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1000字でまとめる『世界標準の経営理論』~ 3-4 意思決定の理論 (第3部 21章) ~

2019年12月に早稲田大学の入山教授が出版した『世界標準の経営理論』。出版早々に購入するも、面白そうな章だけつまみ食いした以降は、3年ほど本棚の肥やしとなっていた。しかし、2022年10月にマネジメントへの一歩へを踏み出す中で【経営】への関心が再び高まり、この機会に丁寧に読み直すことにした。

本noteは自身の咀嚼を主な目的として、各章の概要を各noteで "1000字程度" で整理すると共に、読む中で感じたことを記録する備忘録である。なお、今の自分にとって目に留まった章から順番に触れていく。

(導入説明 300字、各章概要 1000字、振り返り 500~1000字 構成である📣)


1.本文概要:意思決定の理論

✄『世界標準の経営理論』該当ページ:P376~P396 ✄

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意思決定論は、"あるべき合理的な意思決定" を導き出そうとする「規範的意思決定論 (normative decision making) 」と "現実に人はどのように意思決定するのか" を探求する「行動意思決定論 (behavioral decision making) 」の大きく2つに分かれる。また、近年において第3の意思決定論として注目され始めているのが「直感 (intuition)」である。

~メモ ( ..)φ_:なぜ意思決定が必要なのか?~
そもそも我々に意思決定が必要であるのは、将来への「完全な答えがない」世界だからである。


①規範的意思決定論 ⇨ 期待効用理論
最も基本的な考えは「期待値」であり、期待値は合理的な意思決定を考える際の基本中の基本ツールである。しかし、意思決定そのものは、人の主観がなせることであり、フォン・ノイマンらは "人が投資の損失にどのくらいメリットを感じるか" を「期待効用 (expected utility) 」として表した。

一般的に「人は所有する資産が大きくなるほど、投資などによって追加的に得られる利得 (=資産の増加) に対する追加的な効用の上昇が小さくなる 」傾向がある。

②行動意思決定論 ⇨ プロスペクト理論
プロスペクト理論の貢献は、先に解説した期待効用理論を大きく改訂して、より現実的な人の意思決定の描写に成功したことにある。同理論の主な命題は以下の3つである。

〈命題1〉
「投資成果がリファレンス・ポイントからどれくらい乖離しているか」で人が投資効果にどれくらいの効用を持つかで決まる。
〈命題2〉
「人は追加的な利得よりも、追加的な損失を心理的に重く受け止める」傾向がある。
〈命題3〉 
「大きな利得を得るほど、効用の追加的な伸び幅が減少する」し、「損失が増えるほど、効用の追加的な減少幅が減る」傾向がある。

~メモ ( ..)φ_:プロスペクト理論から~
人は「損をするほど、追加的な損失に対して鈍感になる」ということでもあり、「人は損をするほど、よりリスク志向性に近づいていく」傾向がある。


③直感の理論 ⇨ 二重過程理論
人の脳内では外部からの刺激に対して、大きく2種類の意思決定の過程(システム)が同時にかつ異なるスピードで起きる。
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★システム1:早く、とっさに、自動的に、思考に負担をかけずに、無意識に行われる意思決定。ヒューリスティックや直感による意思決定。

★システム2:時間をかけて、段階的に、思考をめぐらせながら、意識的に行う意思決定。Reaoning(論理的思考・推論)による意思決定。
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システム1を端的に表す言葉が「直感 (intuition)」である。そして、従来の行動意思決定論の概ねのスタンスは「人はできるだけ直感による意思決定を避けるべき」であるが、現実はいつもそうなのだろうか? 
 
認知科学者ゲルド・ギザレンザーによれば「周囲のビジネス環境が不確実になればなるほど、人は直感を使った方が将来の予測精度をあげた優れた意思決定ができる」ということが示されている。 

人が自身の意思決定の成果を「どれくらい見誤るか(予測のエラー度が高いか)」については3つの要素で決まる。
◯予測エラー度=(バイアス)²+(ヴァライアンス)+(ランダムエラー)
 ▶バイアス   :人が持つ認知バイアス
 ▶ヴァライアンス:過去の知見が役に立たない度合い
 ▶ランダムエラー:脳内と関係ない予想外の外部変化

バイアスとヴァライアンスはトレードオフの関係にあり、バイアスを減らそうとすれば結果的にヴァライアンスが増えることになる。

ただし、これは不確実性の高い状況下では常に論理思考により直感が優れるということを意味しない。素人である内はシステム2の思考が重要になる。

2.本章に対する振り返り

本章での『なぜ意思決定が必要なのか?』という問いが印象的であった。パッと問われると自分は「組織の足並みを揃えて、良い成果を生み出すため」などの様な言葉が思い浮かぶが、ここでの『完全な答えがないから』という答えが印象的であった。そう考えると、"意思決定を通じてを完璧を目指そうとすること" は自己矛盾を孕むのかもしれない。

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プロスペクト理論は以前に耳にしたことがあり、「人は損することに対して敏感である」という認識は持っていたが、本章での「人は損をするほど、よりリスク志向性に近づいていく」という見解には新鮮味を感じた。実際の仕事でも失敗が重なると、一発逆転を狙う様な雰囲気が出る印象は持っていたが、これもプロスペクト理論で説明できることは興味深い。

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仕事においても直感を活用する場面は少なくないが、本章では「直感が熟慮に勝る状況」について "イメージ式" を交えながら説明している点が印象的であった。どの状況で直感に頼るべきか?が分かれば、より適切な意思決定を手繰り寄せられる。"周囲の環境に不確実性が高い場合にはバイアスを抑えることがエラーを高める可能性があること" は頭の片隅に置いておきたい。

【参考資料】


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