行政書士と職務上請求②
前回に引き続き、行政書士の職務上請求について、事例を参考に請求できる場合と出来ない場合について説明します。
事例③請求書など
Aさんは、Bさんにお金を貸しました。
返済の期日になったので、AさんはBさんにお金を返すよう伝えました。
しかし、Bさんはなかなかお金を返してくれません。
Aさんは最初Bさんに電話で連絡していたのですが、Bさんは電話に出なくなりました。
仕方がなくAさんは、手紙をBさんに送りましたが、いつの間にかBさんは引っ越ししてしまいました。
Aさんは当職に「Bさんの引っ越し先(住民票の移転先)を調べて、Bさんに手紙を送りたい。」という相談をしました。
この場合、一定の条件を満たすと行政書士はBさんの住民票や戸籍を請求することができます。
一定の条件とは、以下の通りです。
●AさんがBさんにお金を貸していることを証明する物があること。
●Aさんからの依頼内容が、住民票等を調べて、「お金を返してほしい」という内容の手紙を本人に代わって作成する、というものであること。
上記の条件を満たし、Aさんからの依頼を受けた行政書士は、Bさんの承諾なしに住民票や戸籍を必要な範囲で請求することができます。
住民票を調べてBさんの引っ越し先が分かったら、Bさんに「お金を返してほしい」という内容の手紙をAさんの代わりに作成して、Bさんの住所に送ることができます。
この後、BさんからAさんに連絡がありお金を返してもらいました、となれば良いのですが、必ずそうなるとは限りません。
Bさんから何の反応もない、ということは十分あり得ることです。
そうなったらAさんや行政書士は何ができるのでしょうか?
実は、行政書士はこれ以上のことはできません。
Aさんが行政書士に依頼したことは、「Aさんの代わりにBさんに手紙を書いて送ること」です。
手紙を書いて送ったことで行政書士の仕事は完了しています。
そして大切な「Bさんの住所に関する情報」も、行政書士が「手紙を送る」為に集めた情報なので、それ以外に使用することはできません。
当然Aさんに教えることもできません。
「全然意味ないじゃないか!!」と思う方もいるかもしれませんが、行政書士が職務上必要な場合に本人の同意なしで戸籍や住民票を請求できる権限は、この位厳しいルールで制限されているのです。
当職も行政書士の一人として、与えられたこの権限を適切に使用しなければならないと改めて思いました。
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