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徹底解剖:ピアノ名曲選 Vol.3【ラフマニノフ:絵画的練習曲 Op. 33-6】
皆さんこんばんは!ラボムジがお送りする【徹底解剖シリーズ】、今回は《ラフマニノフ:絵画的練習曲Op. 33-6》を取り上げます!
本番のリハーサルが重なってしまい更新時間が遅れてしまいました…申し訳ございません!
ピアノを習っていても意外と目を向けたことがないであろう《ものすご〜く細かなポイント》に着目したマニアックなコンテンツを配信していきますよ〜🔍
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初回、第2回では絵画的練習曲の最後を飾るOp. 39-9を取り上げました。この第3回は同じく《絵画的練習曲》のうち、先に出版されたOp. 33に目を向けてみたいと思います。
Op. 39が少々前衛的な雰囲気の漂う作風であるのに対し、Op. 33は後期ロマン派の叙情的な作風が印象的。中でも前奏曲Op. 32-12に通ずるリズムを持つ第2曲は特に人気があるように思います。
さて今回取り上げる第6曲、知名度の観点から言えば人気とは云えないかもしれません。しかしながら、良くも悪くもラフマニノフらしさが詰まった作品だと思うのです。
メロディラインを追うのは難しいけれど、なぜか記憶に残るフレーズがある。
一つ一つの和声は複雑なのに、次第に深い物語に引き込まれていく。
まるでカデンツァのように一気呵成に駆け抜ける中に豊かな起伏が展開される様は見事です。
細かい指回しが得意な人には特におすすめの一曲です。
それでは、いってみましょう!
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2小節の前奏。続くprestoの主部に目が行きがちですが、少しだけ前奏を深掘りしてみましょうか。
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まず速度指示を吟味。ラフマニノフの”non allegro” は曖昧で明確な数値にすることはできないでしょう。2小節目のリズムは独特ですから、それが表現できるテンポを設定するのが吉かと。
次に和声的な観点から。この序奏が曲全体を支配する響きを示しています。2つ目のA+Cの和音を根音のないドッペルドミナントと見るか、うわずったIVの和音と見るか…1つ目から減5度の音程関係になっているところも見逃せません。
どこか憂いを帯びた響きは言うまでもなく、ラフマニノフの常套句である『鐘の音』ですね。
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必要なことは全て譜面に書き込まれていると思いますが、音形の特徴は自分で見つけなければなりません。たとえば手書きで<>を書き込んでいる箇所がありますが、これは他の場所に比べて音の跳躍幅が広くなる瞬間にエフェクトを入れるためです。
他にも、響きの枠組みを示すアクセントと調性の決定を導くテヌートは意識して弾き分けたいところ。
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ほんの僅か一瞬で光が灯ったり陰ったり…調性の移ろいに敏感になりたいですね。
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多声部で厚みを増した展開。二段目の右手の複声部書法はやや実利を取った印象があります。
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アルトの無窮動、ソプラノ+左手の実質2要素で構成されたパッセージ。早い動きに惑わされずに響きを理解したいですね。
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コデッタと解釈するべきでしょうか。完全に調性が確立され和声として終結した後の冗談めいたパッセージ。ミのフラットだけのリズムがどのような展開を導くのか注目です。
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前半にも現れた楽句ですが、さらにもう一段転調して五度上に展開します。
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内容としては冒頭のパッセージをテクニカルかつ重厚に派生させたもの。響きを考えるとあまりペダルに頼ることができないので、なるべく指遣いでレガートを実現させたいですね。
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最初の2段、右手はスラーはじめの音を必ず1指で取ることができるので、安定して弾けそうです。
コデッタの最後で序奏の和音進行が再現されるのが粋ですね。直前の上行するパッセージはリズムを失いがちで意外と難所に感じられます。
そして残り火が段々、灰と化して行くような終末。最後まで抜かりない高い音楽性に満足感を得られることでしょう。
おつかれさまでした!
短いエチュードですが、只者ならぬ雰囲気を秘めた名曲だと思います。メロディが覚えづらいという意見もあると思いますが、高度なピアニズムと入り組んだ和声の処理に関してはキャッチーな作品よりむしろラフマニノフ「らしい」音楽ではないでしょうか。
取り上げて欲しい曲などありましたらコメントください📝質問も大歓迎です!
(文責:嘉屋 翔太)
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