1000字でまとめる『世界標準の経営理論』~ 2-7 ダイナミック・ケイパビリティ理論 (第2部 第17章) ~
2019年12月に早稲田大学の入山教授が出版した『世界標準の経営理論』。出版早々に購入するも、面白そうな章だけつまみ食いした以降は、3年ほど本棚の肥やしとなっていた。しかし、2022年10月にマネジメントへの一歩へを踏み出す中で【経営】への関心が再び高まり、この機会に丁寧に読み直すことにした。
本noteは自身の咀嚼を主な目的として、各章の概要を各noteで "1000字程度" で整理すると共に、読む中で感じたことを記録する備忘録である。なお、今の自分にとって目に留まった章から順番に触れていく。
1.本文概要:ダイナミック・ケイパビリティ理論
✄『世界標準の経営理論』該当ページ:P300~P314 ✄
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ダイナミック・ケイパビリティは、「企業の変化」を説明する理論である。現在は多くの業界・ビジネス環境が、将来予見が十分にできない状態になりつつある。つまり、競争の型がシュンペーター型になりつつあり、この環境を「ハイパーコンペティション (Hypercompetition) 」と呼ぶ。
ハイパーコンペティションの時代には、そもそも「持続的な競争優位」という前提が成立しない。むしろ企業に求められるのは「業績が落ちかけても、すぐに新しい対応策を打って業績を回復できる力」すなわち「変化する力」であり、この「変化する力」を明らかにしようと試みるのが、ダイナミック・ケイパビリティである。
経営学者がダイナミック・ケイパビリティを高める際に有効と考えている2つの有力な視点を紹介する。
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■視点①:センシングとサイジング
センシング(Sensing) とは「事業機会・脅威を感知する力」である。組織はどうしても認知に限界があるから、自分の周囲だけをサーチしがちになるが、ダイナミック・ケイパビリティを高めるには企業はなるべく遠くの事業機会・脅威までをサーチ(センシング) する必要がある。
更に、センシングにより感知した事業機会を実際に「とらえる」ことを、サイジング(Seizing) という。例えば、遠くの事業機会に投資することだ。しかし、探索型の投資は不確実性が高く、リスクも高いため、企業は避けがちな傾向であり、長い目で見た事業機会のサイジングができなくなる。
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■視点②:シンプル・ルール戦略
本戦略の骨子は「変化が厳しい環境下で企業がダイナミック・ケイパビリティを発揮するには、数を絞ったシンプルなルールだけを組織に (ルーティンの様に) 徹底させ、後は状況に合わせて柔軟に意思決定すべき」というものである。
「急激に変化する環境では、企業が意思決定のルールをあえてシンプルにすることで、ダイナミック・ケイパビリティを高められる」という主張である。行動規範・優先順位などを限られた大枠だけにして、それだけをルーティン化しておけば、意思決定者・マネジャーは、大きな環境変化のもとでも、本質的な部分は足並みを揃え、他の様々な予想外の事象には各自が柔軟に対応しうるからだ。
2.本章に対する振り返り
ダイナミック・ケイパビリティの説明の中で、”業界構造はそれほど変わらない" という前提である「ファイブフォース分析」が批判にさらされている点が印象的であった。それぞれの分析手法にはやはり "前提" があり、特定の分析手法を多用する中で知らず知らずの内に "その前提" に思考を縛られるリスクがあるかもしれない。自分自身も気を付けていきたい。
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シンプル・ルール戦略では「予想外の事象には各自が "柔軟" に対応しうる」という一節があり、自分はここでの "柔軟" に対して「実際にはそれが難しいのではないか」と少しの引っ掛かりを覚えた。ただ、その一方で 『本当に筋を押さえたシンプル・ルールが存在するなら、ここでの "柔軟" にはそれほど属人性を伴わない』のかもという観点も合わせて芽生える次第であった。
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もしかすると、この章の話を聞いて思い浮かべる内容によって 「その人の視野/思考がどの程度のレベルで、どのようなレベルの組織に属しているのか?」が推測できるかもしれない。そういう意味では、自分はまだまだ勉強不足なところがあるかもしれないが、少しずつでも理解を深めながら自分のマネジメントの中にも取り込んでいけたらと思う。