作りまですべて自分だけで行います。まさに「決められる」側から「決める」側へと変化したのです。

さらにより象徴的なこととしてとらえられるのが,女優になる直前の面接です。その面接には台本がなく,ただ思うままに語るようにとだけ指示されます。ここでも決定するのは面接官ではなくミア自身なのです。

彼女の変化はすべてセブと付き合うようになってから起きているものです。セブのジャズ観(自己決定すること)が,ミアに大きな影響を与えていることが,彼女の演じ手としての変化という形で浮き彫りになります。さらに,ミアの自作の舞台とその後の面接は,彼女が女優になることに直結したきっかけでした。いうなれば,女優ミアを支える根底には,セブのジャズへのこだわりが生きているのです。たとえ彼らが別れてしまっても,ミアという女優の基盤にはセブの存在があり続けるのです。

画像4

SEB’Sのマーク

ミアはセブが開こうとしていたジャズバーの店名に “SEB’S”を提案します。一方セブは,自分で決めた名前がすでにあるといってそれを却下します。しかしながら,夢をかなえたセブのそのバーの名前が “SEB’S”であることが物語の最後に明らかになります。

セブにとって「自分で決定すること」は非常に重要なことであり,実際にそれを貫いたことで,彼は夢をかなえることができました。そんな彼がミアの意見を取り入れたことには大きな意味があります。彼の夢,自分のジャズバーを持つという夢の中に「“SEB’S”という店名」という形でミアの存在が生きているのです。

画像3

おわりに

ミアは女優となり,セブはジャズバーを開きました。彼らはそれぞれの夢,アメリカンドリームを手にしたのです。たしかにその過程で二人の道は分かれてしまい,一生を添い遂げることは叶いませんでした。

しかし,女優ミアを支える根底にはセブの存在があり,セブのジャズバーにはミアの存在があります。互いが真に求めていた夢の中に,互いの存在が影響しあっています。彼らが今後一生添い遂げていくはずのアメリカンドリームの中には,実はお互いの存在が息づいているのです。このようにとらえると,映画LA LA LANDは「夢を追う2人の間に恋や愛は叶わない」ことを示す映画などではなく,「夢の中に互いの存在を感じあう2人」という非常にロマンチックな映画としてみることができるのではないでしょうか。

この映画もう一度見たくなりませんか?

最後まで読んでいただきありがとうございました。

画像6


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?