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『石狩湾硯海岸へ接近中』の全文公開 連載第135回 第102章 夏の朝はまだまだ暗い (後半)
今日は6月18日である。昨日、昼間はプラス23.6度もあった。それが今は気温が下がっていても、きっと14度か15度ぐらいはあるだろう。健康にいい快適そのものの気温である。厳寒で、しかも近年は年により以前の2倍もの大雪が積もって車道も歩道もこれまで誰も経験したことのない交通困難になって除雪に何日もかかる生命の危機に曝されるようになってきている日々を、人々はまるで壊れかけた深い井戸の奥底に閉じ込められたようにして耐え忍んでいる。見上げれば、狭い円形の空は力ない薄灰色に見える。そのころから1日1日待ち焦がれてきた夏至を数日後に控えた札幌の気候は、生活のあらゆる面に最も好都合である。風に、木陰に、朝焼けに、笑顔に満ち溢れている自由なる北海道の奇跡のような夏の日々、このためにこそ私は生きているのだ。他の多くの人々もきっとそうであろう。
そうして、季節が巡っていって再び次の真冬が近付いてきて、条件を整えることができさえすれば、球根でも求婚でも、糾弾でも球団でもない「求暖」のために、基礎体温が高めの陽光の別天地・美麗島にひとっ飛びーいたすのであーる。台北に行って、キンカンの実が生っているのを生まれて初めて見た。
台湾は訪れる度に目に見えて便利さを増している。かつて、桃園機場(タオユアン国際空港)から台北車站(台北駅)までは、國光客運の1819番のバスに乗って1時間近くかかったのであった。いかにも中途半端な番号にしているのは、海外からの乗客が長時間の飛行で疲れていても忘れにくいようにとの配慮からだったのだろう。それとも、台湾華語では発音しやすい数字なのかも知れない。空港到着ロビーのATMから台湾ドルを取りあえず7万円ぐらい引き出して、砂糖の入っている甘い緑茶を自販機で買って、緊張したまま、温い夜風に曝されながら名前を知らない植栽の植物を眺めているうちにバスが到着し、車体横のトランクに、まだ重たくない大小のスーツケース2個を入れられ、なぜか声の大きいドライバーから接着面のある番号付きの預かり証半券を2枚手渡されて、車両先頭の乗り慣れない右側のドアから数段のステップを上がって中途半端な位置の席に着いて、時に京劇らしい旋律と俳優の歌うような台詞が交じる地元のラジオ放送を聴き、暗い夜道を東に向かって移動したものであった。沿道で次々と現れる、日本では見慣れない漢字の看板や掲示を目にして、海外に来ているのだ、という解放感と非日常感を味わった。
それが今では高速鉄道でたった37分で到着できるようになった。完工が何年も遅れていたので、有り難く利用している。新千歳から札幌までの所要時間とほぼ同じである。首都の北にあるアーランダ国際空港からストックホルム旧市街までも35分で着ける。世界中、空港の用地買収と建設、空港ターミナルと大都市との連絡には苦労しており、ベルリンの新空港も完成までに何年も余計にかかっていた。北海道新幹線は札幌止まりでは価値が低く、空港までの延伸が不可欠であろう。
旧正月でも、温暖のレベルを超えて、北海道だと夏にならなければ到達しない高温まで上がる日さえある。台湾の名は希望なのである。これを仏独伊蘭で言えば、Le nom du Taïwan est un espoir. Der Name des Taiwans ist eine Hoffnung. Il nome di Taiwan è una speranza. De naam Taiwan is een hoop.となるだろう。このオランダ語は間違っているかも知れない。なぜオランダ語まで含めてみたか。それは、かつてオランダが台湾南部を領有していたからである。台彎高鐵(新幹線)の複数の駅は、ジュディ・オングのお兄さんの設計によるものである。
マンゴー パパイヤ 小籠包(しょうろんぽう)
釈迦頭(しゃかとう) 火鍋(ひなべ)に牛肉麺(にゅうろうめん)
物喰へば
腹が出るなり
ホーホケキョ
イモ喰へば
腹が張るなり
機密処理 Boo
強い日差しのその下で 乗りまくりますYouBike 好(はお)!
第103章 春から夏への札幌 https://note.com/kayatan555/n/nd9516d096c90 に続く。(全175章まであります)。
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