1000字でまとめる『世界標準の経営理論』~ 1-1 SCP理論 (第1部 第1章) ~
2019年12月に早稲田大学の入山教授が出版した『世界標準の経営理論』。出版早々に購入するも、面白そうな章だけつまみ食いした以降は、3年ほど本棚の肥やしとなっていた。しかし、2022年10月にマネジメントへの一歩へを踏み出す中で【経営】への関心が再び高まり、この機会に丁寧に読み直すことにした。
本noteは自身の咀嚼を主な目的として、各章の概要を各noteで "1000字程度" で整理すると共に、読む中で感じたことを記録する備忘録である。なお、今の自分にとって目に留まった章から順番に触れていく。
1.本文概要:SCP理論
✄『世界標準の経営理論』該当ページ:P34~P49 ✄
ーーー
SCPとは "structure - conduct - performance (構造-遂行-業績)" の略称である。源流が経済学の産業組織論 (industrial organization) になることから、"IO Theory" とも呼ばれる。そして、SCPが第1に教えてくれるのは「この世には儲かる産業と、儲からない産業がある」ことに対する理由である。
ーーー
SCPを理解する上で、まず重要なのが「完全競争 (perfect competiton) 」という概念である。完全競争の重要な帰結は「企業の超過利潤はゼロになる」ということである。(超過利潤:"必要ギリギリの儲け" を上回る部分)
そして、この完全競争の真逆に位置するのが「完全独占」である。業界に1社だけ存在して価格をコントロールし、他企業が参入できない状態であり、1社しかいないため差別化もない状態である。独占企業は生産量も価格も自分でコントロールできるため、自社(独占企業)の超過利潤を最大にする生産量と価格に設定するはずである。
ーーー
このような完全競争も完全独占もあくまで理論的な仮想状況に過ぎないが、この2つを両極とすることで、各業界が "程度論として" どの辺りにいるかを測る物差しができる。SCPの骨子とは「完全競争から離れている業界ほど (=すなわち独占に近い業界ほど )、安定して収益性が高い (=すなわち構造的に儲かる業界である )」ということである。
その上で、ベインを中心とする経済学のSCPは儲かる競争環境の仕組みを「産業の高い参入障壁→少数企業による産業支配」というロジックに求めた。それに対して、ケイブスとポーターは「企業レベルでの戦略的な差別化→企業グループ間の高い移動障壁→少数の企業がグループを支配」というロジックを提示した。
ーーー
インターネット社会で隆盛を極めているプラットフォーマー企業が収益をあげられるメカニズムは、SCPと極めて整合的である。なぜなら、各社とも、検索システム、EC、SNS、メッセンジャーアプリなどそれぞれの分野で、独占的な地位を得ており、独占に近いからこそ収益性が高いのだ。
SCPのエッセンスはすべて「完全競争と完全独占のスペクトラム」に集約されている。自社の周りの競争環境を少しでも独占に近づけた企業が安定して高い超過利潤をあげられる。
2.本章に対する振り返り
企業の超過利潤(収益)に関して、"上限状態(完全独占)と下限状態(完全競争)を提示することによって「程度論」にする" という考え方に非常に分かりやすさを覚えた。どんな業界においても "方向性のある2軸 (スペクトラム) " に落とし込んで考えることが出来るという認識があるだけで、各業界に対して落ち着いた理解を得ることが出来る様に思う。
ーーー
また、少し拡大解釈を含むが、ここでの "上限状態と下限状態を提示することによって「程度論」にする" という物事の捉え方は、例えば「チームマネジメントの状態」を推し量る意味でも活用できる考え方である様に考えた。「チームマネジメントにおける上下限の状態とはどのような状態であるか?」を一度立ち止まって考えてたい。
ーーー
各タイミングで注目されている各企業においても、「その企業はどのような業界に位置づけられ、その業界はSCPの観点で言えばどのような状態であるのか?」を理解の入り口とすることにより、注目企業が世の中の変化の中で移り行く中においても、"企業理解を進めるにあたって安定した掴みどころ" を得ることが出来た。