【コピー本同人誌】 ひかりあれ 【製作記録】
2024年10月のCOMIC CITY SPARK 19で発行したコピー本の製作記録になります。
相変わらずの忘備録兼、誰かの参考になればと思いながら書き殴っております。
今回は写真が多めですが、目次からお好きなところをご覧下さいませ。
実は本を作ろうと思うまでが大変だった話。
はじめに。
余談みたいなお話になるんですが、お話を描くまでにとても勇気が必要でした。
この本を本当に出すか相当迷ってました。
私がこの子達を描く意味あるんかいな?という葛藤や普段描くキャラでは無いことの戸惑いとかで。(本当にいいのだろうか…が渦を巻いてた)
そういった感情が強くてなかなか1歩が踏み出しきれなかったというか。
でも推している作品が既に終了し、今後同人誌を出していく機会が減ってしまうかもしれない。
『出すなら今出さないと!』という気持ちにグイッと後押しされ腹括って全力で作ろうと思った、これはそんな経緯の本です。
タイトルとコンセプトから紙を決める。
タイトルは『ひかりあれ』
だいぶ前から決めていたタイトルです。
お話もタイトル通り『光』に向かうような話にしたいと思ってました。
イメージとしてはキラキラした偏光やパール、メタリック的な輝きのある紙より、もっと表現のある紙がいいな、と思い使ったのがこちらです。
キャストコート紙にエンボスが施された紙。光沢と浮き出される模様が高級感を感じます。
ちなみに紙名にSSとあるのは『スーパースノウ』の略なんだそうで。その名の通りのとても綺麗な高白色です。
ツルッとした紙質に光が反射すると、角度で岩目のような模様が浮き出るのがとてもいいな、と思いこちらを使うことにしました。
全面にベタっと塗りつぶすようなデザインでも、逆にシンプルで空間が多いようなデザインでも紙そのものの個性が光るのでどんな形にしても映える紙だなと思っています。
紙を取り寄せる
いつもネットや大型画材店で紙は買うのですが、なかなかこの紙を売っている所を見つけられず。
今回はこの紙を取り扱っていらっしゃって、小売をして下さる紙業会社様にお見積りをメールでしてもらい、後日直接ショールーム(都内)に引取りに行くことにしました。
⬇今回はこちらの平和紙業株式会社様へお伺いしました。
ちなみに3、4回くらいこういう事はしております…。
大きなサイズの取り寄せも出来るのが本当に有難いです。
またショールームでは、紙見本や特殊なパンフレット見本の閲覧もできるし展示なども定期的にやってたりと、なかなか楽しい空間です。
紙の相談も専門の方と見本紙見ながらお話出来るのは実店舗ならではなので、見学だけでも足を運んでもいいかと思います。
遊び紙
話を描いているうちに核となるモチーフが決まりまして。それに合わせて選んだのですが、ちょうど手元に衝動買いで買い漁っていた紙があったので、今回はこちらを使ってます。
本にはプラチナとゴールドの2色をランダムで使っています。この紙の上に月が印刷されたフィルムをかける予定でこの色を選びました。
ちなみに手持ちで足りなかった分はキュリアスメタルのゴールドを使っています。(通販分から使用してます)
本文用紙
以前から本文用紙で使おうと思っていた紙を今回使いました。
当初は白系(雪、しんじゅ)にしようとしてました。
でも表紙が白、遊び紙のファンタスは裏面が白なのでここで本文が白というのも面白くないなぁと。
悩みに悩んで今回は『みず』を使ってます。後半のお話の月とか空のイメージに寄せて、この色を選んでみました。紙の名前の通り軽やかな羽根を思わせるすき込みが紙面にフワッと舞っているようなとても美しい紙です。
1度使ってみたいなーと思っていたのでこの本で使う事が出来て満足。なにより後半のお話がより優しい雰囲気になった気がします。
挟み込みと口絵
今回は前編と後編が同じページ数になるように意図して台割を作ったので、真ん中にセンターカラーを入れています。
本当は仕掛け絵本的な事をしようとしてたんですが、もうちょっと試作して強度など万全に出せるようになってからじゃないと なかなか難しいかなと思い(時間もないし)後日の課題として、今回はセンターカラー仕様だけに留めました。
センターカラーページにはこちらの両面デザインペーパーを合わせました。
風景が元作品の雰囲気を思い起こさせる感じだったので使わせてもらいました。
この見開き中心に変形断裁したトレーシングペーパーのカラーイラストを挟み込みしてみます。
カラー口絵がトレーシングペーパーなので重ねると後ろの柄がくっきり見えてしまっています。
それを防ぐために製本では透け感を維持したまま見えやすくする為、この下にA5サイズのトレーシングペーパーを重ねています。(デザインペーパー×トレーシングペーパー×カラー口絵の順。)
余談ですが再版分より、口絵のトレペがカラーだったり、下に重ねたトレペがカラーだったり模様入りだったりと色々遊ばせてもらってます。(ランダムです)
本文の下準備は大体こんなところ。
次は本の顔、表紙関係のお話です。
表紙を印刷する
今回はコピー機を使って2色刷りをする、という試みをしてみました。
初めはいつも通りの黒1色でと思ってたんですが、黒1色だとイメージが違う気がしてよし!2色にしてみよう!と思い立ってやってみました。
私はアナログ製作なので、原稿も1色目と2色目で版を分けて描いています。
この完成原稿を片手にいつものキンコーズ様へ(チラ裏ですが、お世話になり過ぎてそろそろグレードが最高ランクへ到達しそう。)
キンコーズのコピー機は、2色カラーモード(自動判別で2色で刷るモード)も搭載されてるんですが、どうやら原稿の濃淡具合で2色目を判別するらしく。
予想外なところに色入れられるのもな…と思い、今回は単色のカラーモードを使い2回刷るやり方で作ります。
キンコーズのコピー機の単色カラーって凄い色数あるんですよね。見てるだけで楽しいし、コレ見ながら併せを考えるのも楽しい時間だったり。
まず初めに頭の中で思い描いていた黒×紫(バイオレット)で試してみます。
黒が強すぎて紫のトーンが負けてしまった。光の角度で一応見えるけど思ってた以上に真っ黒が強い…。
これはダメだなぁ、どうしよう?
コピー機抱えながら唸ってしばらく考えてました。
当たり前だけど黒の強さに勝てる色が無い…。
となると、黒を変えるしかない?という結論に。
さて何色にするかねぇ…。
画面を捲りながら考えて。
じゃ、これにしてみようかな、と試しにやってみた2色が個人的に大ハマリでした。
わー!!!!
パープルが風合い変わってしかも綺麗に出てるー!!!なにこれー!?!?!(嬉)
思わず心の中でガッツポーズ。
パープルがセピアと混ざって複雑な色味になってるのが好みだったし、この風合いが産まれたことが本当に嬉しくて。(赤っぽい色味になってます。)まさかこんな風になるとは思わず、予想外の素敵な誤算でしかなかったです。
やってみるもんですね、コピー機での2色刷り。
思った以上に楽しくてちょっと癖になりそうです。
次の本も2色刷りとか3色刷りとかやってみようかな???と思わずにいられません。(ただ版を作るのが大変だし、作り手のセンスが問われる問題だけども…)
紆余曲折を経て、こうして表紙の元が出来上がりました。
表紙を飾るアイテム達
今回も製本のために色々掻き集めました。
先ずはコラージュ用のパーツからご紹介。
日本のメーカーさんでもこういうのを、作って欲しいなぁ。海外製品は押さえたり見つけるの大変なんだもの…(探すのは楽しいんだけども)
今回は四隅に合わせる金属金具の色とこちらの装飾パーツをリンクせるように選んでます。
金系統はブラウン系、銀系統は白色系、みたいに。
こちらはレジンアート用の小さな鳥かごパーツです。両面使用になっていて、片面は黒、片面はブロンズになっています。
これから制作する3版目の再販はちょっと違う形状の鳥かごパーツを使う予定です。
今回はモチーフとして、歯車を選びました。色は金、銀、試しで買ってみた金古美の3色。
まずは配置してみます。
歯車パーツの組み合わせはランダム。同じ組み合わせは無いので、完全な1点ものとなってます。
最初は2色展開(金と銀)だったんですが、試しに買ってみた金古美がとてもマッチしていて。
なので、再販は私の偏見で金古美パーツの割合が多くなってます(イベント時は金古美が2冊しか出来なかったのでレアでした)
表紙絵に光を散らしたい、表現したいなと思ったので、こちらの大きめなガラスパーツとこれよりも小さいアクリルのカットパーツを使っています。
歯車パーツに合わせて表紙四方を飾るコーナー金具を合わせてました。カルトナージュや、布張りされた手帳によく使うパーツだと思うのですが、同人誌に使う人は私くらいかなと思う…。
ペラペラな表紙じゃなければ意外とイケます。付けると可愛いので是非!(ペンチが必要)
やられる方はぜひ200kg以上の厚みの表紙で!(今回は270kg使ってます)
表紙タイトルをエンボス加工していく。
これであらかたアイテムが出揃ったので表紙を加工していきます。
まずはタイトル。
これは以前使った平仮名スタンプを使います。
表紙がツルッとしているので以外に滑りやすくて力を入れすぎると滑ってズレたりするので、軽く真上からポンっと押すような感じで押していきます。
キューブのイラストの上にランダムで散らすように文字を配置していくのですが、タイトルが出来るだけハッキリ見えるように銀のスタンプインクを今回は使います。
インクが乾く前に、この上から更にシルバーのエンボスパウダーをかけます。
パウダーは紙によっては落ちにくい場合があります。今回使ったコート紙のツルッとした紙だとなかなか落ちませんでした。
裏面からトントンと軽く叩いてそれでも落ちない場合は綿棒や細い筆を使って余分に付着した所を払っていきます。キラキラの雰囲気出ていいかなと思って今回は少し周りにパウダーを残してたりします。
パウダーを掛け終わったら、今度はエンボスヒーターを使って上から熱でパウダーを溶かしていく作業です。
熱は当てすぎるとパウダーが溶けすぎて押したスタンプの線が太くなったり歪んだりします。
紙によっては熱で変形してしまう恐れもあるので、パウダーが溶けて変わってきたなという完全に溶かしきる前に次の場所に移動させるように扱うと綺麗に加工できます。
装飾パーツを表紙に接着していく。
今回もこのボンドが活躍します。
くっつけていくパーツは、紙の装飾パーツ、歯車パーツ、ストーンパーツの3点です。このクラフトボンド本当に使いやすいし仕上がり綺麗なので手放せない存在です…。(ちなみに今回は3本使い切りました)
ボンドは惜しまず気持ち多めに付けておきます。はみ出しても乾けば透明になるので問題ナシ。
最後の装飾
四隅にコーナー金具を取り付けていきます。
使い方なんですが、コーナー金具の内側(挟み込む内側)にボンドを薄く塗って使うって見たんですが、ぶっちゃけボンドなんか無くても留まります。
布張りと違って、表紙が薄いからかもだけどボンドなんかなくてもいけたよ。これにチマチマボンドを塗っていく方が大変だし。
このパーツを紙に挟み込んでペンチで潰していくんですが、必要なものは手数、そして慣れ。
数をこなしていくうちにコツが掴めて綺麗に出来るようになりました。
こういう作業はできるだけ場数こなしてゆっくり手先の感覚で覚える感じです(職人?)
めちゃくちゃ手数多いな…というのが記事を書きながら思った次第…。相変わらずというか、なんというか。
作ってる時は楽しくて頭飛んでるんで全然気にしてないんですけど、こうして記事にするとめんどくさいな…と思うことが多いです。
本文も少し手を加える
今回も本文に金色でモチーフをスタンプ押してます。本文の邪魔にならない、過度になり過ぎないように気をつけて押してるつもりです。
あと本文、遊び紙の前に挟み込むのに透明フィルム(OHPフィルム)を今回も使いました
透明フィルム楽しいんだけど、インクが乾くまで時間が掛かる(念の為3日くらいはこの状態にした後、今度は上にコピー用紙とかクラフト用紙とか紙を挟み込んでさらに乾かします)
特に青系の色はインクが乾きづらいので、乾かした後に紙乗せた裏面から扱いて余分なインク落としたりしてます。
これを遊び紙(金/銀)の前に挟み込んで表紙と合わせていきます。
合体させる
必要なものは気合い。
ここまで準備してきたものを全て一つにまとめて綴じます。
特に今回はフィルム印刷したものに、1番真ん中がサイズ変形とトレペで余計にツルツル滑るので中心がズレやすい。
しっかり押さえて、中綴じホチキスで綴じたら…
この瞬間を迎えた時が本当に嬉しい。
撫で回しながらおかしい所がないか、調整が必要なところ、手をもっと加えるべき所がないかを最終確認していきます。
まだまだ続く作業現場
ですが、『これで終わりだ!やったね!』とはいきません。
表紙がこれだけ加工してあるものは、破損し易いというデメリットがあります。
それをなるべく防ぐために、こちらに専用の保護封筒を付けます。
いつも頼むハグルマストア様⬇からA5が入るカマス封筒を取り寄せました(色はコットンパールの白)
封筒が届いたらこの表面にスタンプを押してエンボス加工をしていきます。 (表紙の時と同じようにしていく)
本当はこの柄を使いたかったんですが、実は手持ちのアクリルブロックにこのクリアスタンプが収まらない巨大さで…。
押すのが大変なのに加え、パウダーかけた後もこの面積にエンボス加工すると、とても時間がかかるので辞めました…。(イベントでこちらをお持ちの方(2名様)は本当にレアですよ…!)
細かいこだわり
あと封筒を留めるシールですが、今回はこちらを使わせてもらいました。
今回は【月】のモチーフだったので、封緘用のシールもメッセージを書く付箋、カードも月や夜空にしてました。特にこの付箋はお気に入りなので柄違いを揃えようかなーと思ってます。
あと封緘用シールは封筒に貼っても剥がれやすいものを選んでます。作品を出し入れするのでそこは大事かな、と。(封筒込みで傷付けたくない人も多いと思う)
これでおしまい。
封筒が出来たら製本した本を入れて、封緘をして完了です。
今回のnoteですが、実際に通販での再版作業しながらだったり、イベント当時の作業風景を残したものを使いながらここに収めておりますので、写真も膨大でした。
自分で言うのもなんなんだけど、『ホントよくやってるよね!』と思います。
これ好きじゃなきゃやらんし、出来ないよ。ホント。
作ることが好きな私は嬉しいし、何より多少なりとも『これ』を楽しみにして下さる方が居るというのは、力強いことでして。
製作においては、周りのお声が何よりの原動力になってます。ありがとうございます!
是非お暇な時に、note記事の気になるところだけでも実物の本を片手に見返して頂ければ嬉しい限りです。
今回は膨大な量になりましたが、皆様の糧や素敵な創作のヒントに繋がれば嬉しい限りです。
今年はこれで製本日記も終わりですが、来年へ向けてまた面白いことをして行きたいなー!
来年以降の製作記録も見ていただけたなら有難いです。
ここまで読んで下さりありがとうございました!
かなり
【延長戦という名の。】
さて。
ここからは、実物の本を持っている方向けの内容となります。
今回仕込んだネタ、というか持っている方はあそこの話しないの?という製作記録です。
ワンクッション置きますが、これから該当作品をお手にされる方は、ネタバレ?的なものが含まれる(楽しみを半減させてしまうかもしれない)のでご了承いただいた上で自己責任でご覧下さい。(実物を見てからがいい!という方は是非お手元に届いてからこちらをご覧下さい)
それでは延長戦をどうぞ。
【巻末オマケの事について】
今回OHPフィルムで片側に月のイラスト、片側にとあるイラストを印刷しております。
月のイラストは遊び紙と合わせる前提の仕様として作りました。
その裏面であるイラストは私が巻末のオマケ、というかボーナストラック的な使い方がしたくて描いたイラストをいれております。
こちらがそのオマケページが挟み込まれている箇所。
開いた時に『ん?なんだろ、これは?』って思った方が大半かなと思います。(そう思ったあなたは私の狙い通りです。)
ここを開くと1枚絵のイラストが拡がります
このページを作るための作業工程がこちら。
こちらは片面刷りのデザインペーパーです。右側は本文に綴じるために必要なノドの部分を折り曲げています。
綴じた後にこの降り曲がった部分はギリギリのラインでカッターで裁断してます。(切りすぎると分解するので気持ち5ミリくらい残してます)
青空のデザインペーパーにフィルム印刷した3人が重なるように仕組んだのですが、フィルムなので逆方向に倒して遊び紙にフィルムを重ねるとまた違う雰囲気のイラストになります。
雰囲気や印象が変わって見えるのでこれはこれで好きな感じだなぁ、と。(お話に合わせるならばデフォの青空なんですけど。)
このページに関しては『お好きなように楽しんで下さいね』というオマケです。最後まで見ていただいた方の読後の情景を鮮やかにしたい狙いもありました。
この最後の仕様に込めた思いが手にしてくださった方へ伝わればいいなーと思っています。
これにて、この本の制作記録はおしまいです。
過去イチ長い記事になりましたが、こんなところまで閲覧いただきありがとうございました。
(まさか8500字超えると思いませんでした…)
次は長くならないようにしたいので、また読んでいただければ、とても嬉しいです。
本当に本当にありがとうございました!
かなり